診たて ・ 診断の最近のブログ記事

 
 対人関係上の問題は、BPDを他の障害から識別する上で最も役立つ特徴とされています。
 BPD患者は他のパーソナリティ障害と比べても、著しく友人関係で苦痛を感じやすく、孤独感を抱きやすいとも指摘されます。
 これまでBPDの主な性質は、衝動性や感情不安定性であるとされ、対人関係上の問題はそこから派生したものにすぎないと見なされてきましたが、最近の研究はそれにも疑問を呈しています。

 対人関係に関連した診断基準の1と2は、BPD患者が他人と親密になりたいと強く望みながら、「見捨てられる」のを同じくらい恐れるという、一見矛盾した奇妙な対人関係について述べたものです。
 他人に対する理想化から価値下げへの態度変更は、「見捨てられた」と感じた際に、しばしば急激に生じますから、対人関係は不安定で激しいものとなってしまうのです。

 人間は他人と親密になりたいと望むのは当然です。
 従ってBPDの対人関係の特徴は、「拒絶される」「見捨てられる」ことに対する恐れだということになります。

 ただしBPD患者が語る「見捨てられ」や「拒絶」は、些細に見えるような、予想外の出来事の積み重ねなのです。
 それは〈物〉ではなく〈人〉との関係で起こりやすいことも覚えておいてください。

 相手の表情,口調,視線の予想外の変化など、一見小さな出来事の数々が、患者にとって大きな苦痛が生じるきっかけになってしまいます。
 それは「大切な相手」であるとは限りません。
 初めて会った店員が挨拶をしてくれなかったといった状況でも、BPD患者が絶望し大騒ぎする引き金となります。


*「治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド」
  黒田章史(岩崎学術出版社)より

文責・稲本
 

治療にまつわる落とし穴

 
 BPDが医療機関で正しく診断される保証はありません。
 きちんと診断された場合でも、的外れな治療や逆効果の介入を受けることも珍しくありません。
 診断すらされていない場合、効果に乏しい薬物治療を受ける可能性が高いのです。

○診断をめぐる問題
 BPDの患者は大抵、自傷行為や大量服薬を繰り返す,些細なことで怒りを爆発させるといった、派手な症状で受診します。
 しかし彼らはうつ病,不安障害,適応障害などの診断を受けることがほとんどです。

 しかも、そうした診断は必ずしも間違ってはいないのです。
 BPD患者は抑うつ症状を示すことが珍しくありません。
 ストレスの多い状況下でBPD患者はほとんど、DSMでうつ病の診断基準を満たすと言っていいくらいです。
 DSMの大うつ病が、診断の定義を過剰に広く取っているためです。

 これまでのDSMでは、うつ病とBPDの診断基準をともに満たす患者は、Ⅰ軸障害(パーソナリティ障害と精神遅滞を除くすべての精神疾患)として大うつ病,Ⅱ軸障害(パーソナリティ障害)としてBPDと診断されることになっていました。
 しかし実際は、Ⅱ軸障害について評価されることは少なかったのです。

 アメリカのある研究では、外来のBPD患者の97%が見逃されている可能性があります。
 こうした人たちはまず薬物が処方されるでしょう。
 そして十分な効果を示す可能性はほとんどありません。

 パーソナリティ障害があるうつ病患者は、そうでない患者に比べて、悪化するリスクが2倍で、自殺の既遂率が高く、寛解まで時間がかかります。
 それを回避する上で、DSM-5でⅠ軸・Ⅱ軸の区分けを取り払ったのは、極めて望ましい改変です。


*「治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド」
  黒田章史(岩崎学術出版社)より

文責・稲本
 

精神科医のHPサイトで双極性障害とBPDと自己愛性の見分け方について

とても分かりやすく紹介されていたのでご紹介します!

 

●双極性障害とBPDは熟練して医師でもなかなか見分けることが難しいと言われています。

・BPD経過中の双極性障害の発病率は15%と言われています。

・双極Ⅱ型障害は12~23%がBPDの診断基準を満たしている。

・双極性障害はBPDに加え、演技性・強迫性パーソナリティー障害と併存していることがある。

・双極性障害のスクリーニング尺度として普及している心理検査МDQはBPDを

 疑陽性と判断してしまう。

・BPDと双極性障害の類似性

 情緒不安・不安定な人間関係・衝動性・繰り返す自殺企

 

●BPDと双極性障害の違い

 BPDは慢性的な空虚感を訴え、高揚した気分になるkとは少なく、

 対人関係で攻撃的になりやすい。

・再発がほとんどない。

・自分を傷つける行為を繰り返す。

・スプリティング(白黒思考)グレーゾーンを作れない

・薬が効きにくい。

・自己像が絶えず揺らいでいる。

 

●双極性障害の特徴

・対人関係に過敏に反応するが、環境要因の影響は明らかではない。

(BPDは生物・環境・社会要因の影響を挙げている)

・再発を繰り返す

・自分を傷つける行為はあっても躁鬱の症状がある時だけに見られる。

・否認によるストレス回避のための躁状態になることがある。

・薬が比較的効きやすい。

・自己像は一貫していて、尊大な自己像を持っている。

 

●自己愛性パーソナリティー障害の特徴

・自分を否定されるなど、自己愛が傷つけられた時に見られる攻撃性。

・気分がいい時に調子に乗ってしまう誇大性の増幅。

・挫折に弱く、挫折したときに激しく落ち込み抑うつ状態になる。

双極性と自己愛でよく診断で迷う点は、自己像は一貫していて、

誇大的な自己像を持っているという部分で診断に迷うそうです。

 

参考資料 最新精神医学16巻1号2011年1月25日発刊

 

 

 

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