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星和書店
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専門医がホンネで語る統合失調症治療の気になるところ

専門医がホンネで語る統合失調症治療の気になるところ

渡部和成 著

四六判 並製 148頁
ISBN978-4-7911-0894-7〔2015〕
本体価格 1,500 円 + 税

統合失調症の専門医が、ご家族と患者さんに、ホンネで語るアドバイス! 統合失調症の治療では、患者さんが悩みや症状の苦しみや不安などをホンネで医師に語り、医師がその苦悩を真摯に受け止めつつホンネで助言することが理想である。 患者さんやご家族は、治療現場でどのようなアドバイスを必要としているのか。これに対して著者は、統合失調症治療の専門家として、「治療で気になること」「急性期後の安定期で気になること」「回復に向けて気になること」の視点からホンネでその答えを語る。 統合失調症の基礎知識をまとめて解説している付録も、わかりやすくきわめて有用である。

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精神科治療学
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2,880
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月刊 精神科治療学 第30巻2号

特集:精神科治療学創刊30周年記念特集② ―10年後の精神医療に望むこと、そのために今できること―

10年後のわが国の精神医療を展望!精神医療を取り巻く環境が激変する中で、近い将来、どのような精神医療が求められるか、現状と課題を踏まえて各領域の専門家が解説。精神科医師の働き方、学び方、また精神科医療構造別の展望、多職種協働の動向、ライフサイクルに応じた精神医療サービスの展望を取り上げた。今後10年の精神医療の変化を読み解き、日常臨床をより良くすることに役立つ特集。
JANコード:4910156070252

臨床精神薬理
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月刊 臨床精神薬理 第18巻3号

特集: エビデンスと実臨床との乖離をどう埋めるか

実際の精神科薬物療法とエビデンスとして紹介されている多数の論文との間には乖離がある。本特集では、clozapine 治療の現状、うつ病に対する抗うつ薬の単剤使用、双極性うつ病への抗うつ薬使用、双極性障害における気分安定薬の使い分け、ベンゾジアゼピン系薬の実際、実臨床における抗認知症薬について、それぞれ第一線の臨床家に自らの臨床経験(薬物治療)と文献エビデンスを比較しつつまとめていただいた。
ISBN:978-4-7911-5209-4

精神科臨床サービス
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季刊 精神科臨床サービス 第15巻1号

特集:明日からできる強迫症/強迫性障害の診療 I

強迫性障害(OCD)を理解し、上手に治療する。本特集では2号にわたり、治療の難しさからとかく敬遠されがちな強迫性障害の支援の正しいあり方について、臨床現場のエキスパートがわかりやすく解説。特集 I では、症状の具体例、脳科学による病態解明、薬物療法や認知行動療法の効果的な活用法、併存症の問題、診断法の変遷など、OCDの支援において必ず知っておきたい基礎的情報が満載。
ISBN:978-4-7911-7157-6

今月のコラム
今月のコラム
子育て―親子の数だけ物語がある
 臨床心理士  加藤直子

人の話を聞いても、自分の体験を振り返っても、「子育て」はなかなかの難事業だと感じます。
 私は高齢で子どもを授かりました。その分、それなりの人生経験を積んでおり、余裕を持って子育てに臨めるのではないかと錯覚していました。まして、曲がりなりにも心理士という仕事に就き、親や子どもの心理について関心を持って勉強を重ねてきたつもり……。しかし、実際に親として子どもと向き合うと、こうも思うようにいかないものかと実感する日々の始まりです。

(こんな言い方をしても効果がないなぁ)と頭の片隅でわかっていながら延々と小言を繰り返す。
 (こういう態度が子どものトラウマになったという話をどこかで耳にした)と思いつつ親の考えを押し付ける。

ちょっと振り返っても、なんとも不甲斐ない親ぶりです。にもかかわらず、そんな親であっても、子どもにとっては特別な存在なのでしょう。幼いわが子は、泣いたり、怒ったりしながらも、諦めることなく、まだ私を頼りにし、慕ってくれている様子があります。ならば、立派な親にはなれなくとも、少しでも楽しい子ども時代を過ごさせてやりたいと思うのも本心です。子どもを叱っている私の姿を身近で見ている人には信じられないことかもしれませんが。

そんな親の一人として葛藤する日々の中、星和書店さんからマイケル・P・ニコルスによる『わが子との言い争いはもうやめよう!』を翻訳する機会をいただきました。本書には、たとえばコフート派の精神分析家であるアーネスト・ウルフが健康な自己愛の発達について述べた文献が引用され、また、養育者による適切な調律が自己感の発達を促すというダニエル・スターンの考えや、直線的な因果律ではなく、円環的な思考法で問題解決を図るグレゴリー・ベイトソンの考えも紹介されています。このように広範な学問的基盤を背景に、ニコルスが本書で提唱しているのが「応答的傾聴」というスキルであり(「応答的傾聴」の詳細は、是非、本書をご参照ください!)、彼の豊富な臨床経験とユーモアをスパイスに、そのスキルを用いた各年代の子どもとの向き合い方を実践的に描き出しているのが、まさにこの一冊です。
 実践的と言えば、第7章で取り上げられているタイムアウト法。欧米ではよく用いられているものの、日本ではまだあまり見聞きしないように思うので、ここでご紹介しましょう。

「タイムアウト」とは、かんしゃくを起こしたり、約束を守れなかったりした子どもに与える罰の手法の一つで、それまで過ごしていた場所から強制的に一定時間離れさせることを意味します。時間にして5分程度、子どもをそれ専用の椅子に座らせるか、部屋の隅の壁に向って立たせます。突然、異なる状況におかれ、自由を奪われた子どもは、自らのふるまいに対し罰が与えられたということを実感すると同時に、落ち着いた場所への移動によって冷静さを取り戻す機会を得ることになります。タイムアウトが終わった後には、なぜ、このような罰を与えたのかを親から説明し、さらに子どもの言い分に耳を傾けるというプロセスを取り入れる場合もありますが、子ども自身、罰を与えられた意味を十分に理解しているときには、そのまま日常に戻ります。タイムアウトによって罰は終了しているので、くどくど説教は重ねません。このタイムアウト法、子どもに冷静さを取り戻させるだけでなく、親の側もむやみに感情的にならずにすむという利点があります。
 似たような罰として、“物置や押し入れに閉じこめる、外に閉め出す”というお仕置きを連想する方もいるでしょう。しかし、それでは、子どもによって、過度な恐怖体験になってしまう場合もあります。そのため、タイムアウトによる隔離は、極端に暗い場所や狭い場所、あるいは戸外ではなく、そのときに使用していない居室やバスルームが選択されます。3,4歳から10歳前の子どもに有効とされ、ペナルティとして幼いうちに導入することがより効果的と考えられていますが、このように早期に行動修正に関わるひとつの型を親子が共有することで、感情的な衝突はかなり避けられるのではないでしょうか。

自分の子ども時代があっという間に終わってしまったように、親として子どもと直接触れ合える時間というのはそれほど長い時間ではありません。しかし、親が子どもに及ぼす影響は永遠と言っても過言ではないでしょう。そうした期間を豊かに、大切に過ごし、居心地のよい関係を築いて欲しいという思いが本書には込められています。どの年代においても子どもが安心して外の世界にチャレンジできるような安全基地でありたいものです。あちこちヒビが入ったポンコツ基地であったとしても。

加藤直子先生の本、好評発売中

わが子との言い争いはもうやめよう! ―幸せな親子関係を築く方法―
(マイケル・P・ニコルス 著,加藤直子,赤塚麻子,佐藤美奈子訳)

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