http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/103.html
星和書店
今月の新刊 next
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ハンドブック

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ハンドブック

臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ

武藤崇 編
A5 並製 384頁 ISBN978-4-7911-0785-8〔2011〕
定価3,360円(本体3,200円)

本書は、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の全体像をカバーするハンドブックである。第I部は哲学や理論、第II部はACTのトリートメント・モデル、第III部はそのエビデンス、第IV部は他のセラピーやトリートメント・モデルとの比較・対照、という構成となっており、本書一冊で、「ACTを見渡す」ことができる。ACTに関する「奥行き」と「幅の広さ」の両方を実感できる。

統合失調症からの回復を願う家族の10の鉄則

統合失調症からの回復を願う家族の10の鉄則

渡部和成 著
四六 並製 200頁 ISBN978-4-7911-0784-1〔2011〕
定価1,680円(本体1,600円)

統合失調症に打ち勝ち、統合失調症からの回復を実現させるために、ご家族は日常生活を送る中で具体的にどういうことに気をつければよいのでしょうか。患者さんの病からの回復を願うご家族が統合失調症治療を実践的な側面から理解して、明日のご家族の在り方のヒントを得ていただけるように、ご家族に日常生活の中で留意していただきたいことを「10の鉄則」にまとめました。患者さんの回復をサポートしながら、ご家族自身も生き生きと豊かな人生を送れるようになるヒントが満載です。『統合失調症から回復するコツ』『統合失調症に負けない家族のコツ』の著者がご家族に贈る、待望の第3弾。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第26巻9号

特集:境界性パーソナリティ障害(BPD)の新しい理解と援助のあり方

境界性パーソナリティ障害(BPD)は、決して特殊な病態ではなく、精神科にとってcommon diseaseである。この特集では、BPDの新しい理解と援助として、地域や家族を含めた多機関・多職種の協力のあり方、弁証法的行動療法やメンタライゼーション、海外の最新の知見などを取り上げた。多くの精神科医や精神科医療関係者がBPDと積極的に向き合うための必読特集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第14巻10号

特集:長期予後を見据えた薬物療法 ―統合失調症の再発・再燃を少なくする工夫―

急性期から慢性期まで長期にわたる統合失調症の治療においては、長期の効果や副作用を考慮した治療・薬剤の選択が必要である。本特集は、統合失調症の再発・再燃を少なくするように長期予後を見据えた薬物療法の選択とそれを補完する心理社会的なアプローチに関して解説した。
ISBN:978-4-7911-5168-4

こころのりんしょう à·la·carte
定価 1,680
季刊 こころのりんしょう à·la·carte 第30巻3号

特集:睡眠障害の今日

現在多くの方が、不眠のみならず、過眠や眠っている時のさまざま病的な現象に困っています。本特集では、これら睡眠に関する問題を広く取り上げ、診断や治療法についてわかりやすく解説します。睡眠時間や寝具の選び方、時差ぼけへの対処法など基礎的なものから、睡眠薬の使い方・副作用、うつ病に対する時間療法、睡眠時無呼吸症候群の治療など臨床的なものまで、睡眠障害に関する最新情報を満載。
ISBN:978-4-7911-6063-1

↑トップへ
こころのマガジン

第21回地域精神保健講座
臨床心理士 あや先生のコラム 
Vol.10 APA体験記 
〜American Psychological Associationに行って来ました〜 (後編)

