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星和書店
今月の新刊 next
僕は四つの精神障害

僕は四つの精神障害

強迫性障害、性同一性障害、うつ病、発達障害と共に生きて

津野 恵 著

四六判 並製 160頁
ISBN978-4-7911-0845-9〔2013〕
定価 1,260 円(本体 1,200 円)

女性として生まれながら男性として生きる著者が、重度の強迫性障害にとらわれ、うつ病をわずらい、発達障害による生きづらさを抱えながら、もがいてきた人生の軌跡を綴った貴重な体験記。

TVNHK総合の番組「あさイチ」(2012年10月放映)で強迫性障害がテーマに取り上げられ、著者は当事者の一人として紹介された。

愛する人がうつ病になったときあなたはどうする?

愛する人がうつ病になったとき
あなたはどうする?

実践的・共感的な支援ガイド

ミッチ・ゴラント、スーザン・K・ゴラント 著
加藤 敏 監訳 林 暁子 訳

四六判 並製 360頁
ISBN978-4-7911-0846-6〔2013〕
定価 2,520 円(本体 2,400 円)

うつ病が家族、友人、恋人を襲ったとき、自分には何ができるだろうか?

家族や友人、恋人がうつ病になったとき、身近にいる私たちは相手や自分自身のために何ができるのか。うつ病の母親をもった著者が、心理療法士としての豊富な経験と科学的根拠をもとに、その指針を示している。

家族面接・家族療法のエッセンシャルスキル

家族面接・家族療法のエッセンシャルスキル

初回面接から終結まで

J・パターソン、L・ウィリアムス、T・M・エドワーズ、L・シャモウ、C・グラフ-グラウンズ 著
遊佐安一郎 監修 鈴木美砂子 監訳・訳 
若林英樹、山田宇以、近藤 強 訳

A5判 並製 368頁
ISBN978-4-7911-0847-3〔2013〕
定価 3,990 円(本体 3,800 円)

クライエントとのファーストコンタクトから終結に至る過程で必須の臨床技術を、リアルなケース描写とリンクさせながら解説した、アメリカにおけるセラピスト養成課程の定番テキスト。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第28巻6号

特集:妊娠と出産を巡る精神科臨床
―何を理解し、どう関わるか?―II

精神疾患患者の妊娠や出産は増えており、向精神薬をいかに処方するかは悩ましい問題である。一方、産科医不足が言われる中、精神科医に求められる役割は重要さを増している。本特集 II では、リエゾンコンサルテーション場面で求められる、妊娠・出産を契機に生じる精神不調や精神疾患の予防と支援など、学際的・先端的テーマを取り上げた。いわば妊娠と出産のメンタルヘルスを巡る研究と臨床のカレント・トピックス集となっている。この領域の専門職同士の理解と連携を深めるために必読の特集。
JANコード:4910156070634

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第16巻7号

特集: 海外ガイドラインと比較した日本うつ病学会治療ガイドラインの特徴と課題

海外の気分障害のガイドラインと日本うつ病学会治療ガイドラインを比較し、特徴と課題をまとめた。治療がうまくいかなかった場合のスイッチングや増強療法は、微妙に海外のガイドラインと違いがあり、臨床家は熟知しておかねばならない。一般身体科医との連携、ガイドラインにない治療法にも言及。
ISBN:978-4-7911-5189-9

今月のコラム

今月のコラム
どうにかして変わってほしい相手には
臨床心理士  中島美鈴

どうにか変わってほしい相手はいませんか。わからず屋の上司や同僚でしょうか。いつも同じことで喧嘩を繰り返している家族でしょうか。そっけなく冷たい態度になった恋人でしょうか。なかなか言うことを聞いてくれないお子さんでしょうか。マナーの悪い赤の他人でしょうか。

カウンセリングには、こうした人間関係の悩みが多く持ち込まれます。中でも、家族や親友、職場の人間関係は、そう簡単には逃れることのできない固定した比較的長く続く間柄です。

私はただいま、我が子の育児に奮闘中です。いわゆるママ友と話し込むのは、「子どもが危ないっていうのにローテーブルの上に上がろうとして困る」などの子どもの話題や、夫や両親などとの家族の話題です。

かくいう私の1歳になりたての息子も好奇心の塊。どうしても自分で歩いて好きなところに行きたいと、手をつなごうとする私の手を振り払い、危ないからと進路を変えようものなら、道路に転がり手足をばたつかせて大泣きです。昔、同様にスーパーのお菓子売り場で買ってほしいと泣き叫ぶよその子を見たことがありました。「あんなふうには育てまい」とひそかに思っていたのですが、まさかわが子がそうなるとは……。一体どこでそんな技を覚えてきたんだと最初は呆然としました。その他も生後すぐからのベビーカー拒否にチャイルドシート拒否、ベビーチェア拒否、離乳食拒否、夜泣きなどなど、まさに相手に「変わってほしい!」の連続の育児生活です。

