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星和書店
  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第27巻1号

特集:精神科医の多剤併用・大量処方を考える I

統合失調症の多剤併用、大量処方が解決されぬまま、最近は抗うつ薬や抗不安薬、さらには気分安定薬や抗認知症薬の処方も問題なっている。安易な薬物療法や大量処方は自殺を目的とした過量服薬や身体救急にまで影響が及ぶ。精神科医の治療が精神医学界以外で大きな問題となっていることを精神科医は十分知っておくべきであろう。本特集では、多剤併用、大量処方の現状を知り、どのような対応が可能かについて考える。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第15巻2号

特集:統合失調症治療におけるデシジョンメイキング

統合失調症治療におけるデシジョンメイキングについて様々な角度からとりあげる。ディシジョンメイキングのポイント、家族や当事者の参加と位置づけ、臨床マーカー、薬剤選択の判断基準、clozapineやECT導入のタイミングなど、精神科医必読の特集!
ISBN:978-4-7911-5172-1

精神科臨床サービス
定価 2,310
季刊 精神科臨床サービス 第12巻1号

特集:生活の視点から薬物療法をとらえなおす:薬にできること・できないこと

薬物療法のめざましい進歩は精神科臨床サービスに大きな可能性をもたらしていますが,本特集では当事者の「生活」という視点から大胆に切り込み,薬によって実際の生活がどう変わり何が期待できるか,薬では達成が難しい治療目標は何かを明らかにします。その上で,剤型の活用や服薬教室などアドヒアランスを高める工夫,「治療抵抗性」の見極めと対策,心理社会的アプローチとの統合など,さまざまな実効ある技術を伝えます。医療者のみならず,地域生活を支える支援者にも,ぜひ読んでいただきたい薬物療法特集です。
ISBN:978-4-7911-7145-3

こころのマガジン
新しいコラムの登場

 今年からコラムが変わります。今月は、水島広子先生に素敵なコラムをお書きいただきました。このお知らせの後に掲載されています。本当に心にじわっと訴えてきます。

 2012年、新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 昨年、大災害に見舞われた日本。一瞬にして何もかも失われる体験。ここから、私たちのいままでの意識がかなり変化してきたのを感じます。
 西欧流の考え方が中心になっていた日本に、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)というきわめて日本的な治療法がアメリカからやってきました。今、この時を大切にし、過去や未来について心配し悩まない、という座禅の心境に似ています。
 数年前は、ACTとは何か、マインドフルネスとは何か、とまだまだ皆様に言葉さえ認められていませんでしたが、昨年になると、頻繁に語られるようになりました。
 今年の秋は、著書のほとんどが大ベストセラーとなっているJon Kabat-Zinn先生が日本でワークショップをされるそうです。マインドフルネス瞑想が皆さんにも興味を持ってもらえるかもしれません。
 九州精神医学、第57巻第2号が最近出版されました。その巻頭言で、内村英幸先生がACTについても言及されています。先生は、気づきの瞑想にご関心を持たれているということで、この技法がACTと共通しているといわれています。
 今回コラムをお書きいただいた水島先生も、AHをご紹介されています。過去と未来の雑音を取り払い、「今この瞬間」を生きていく。
 さあ、水島コラム、ご登場あれ。


今月のコラム
天使の梯子
元衆議院議員・精神科医/アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン代表 水島広子

皆さまは「天使の梯子」をご存じでしょうか。気象現象としては「薄明光線」と呼ばれているものですが、太陽が雲に隠れているとき、雲の切れ間や端から漏れた光線の柱が放射状に降り注いで見える現象のことを言います。「天使の梯子」という名称は旧約聖書に由来するそうで、天使が上り下りする梯子として見えた、という記述によるものだそうです。

私は恥ずかしながら昨年の3月に友人に教えてもらうまで「天使の梯子」という言葉すら知らなかったですし、意識を向けたこともありませんでした。しかし、それ以来注意を向けていると、たとえば電車の窓などからも案外よく見えるのです。薄い光が降り注ぐ様子は本当に美しく、いつも見惚れてしまいます。

「天使の梯子」は、いくつかの条件が重ならないと起こらない、全くの偶然の産物です。まず、太陽光線をさえぎるくらいの厚い雲が発生していて、かつ切れ間が必要です。また、難しい話になりますが、大気がエアロゾル状態にあって、エアロゾル粒子が比較的多く、かつ透過率が高いときに起こるそうです。

私が今までに見た経験からも、もちろん毎回形は異なりますし、見える幅も異なります。ですから、全ての「天使の梯子」が、一期一会のものです。しかも、よい条件が重なったときにたまたま注意を向けていなければ見えません。まさに「今にいる」ことを象徴するようなものなのです。そしてその美しさは、「今にいる」ことの価値を十分に知らせてくれます。

私は精神科医としての仕事だけでなく、ボランティア活動としてアティテューディナル・ヒーリング(AH)という活動もしています。そのワークショップやトレーニングは限られた人数の方にしか提供できないため、実録したものを星和書店さんから「怖れを手放す」シリーズとして刊行していただいています。

私たちの唯一の目標を心の平和におくということがAHの最大の特徴ですが、実は心の平和のためには「今にいる」ことが大切なキーワードです。AHでは、「今にいる」ための手段として人の話を聴くところがユニークで、「AH的な聴き方」を学ぶと、案外簡単に「今にいる」ことができるようになります。

AHの原則1では「私たちの本質はあたたかいこころ(愛)」と言っていますし、私もそう信じています。本当はすべての人の中心にあたたかい愛が満ちているのですが、今までの人生の中で、様々な怖れが垢のようにこびりつき、なかなか本質が見えなくなってしまっています。でも、「AH的な聴き方」をすると、相手の本質であるあたたかいこころとつながる瞬間を数多く体験できます。そんなときの感覚はとてもぽかぽかとあたたかいものです。「今にいる」瞬間にこそ、怖れを手放し、相手と自分のあたたかい本質につながることができるのです。

つい最近また「天使の梯子」を見たとき、AHの体験と同じだなとふと気づきました。空は曇っていても、それはただ雲に覆われているだけで、その向こうには光の恵みが無限に広がっています。私たちの心も、「怖れ」という厚い雲に覆われていても、その奥には本質としてのあたたかい光が無限に広がっているのを確かに感じさせる、そんなすばらしいAHに、ぜひこの機会に触れてみませんか?


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