8月6日 晴れ 夕方スコール

朝一の発表を見てみようということで、7時過ぎに出発。サーキュレーターに乗って会場へ。サーキュレーターは1回乗るごとに1ドルなのでわかりやすいです。
 私以外のお二人はクロワッサンミーティングというのに行ってみるとのこと。クロワッサンミーティングとは朝の懇親会のことで、そのお目当ての会には医療臨床分野に興味がある人が集まるそう(ちなみにコーヒーはあったけど、クロワッサンは置いてなかったそうです)。私は行っても何もわからないかも……と思って、ちょうど同じ時間に催眠についての発表があったので、そちらへ行ってみることにしました。
 学生っぽい若者が3名で発表していたのですが、催眠のかかりやすさに男女差はなかったが、日常的に教会に行っている人と行っていない人では、教会に行っている人の方がかかりやすかった、など、どうも卒論か修論の中間発表のようでした。私の英語力不足で充分理解できなかったことを差し引いても、あまり興味をひかれる内容では……という感じ (^^;。早朝のせいか、私の他に来ていたのは1人! 部屋に入るのにとても勇気が必要でしたが、入って行くと発表者の女の子が苦笑していて、表情でお互いに気まずさを共感し合えました(笑)。
 懇親会の方はめずらしい体験ができたそうで……会場に行ってみたら部屋が狭いのでちょっとこれはディープかも?と引き返そうとしたところ、偶然アメリカ在住の日本人の方がいて引きとめられ……。十数人ほど集まって、全員自己紹介した後、今後のキャリアの積み方とか、検査は何を使ってるとか、この際せっかくだから質問したいということをやりとりしていたそうです。勇気を出してそっちに行ってみればよかったかな……。
 10時からは、Mindfulness Practices-Eastern Approaches to Expanding Consciousness and Psychotherapeutic Changeというテーマのシンポジウムへ。行ってみると、200人くらい入る広い会場なのに少し空席がある程度。予想以上に席が埋まっていて、盛況です。開始の合図にお鈴をチーンと鳴らしたり、東洋大好きな雰囲気でした。
 まず、瞑想や禅、仏教、道教などの東洋的視点を取り入れた心理療法の話から始まり、2人目のカナダの大学の先生は、森田療法について熱く語っていました。絶対臥褥ってAbsolute Bed Restって言うんだ、そのまんまなのね〜、などと思いつつ、中身を知ってると英語がわからなくてもこんなに楽に聞けるということを実感。
 3人目の先生はMindfulness Initiated Integrated Therapyという、どうもご自身がこれから提唱していきたい新しい心理療法について語っていた……らしい。これは後から星和書店の方に聞いてわかったことで、発表を聞いてる時点では、どうもMIITとやらに至った過程を、禅の心だとか、内観や瞑想について説明しつつ、話してくれているみたいだな〜、でもそれ以上のことはよくわからない……という状態でした。その中で出て来たZhao Zhouという方のことを恥ずかしながら私はよく知らなかったのですが、帰って調べてみたら禅の世界では有名な中国の唐の時代の和尚さんでした。その趙州(Zhao Zhou)和尚と南泉和尚のやりとり「如何なるか 是れ道? 泉云く、平常心 是れ道。州云く、還って趣向すべきや否や? 泉云く、向わんと擬すれば即ち背く。」が紹介されていました。これもその時点では、悟りについて何か説明してるのかな?程度の理解で……でも考えてみれば、日本語で聞いても難しい話だったかもしれません。
 そのシンポジウムは11:50までだったのですが、11:00からもう1つ聞いてみたい発表があったので、私だけ途中で抜けて別の会場へ。
 移動した先も東洋的アプローチがテーマで、Building Bridges Between Daoism and Psychology-Integrating Mind,Body,and Spirit to Enhance Psychological Outcomesというシンポジウムでした。100人くらいの会場が人で溢れて立ち見も30〜40人いました。以前から、欧米で老子や禅など東洋思想が注目されているとは聞いていましたが、ほんとにそうなんですね。
 1人目の方は、体、心(mind)、精神(spirit)のバランスを取り戻すことが大切で、それにはタオイスト(老荘思想の実践者)に学ぶといいとか、瞑想の仕方の様々な手法について、呼吸に注目して……など説明していました。老荘思想、陰陽、生命エネルギーなどの単語が出てきましたが、その中でも何のことかわからなかったのがWuwei、Wushi、Pu。(後に別の発表で漢字表記してくれている先生がいて、Wuweiは無為のことだとわかりました)Wuweiとはdon’t insist, don’t resistで、成果に囚われないこと、Puとはすべてを判断しないで受け容れることなのだそうですが、プウって何でしょう……?
 2人目の方は、現在日本で関西外語大の先生をしているそうで、日本と西洋の違いや、瞑想の際の注意点、意識の所在についてなどのお話でした。西洋は選択していく文化だが、日本はそのまま受け容れる文化で、陰陽どちらもいいも悪いもなくて、受け容れて統合し……だとか、タオイストの考え方は認知行動療法にいくつかの点で似ている、という話もありました。
