http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/133.html
星和書店
今月の新刊 next
育児に悩んでます:うちの子、どこかへんかしら?

育児に悩んでます:うちの子、どこかへんかしら?

双極性障害やそのほかの精神の病気をもつ子どもの親のためのガイドブック

シンディ・シンガー、シェリル・グレンツ 著
森野百合子 監訳・訳
高木道人 訳

四六判 並製 376頁
ISBN978-4-7911-0868-8〔2014〕
本体価格 2,300 円 + 税

精神の病をもつ子どもの親のための分かりやすいガイドブック。
うちの子はすごく育てにくい、どこか悪いところがあるのだろうか、と親が子どもの異変に気づくことがある。日々の生活では、周囲を惑わすわが子の多彩な症状と闘い、周りの人や学校との調整に走り回る。思い切って医療機関を訪ねてみるが、診断がつくまで不安にさいなまれ戸惑いも大きい。
本書は、子どもの双極性感情障害についての正しい知識や対処法を親・家族向けに分かりやすく説明している。だが病名の如何を問わず、また洋の東西を問わず、精神の病気をもつ子どもやその親を取り巻く環境、疑問、孤独、不安などには、共通のものがある。様々な精神の病気をもつ子どもの親たちが経験するいろいろな出来事が実例をとおして書かれている本書は、育児に困難を感じている多くの親・家族にとってより豊かな人生を送ることができる灯台の役目を果たしてくれる。

不定愁訴の診断と治療

不定愁訴の診断と治療

よりよい臨床のための新しい指針

Francis Creed, Peter Henningsen, Per Fink 編
太田大介(聖路加国際病院心療内科)訳・解説

A5判 並製 260頁
ISBN978-4-7911-0867-1〔2014〕
本体価格 2,900 円 + 税

不定愁訴(Medically Unexplained Symptoms)、それはあらゆる診療科や年齢層でみられ、医師にとって避けては通れない病態である。臨床現場での不定愁訴に対するニーズは高いにもかかわらず、今迄まとまった解説書がなかった。そのような点で、不定愁訴の幅広い領域の最新知見をまとめた本書は画期的である。邦訳版では、わが国の臨床家にとって重要な章を訳出し、各章の終わりには、訳者がわが国の臨床の実際に合わせた解説を加えた。これにより、さらにわが国の臨床ニーズに合うものになっている。心療内科医・総合診療医、あらゆる内科の専門医と不定愁訴に携わるすべての方へ。

統合失調症が秘密の扉をあけるまで

統合失調症が秘密の扉をあけるまで

新しい治療法の発見は、一臨床家の研究から生まれた

糸川昌成(東京都医学総合研究所)著

四六判 上製 132頁
ISBN978-4-7911-0866-4〔2014〕
本体価格 1,400 円 + 税

統合失調症に対する新しい治療法の発見。
統合失調症に対するピリドキサミンによる医師主導治験が始まった。未承認薬による医師主導治験では精神科領域で初めてのことである。一人の患者さんとの出会いから、遺伝子のフレームシフト変異が見つかり、カルボニルストレスの発見に至る。大規模な遺伝子解析では到底たどり着けない発見であり、統合失調症という混沌とした症候群を解明するためには、個別の症例に立ち返る研究こそが必要なのである。この信念のもと、著者はピリドキサミンによる治験を開始する。そして驚くべき結果が!!
本書は、臨床と研究の二つの世界を行き来しながら統合失調症の解明に挑む著者の活動を綴ったものである。睡眠時間を極限まで削っての治験の日々。ピリドキサミンが国に承認されることを待ち望んでいる患者さんと治療者たちのことを胸に抱き、著者は今日も夜明け前の研究室の扉を開けるのである。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第29巻3号

特集:身体疾患に併発した精神障害への薬物療法 I

身体疾患に精神障害が併発したときの向精神薬の処方はどのような点に注意すべきか?身体疾患には精神障害がしばしば併発し、身体科治療薬と向精神薬との併用が問題になることが多い。単に臓器疾患別の使用方法ではなく、実臨床で出会う場面 を想定して特集した。特集 I では脳卒中、重症脳外傷、パーキンソン病、てんかん、心疾患などに併発した精神障害への向精神薬の処方について具体的に解説。
JANコード:4910156070344

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第17巻4号

特集: 薬物療法の終了―そのエビデンスとアートを探る―

長期化した薬物療法のベネフィットとリスクについてエビデンスを再検討し、薬物療法終了の基準と、そのための臨床的なアート(技巧、こつ)を日常臨床で実践している工夫をもとに紹介した特集。
ISBN:978-4-7911-5198-1

今月のコラム
今月のコラム
翻訳する心、心を翻訳する心理臨床
―『脳をみる心、心をみる脳:マインドサイトによる新しいサイコセラピー』を訳して―
臨床心理士 山藤奈穂子

マインドサイトとは、脳と心の動きについての知識を自分のために活用する知恵です。患者さんにとって、治療者にとって、大きな力です。

怒りや不安などの強い心の動き、うつや強迫といった精神症状が起こったとき、脳がどんなふうに機能しているのか、どの機能がどんなふうにうまく働いていないのか、どうすれば脳をコントロールして心の嵐を鎮められるのか、患者さんがその知恵を手にしたとき、自分の症状を深く理解して対処することができます。疾患についての正しい知識とともに、「自分が治すんだ、自分が症状をコントロールできるんだ」という主体性と自己効力感をもった人は、治療に積極的にとりくみ、症状を敵視することなく自己の1つの状態として受容し、変容させることができます。