さて、私の専門とする認知行動療法では、こうした「相手に変わってほしい」という悩みには、「自分を変える」ことで解決を目指します。自分を変えるといっても、自分の全人格を変えるような大きな変化ではなく、相手に対する認知(考え方、ものの見方)や行動を変えて対応するのです。決して相手を思い通りにコントロールすることはしません。というより、できないのです。

……と、頭ではわかっているのですが、変わってほしい相手が家族などの親しい大人である場合や、ちょっと分別のついてきた子どもである場合には、なかなかそう冷静には受け止められないものです。私ももちろん、睡眠不足と抱っこ疲れの日々の中、どうにかして自分の最低限の健康を守るためにわが子にせめて「寝てほしい!」と睡眠や生活リズムのコントロールに必死でした。

そんな育児まみれの日々の中、またある2冊の本を改めて読み直しました。夫との関係で悩むママ友に薦めるためです。その本には、相手をコントロールできないことを認めること、相手に影響を与える程度ならできること、相手ではなくこちらのものの見方や行動などを変えることが大事なのだということが書かれていました。改めて読み返すと私の心には以前より強く響きました。相手を変えるのではなく、自分が変わる。そのあたりの視点の切り替えを丁寧に実に全体の4分の1ものページを割いて解説してくれているだけでなく、具体的なコミュニケーションのあり方まで紹介してくれているのが拙訳書『人間関係の悩み さようなら』です。もう一冊は、相手に対するコントロールや責任など境界線の持ち方について詳しく書かれた『境界性パーソナリティ障害=BPD はれものにさわるような毎日を過ごしている方々へ』です。

「そうか、いくらこんなに小さいわが子といえども別々の意思を持った人間。コントロールすることをあきらめるのだ。少なからずいい影響を与えられたらいい……そんなスタンスで関わろう。一生ごはんを食べないわけではないし、一生ベビーカーが必要なわけではないし。そりゃ、食べるのがいいに決まっている。それが正しい。でもこの正しさだけでは相手には通じないんだな」 そう思えました。また、まだ話す年齢ではないわが子と少しでもコミュニケーションをとりたくてベビーサインを使い始めました。こうしてちょっとでも大泣き以外の方法でやりとりができたらと思ったのです。

それから3カ月ほどして、わが子は、気づくといつの間にかすべての課題をクリアしていました。ベビーカーに乗せて泣かなくなったときに、私は奇跡が起きたと思いました。ごはんを残さず食べるようになったとき、感動して抱きしめました。生まれて初めて朝まで寝てくれたとき、わが子が息をしているかどうか心配したほどです。道路を歩くときに自分から手をつなごうと小さなおててを差し出してくれたとき、この子は別人になったのではないかと驚きました。散歩の最中に「お花が咲いてる」「のどが渇いた」「滑り台で遊びたいから手伝って」「もっと食べたい」などの要求をベビーサインで伝えることができるようになったわが子は以前ほどたくさん泣かなくなりました。

単なる時間がたったことによる子どもの成長の結果かもしれません。少なくとも私の努力だけではどうにもならない課題たちでした。たかが1歳の子どもを相手に認知行動療法?と怪訝な顔をされる方もいらっしゃるかもしれません。この先、きっと功を奏さない課題もたくさんあるでしょう。相手を変えることが最終目的ではないからです。それでも、人間関係の現状を少しでも変えたい皆様、読んでみる価値のある2冊です。

中島美鈴先生の本、好評発売中


人間関係の悩みさようなら
(デビッド・D・バーンズ著,野村総一郎監修,中島美鈴監訳,佐藤美奈子訳)
不安もパニックも、さようなら
(デビッド・D・バーンズ著,野村総一郎,中島美鈴監修・監訳,林建郎訳)
自信がもてないあなたのための8つの認知行動療法レッスン
(中島美鈴著)
もういちど自分らしさに出会うための10日間
(デビッド・D・バーンズ著,野村総一郎,中島美鈴監修・監訳,林建郎訳)
もういちど自分らしさに出会うための10日間リーダーズマニュアル
(デビッド・D・バーンズ著,野村総一郎,中島美鈴監修・監訳,林建郎訳)
私らしさよ、こんにちは
(中島美鈴著)
〈DVD版〉私らしさよ、こんにちは
(中島美鈴著)
集団認知行動療法実践マニュアル
(中島美鈴,奥村泰之編,関東集団認知行動療法研究会著)

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