 3人目はハワイの大学の方で、太極拳や呼吸法、座禅の話をしつつ、人生のコントロール権はない、無為が人生をシンプルにする、欲を捨てること、瞑想が大切、など話していました。
 4人目の方は、心身一如、超越小我、シンプルに、自然に還る……など東洋思想を紹介しつつ、東洋人の患者さんは感情を言葉にするのをためらうことがある、西洋人のようには語らないというようなことを言っていて、Daodejing Therapy (Daodejingは老子の道徳経のことのようですが、Daodejing Therapyがどんなものかよくわかりません……)はTalk Therapyよりも東洋人の患者さんに向いている……と言っていたようです。残念ながら英語力不足で詳細はよくわかりませんでした。
 ただ、この方に限らず、アメリカの心理学会ならではだなと思ったのは、治療者と来談者が英語を介してやりとりしても、母国語やルーツが違うと、使っている言葉の背景が違うので、そこが難しいという話がしばしば出てくることです。同じ日本人でも関西と関東では文化がだいぶん違ったりすることを思うと、アメリカでの臨床は独特の大変さがあるんですね。
 さて、この日のお昼ごはんは外へ出て(会場が寒過ぎてちょっと温まりたかったのもあり)、典型的なアメリカンダイニングへ行ってみました。ガイドブックに紹介されていたクラブケーキを食べてみたのですが、まさにカニをほぐして丸めて焼いた物、そのまんまという感じ(笑)味はおいしかったです。
 再び学会会場へ戻り、14時からはDaniel J. Siegelという有名な先生の講演会を聞きに行きました。テーマはMINDFULNESS AND MINDSIGHT:Their Role in Neural Integration and Mental Health。500〜600人規模の会場に人が溢れていて大人気。英語がわからない私でも、抑揚や間の取り方で、話が上手だな〜と感じました。みんなよく笑い、会場に一体感が……はいいのですが、なにせ英語がわからないので、途切れ途切れにしか内容が理解できません(涙)。パワーポイントも見つつ、拾えたのは、
・心と脳をつないでるのは何か?
・関係性が何より大切、関係性とはエネルギーをシェアすること、違いを楽しむこと。
・心の健康のためには、何かに熱中する時間、睡眠、仕事、運動、人との関わり、遊び、リラックスの全てが大切。
・Middle Prefrontal Functions(前頭前野の機能?ミドルということはもう少し限定された部位なのでしょうか?)は、体の調整、同調すること、感情のバランス、恐れを鎮めること、柔軟性、洞察、共感、道徳性、直観
・睡眠中は統合の時間
……さて、全体としてはどういうお話だったのでしょう? そんなに難しい話ではなかったようなのですが……。今ちょっと検索してみたら“The Mindful Therapist: A Clinician's Guide to Mindsight and Neural Integration” [Audiobook] [CD] というのが、10月に出るそうで、アマゾンで予約受付中だったので、それを聞いたらその日の話がわかるかもです。去年出版された“Mindsight: The New Science of Personal Transformation” (邦訳書は、星和書店より2012年夏ごろ刊行予定)を読んでみても、もっと理解できそうです。脳科学との統合的な心理療法を実践されている方のようなので、とても興味深いのですが……これから英語学習がんばります(汗)
 その講演の後は、書籍販売コーナーへ戻り、うーん帰ってから英語がんばるにはDVDでも1つ買って行こうかなぁ……帰ってからもこのモチベーションを持続できるかしら……と逡巡しつつ、ジェフリー・ザイクの催眠療法のビデオを購入。私はもともと催眠を専攻したからというのもあるのですが、催眠療法のビデオなら、多少内容がわからなくても、抑揚とか言葉以外の働きかけで参考になるところも多いだろうと思いまして。
 会場を出た後は、せっかくワシントンまで来たのだから、ホワイトハウスを見ておこう、ということでホワイトハウスを外から見学。小学生の感想みたいですが、すごく大きくてきれいでした。
 ここまで読んでくださるとわかるように、英語力がかなり残念な私ですが、APAに行ったことはとても刺激になりました。とにかく色んな人がいる……肌の色も体型も服装も様々で、その分見ているとその人独自の雰囲気が浮かんでくるというか。目で見える情報はバラバラ、そして英語はちんぷんかんぷんとなると、第六感的なもので感じ取るしかないせいでしょうか、私にはオーラとかは見えませんが、何かそのようなものから情報を得ていた気がします。
 とはいえ、英語ができればもっと自由に、いろんな人とやりとりできるのに、と不自由さも痛感しました。新しい人との出会いが大好きなので、せめて日常会話をマスターしたい! まずは英会話教室探しから……今回はちょっと本気です(笑)
(次号は「ニューヨークにも寄って来ました 〜APA体験記 続編〜」をお届けします)

(尾方 文)

配信停止希望