マインドサイトとは、脳の取扱説明書を手にするようなものです。内省するのがINSIGHTであれば、脳の状態を客観的にとらえて、それが自分の心身に及ぼす影響を自覚しようとするのがMINDSIGHTです。その自覚こそが、自責と自己嫌悪による悪循環から心を守り、症状をコントロールするための「余地」を生みます。その余地において、呼吸法や瞑想をつかったマインドフルネスなどを活用するチャンスが生まれ、自分をとりもどす力が得られるのです。

わたし自身も、産後はマインドサイトに大いに助けられました。出産前から家族に「産後はきっとささいな理由で泣いたり怒ったりするが、それはホルモンのなせる業なので、言葉通りに受けとらないでほしい。棒読みでいいから、“大丈夫だよ、よくがんばっているよ”とくりかえして欲しい」と予告し、頼むことができました。そのおかげで、実際に大暴れ(?)したときに、自分や相手を責めることなく、家族とともにその理由と仕組みを理解し、心身を休めることによって嵐を治め、夫婦仲の亀裂や産後うつなどの「2次障害」を防ぐことができました。

マインドサイトがあると毎日は大きく変化します。脳内ハリケーンの犠牲者ではなく、有能な気象予報士であり、高性能のナビゲーション・システムを手にした航海士であり、自ら舵をとって荒れ狂う波を乗り切る船長になるのです。わたし自身の臨床経験で、とくにマインドサイトが有効だと感じるのは、うつ病の治療です。ただでさえ悲観しやすい脳の状態にある患者さんは、放っておくと「うつ病であること、動けないこと、治らないこと」についてくりかえし考え、自分を責め、さらに落ち込みます。そして、どんなに仕事を休んでも薬を飲んでも治らないという悪循環が生まれます。しかし、マインドサイトを手に入れた患者さんはちがいます。「すべてを悪いほうに考えてしまうのは脳がいまこういう状態にあるからなんだ。だから、考えないようにして、自分を責めず、リラックスして、少しでも楽しめることをするのが脳にとって必要なんだ。それが、治るためにいまいちばん大切なことなんだ」と理解して納得すると、変わってくるのです。抑うつ思考になっているとき、それを自覚し、「これはうつのせいだな」と理解し、「深呼吸しよう、考えないようにしよう、心と体を休めよう」といった対処をとることで、少しずつうつのスパイラルから抜け出すことができます。それが生活習慣となり、人格の一部分となったとき、うつは驚くほどよくなります。マインドサイトによって、心の嵐を乗り越え、生き延び、凪をつくりだすことができるようになるのです。

今回、『脳をみる心、心をみる脳: マインドサイトによる新しいサイコセラピー ―自分を変える脳と心のサイエンス―』を翻訳する機会をいただいて、ほんとうに幸運でした。専門書の翻訳は根気のいる大変な作業ですが、原著に寄り添って誰より深く読みこむことができるという特典があります。その翻訳過程でいつも気をつけているのは、「患者さんも学生さんも、まったく疲れずに読める」ように訳すことです。翻訳を学ぶと、滑らかな日本語で読者がスッと理解できる、そういう、原著の本意と日本語、そして読者に忠実な翻訳こそが正しい翻訳であると言われます。これは心理臨床の道にも通じます。理論やテキスト、診断基準通りの患者さんはいません。「正しい答え」はありません。文脈によって、患者さんによって、1つの言葉が何百通りもの意味をもちます。目の前の患者さんにとって最善はなにか、どんな言葉がもっとも治療者の意図に近いかたちで患者さんの心の奥まで届くのか、それを探すプロセスは翻訳も心理臨床もおなじです。翻訳とは、訳者の1つの解釈に過ぎないものですが、その1つの解釈が、患者さんと、その患者さんの力になろうとする治療者の心に、筆者がいちばん伝えたいことをまっすぐに届けるものであることを願いつつ、コツコツと翻訳を続けています。数万ピースのジグソーパズルを解くような気の遠くなる作業ですが、責任とやりがいのある、楽しい作業です。

これから専門書の翻訳をやってみたいと思う心理学の学生さんには、心理学の専門書以外にまずは3冊、翻訳の専門書を読むことをおすすめします(岡田信弘著『翻訳の布石と定石』、別宮貞徳著『さらば学校英語 実践翻訳の技術』、越前敏弥著『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』など)。美しくわかりやすい日本語の書き方も役に立ちます(本多勝一『日本語の作文技術』、高橋玄洋『いい生き方、いい文章』、日経BP社出版局監修『説得できる文章・表現200の鉄則』など)。それでも翻訳を専門的に学んでいる方にははるかに及びません。わたし自身もまだまだ勉強不足を痛感しています。心理臨床とおなじくらい学ぶことが多くて頭がくらくらしますが、常に読者のことを考える翻訳道の基本姿勢から、心理臨床についても多くのことを学んでいるところです。

山藤奈穂子先生の本、好評発売中

脳をみる心、心をみる脳: マインドサイトによる新しいサイコセラピー
― 自分を変える脳と心のサイエンス―
(ダニエル・J・シーゲル 著、山藤奈穂子、小島美夏 訳)
オトコのうつ
(デヴィッド・B・ウェクスラー 著、山藤奈穂子 監訳、山藤奈穂子、荒井まゆみ 訳)
支持的精神療法入門
(アーノルド・ウィンストン、リチャード・N・ローゼンタール、ヘンリー・ピンスカー 著、山藤奈穂子、佐々木千恵 訳)

トップへ
配信停止希望