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星和書店
今月の新刊 next
トラウマからの回復

オートノミートレーニング

健康、幸福、社会の安定─全ての鍵となる自律性を高めるために

ロナルト・グロッサルト=マティチェク 著
永野純、有村隆広、福元圭太 訳
熊野宏昭 解説

A5判 上製 580頁
ISBN978-4-7911-0856-5〔2013〕
定価 6,195 円(本体 5,900 円)


がんや心筋梗塞・脳卒中を予防し、予後を改善する(生存期間を延長する)効果を短い治療期間で実現する、驚異の心理療法を紹介する。

オートノミートレーニングは、「自律性」という個人の行動特性を高めることにより、がんや心筋梗塞・脳卒中を予防し、予後を改善する効果を、短い治療機関で実現する、驚異の心理療法を紹介する。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第28巻9号

特集: せん妄の診断と治療の現在 II

せん妄の診断と治療の決定版!先月と今月の2号にわたり、せん妄を特集する。せん妄は頻度が高く、患者のQOLを低下させ、医療者や家族の負担を増やし、転倒・骨折等の原因となり、結果として医療費の負担増にもつながるなどさまざまな問題を引き起こす。そのため、迅速で適切な対応が必要である。今月は、せん妄の結果生じる問題として、自殺・自殺類似行動、不慮の事故、院内の暴力行為、がん患者の終末期せん妄、医療経済上の問題を取り上げ、さらに特殊な病態として発作後もうろう状態(発作後せん妄)、アルコール・薬物離脱せん妄、向精神薬の副作用としてのせん妄などについて現在の知見を取り上げた。適切なせん妄の診断と治療のために必読の特集。
JANコード:4910156070832

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第16巻10号

特集: 双極性障害の精緻な薬物療法を求めて

DSM-5が発表されたことにより双極性障害の治療に変化はもたらされるだろうか。本特集では、気分安定薬の定義を歴史的に展望し、薬物療法ガイドライン、治療アドヒアランスと心理教育、気分安定薬と抗精神病薬の比較、多剤併用の問題、ベンゾジアゼピン使用の是非、併存する不安障害の治療等、様々な点から双極性障害の治療の実態と問題点を探る。
ISBN:978-4-7911-5192-9

今月のコラム
今月のコラム

糖尿病とうつ病

国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長 野田光彦

糖尿病とうつ病を語るうえで、糖尿病がどのような病気であるかについて知る必要があるだろう。糖尿病には、「尿」という言葉が入っているため、腎臓の病気であると誤解される向きもあるかもしれないが、それは誤りで、血液中のブドウ糖濃度である血糖値が高くなる病気だ。確かに、糖尿病がある程度進むと尿に糖が検出される(尿糖が陽性になる)ことがあるが、大半の糖尿病では尿糖は陰性だ。尿糖陽性は血糖値が高いためにそれが尿に漏れ出てくる結果に過ぎない。

しかし、血糖値が高いだけで症状がなければ、病気でも何でもないが、これを放置すると、様々な合併症、とくに血管の合併症が起きてくる。これは、例えば目の網膜や腎臓のような細い血管や、また、心臓や脳、足などの太い血管に起きる。血糖値が高くなる原因は、体内で唯一の血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が低下するか、またはその作用が弱くなるか、またはそれらの双方が同時に起こることによる。

糖尿病は大きく2つの型に分けられ、1型糖尿病、2型糖尿病と呼ばれる。これらの他に、「その他の型」と妊娠糖尿病というものがある。糖尿病の大部分(95%以上)を占めるのが2型糖尿病で、遺伝素因と生活習慣が原因となる。一方、1型糖尿病は自己免疫やウイルス感染が原因で膵臓にあるインスリン分泌細胞が破壊されることによる。生活習慣は関係しない。2型糖尿病と生活習慣が関係するといっても、生活習慣のみで糖尿病を発症する訳ではない。多かれ少なかれ遺伝がからんでおり、遺伝の要素の強い2型糖尿病では、十分に注意しても血糖値が高くなってしまう場合がある。

糖尿病の診断は血糖値とHbA1c(過去1、2か月の平均の血糖値を反映する指標)によって行われる。空腹時の血糖値が126mg/dl以上、別の日に75gのブドウ糖相当のものを飲んで2時間後の血糖値が200mg/dl以上といった値が2回測定されると糖尿病と診断される。HbA1c(パーセントで表す)が6.5%以上であると、1回の血糖値のみで診断される。 2012度からHbA1cは国際標準の値で示すことになり、従来の日本の値に比べて通常0.4ポイント高く示されることになった。

さて、糖尿病とうつ病についてである。うつ病も糖尿病と同じく患者数が多い。実は糖尿病とうつ病との間には疫学的な関係があり、糖尿病がある人では、うつ病の有病率が、ない場合に比べてほぼ2倍もあることがわかってきた。

例えば精神疾患の一つである統合失調症で糖尿病の発症が増えたり、逆に一部の糖尿病で、これも精神疾患の一つである摂食障害が起きやすかったりすることが報告されている。これらはいわば一方向性の関係だ。糖尿病とうつ病ではどちらも先行する場合があることが特徴だ。糖尿病の人ではそうでない場合よりうつ病の発症が15%多く、逆にうつ病があると糖尿病の発症率は60%も高まる。つまり、これらの総体として二つの病気の併存が多くなっているのだ。

糖尿病からうつ病を発症するきっかけとして、糖尿病と診断されたことがまずは大きな負担になることが海外から報告されている。また、インスリンによる治療が始まるなど治療のステップが進んだときや、失明や人工透析など重い合併症を併発した場合にもうつ病は起きやすい。

一方、うつ病から糖尿病を発症しやすい理由としては、身体活動量の低下や食生活が不規則になることに加え、うつ病の治療薬による副作用も考えられている。また、うつ病と糖尿病にはホルモンの異常など共通する発症の基盤も推定されている。

糖尿病にうつ病を併発すると、糖尿病の自己管理が不十分になって血糖値の状態が悪化したり、長期的には心筋梗塞や脳卒中の発症に悪い影響を及ぼしたりすることも知られている。しかし、そのような状況では短兵急によい結果を求めないで、根気よく長い目でみて二つの病気を一緒によくしていくことが大切だ。医療従事者による医療機関や地域での支援も欠かせない。

これまでに述べたデータは主に海外からの報告に基づくものだ。日本でも糖尿病とうつ病について、より詳しい調査が必要だろう。

野田光彦先生の本、好評発売中

糖尿病をすばらしく生きるマインドフルネス・ガイドブック
(ジェニファー・A・グレッグ,グレン・M・キャラハン,スティーブン・C・ヘイズ著,熊野宏昭,野田光彦 監訳)

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