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星和書店
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成人ADHDの認知行動療法

成人ADHDの認知行動療法

実行機能障害の治療のために

メアリー・V・ソラント 著
中島美鈴、佐藤美奈子 訳

B5判 並製 228頁 ISBN978-4-7911-0909-8〔2015〕
本体価格 2,600 円 + 税

本書は、ADHDを持つ人が日常生活において時間をうまくやりくりし、整理整頓をし、計画を立てるための能力を高めることを目的とした治療プログラムを紹介する。実に理想的なワークブックである。

大人のADHDワークブック

大人のADHDワークブック

ラッセル・A・バークレー、クリスティン・M・ベントン 著
山藤奈穂子 訳

A5判 並製 352頁 ISBN978-4-7911-0910-4〔2015〕
本体価格 2,600 円 + 税

集中できない、気が散る、片付けられない、計画を立てられない、時間の管理ができない、などの大人のADHDの症状をコントロールし、人間関係を好転させるためのヒントが満載。ADHDの最新の解説も詳しい。


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精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第30巻8号

特集:抗てんかん薬と精神科臨床

抗てんかん薬を適切に使いこなす!精神科医は近年、あまりてんかんを診ないが、新規抗てんかん薬の中には双極性障害や疼痛性障害、睡眠時随伴症へ適応拡大されたものもあり、一般の精神科医も使い方を習熟しておく必要がある。本特集では、抗てんかん薬ごとに、抗てんかん作用と副作用、薬理学的特徴に加え、気分調節剤としての役割、疼痛や睡眠随伴症状の緩和などにも触れることにより、個々の抗てんかん薬から精神科臨床を俯瞰した特集。主な抗てんかん薬の特徴を整理し、適切に使いこなすために必読の特集。
JANコード:4910156070856

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第18巻9号

特集: DSM-5で新たに病名採用された精神疾患に対する薬物療法

DSM-5で新たに病名採用された精神疾患の薬物療法の特集。まずDSM-5と来るICD-11について展望し、特集では、重篤気分調節症、不安性の苦痛を伴う抑うつ障害、ためこみ症、過食性障害、睡眠-覚醒障害、軽度認知障害について、第一線の専門家にご寄稿いただいた。DSM-5の治療の習熟、来るICD-11の薬物療法へのこの上ない指南書。
ISBN:978-4-7911-5215-5

精神科臨床サービス
本体価格   
2,200 +税
季刊 精神科臨床サービス 第15巻3号

特集:明日からできる摂食障害の診療 I

摂食障害診療の基本を身につけ、実践への足がかりへ――。なかなか良くならない、問題行動が多い、診療に時間がかかるなど、苦手意識を抱きがちな摂食障害。本特集ではその望ましい支援のあり方について、臨床現場のエキスパートが具体的にわかりやすく解説する。摂食障害の歴史や病理、症状から説き起こし、DSM-5における摂食障害の位置づけ、各種治療ガイドラインの紹介と本邦への適用、最新の脳科学の知見や治療法など、多角的に摂食障害の実像に迫る。また、海外の先進的な摂食障害診療現場や、国内パイオニアによるリハビリや栄養指導実践例などについても紹介。摂食障害で苦しむ人たちの支援に明日から活用できる情報が満載。
ISBN:978-4-7911-7159-0

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今月のコラム
認知行動療法のセラピストとして(その2)
ムーミンママとバカボンのパパ
 洗足ストレスコーピング・サポートオフィス  伊藤絵美

こんなふうに認知行動療法(CBT)を駆使することで日々のストレスと上手につき合えるようになった私ですが、40歳になるかならないかの時期に、「不惑」どころか、自分のこれからの生き方に大いに迷ったことがありました。仕事でもプライベートでも様々な問題が振りかかり、その全てに全力で対応したのでは身が持たないぞ、という事態に直面したのです。優先順位を決め、自分が何を大事にして生きていくか、それを決めなければ自分がつぶれてしまう、という危機感に見舞われました。そんなときに出会ったのが「スキーマ療法」というアプローチでした。これはCBTが発展した統合的なセラピーで、CBTが症状や日々のストレス体験を対象とするのに対し、生き方や人生の課題を対象とする非常に深くて広い心理療法です。

スキーマ療法は米国の心理学者ジェフリー・ヤング先生が構築しました。ヤング先生は、CBTの提唱者アーロン・ベック先生にCBTの教えを直接受け、まずはCBTのセラピストとしてニューヨークで活躍しました。が、ヤング先生の元には、症状や日々の問題というより、大きな生きづらさを抱え人生そのものにつまずいて苦しんでいるクライアントが大勢やって来ました。そうなると標準的なCBTでは太刀打ちできないことが少なくなく、そのようなクライアントを手助けすべく、ヤング先生はCBTを中心に据えつつも、そこにゲシュタルト療法や力動的心理療法などの理論や技法を加え、それらを統合してスキーマ療法を作り上げたのです。

人生とは偶然の連続だと常々私は思っていますが、私が自分自身の生き方を見直さなければならなかった時期にスキーマ療法に出会ったのも、本当に「たまたま」でした。ヤング先生が2003年に出版したスキーマ療法業界では「バイブル」と呼ばれている分厚いテキストを翻訳しないか、と某出版社にもちかけられたのです。そのテキストの分厚さにひるみつつ、一方で名前だけは前から知っていたスキーマ療法に多少の関心はあったので、「1章分だけ読ませてください。それから考えます」と回答して、スキーマ療法の理論や手法について詳しく解説してある第1章を読みました。読み始めてすぐに、「これは私自身のために必要な本だ!」ということがすぐにわかりました。

人はそれぞれその人なりの「生きづらさ」や「傷つき体験」を抱えています。人生や生活が順調なときは、それらの生きづらさや傷つき体験は息をひそめていますが(ただしあまりにも大きな生きづらさや傷つき体験を負わされている人は、常にそれらに苦しんでいます)、人生の節目になるとそれらは顔を出し、「この生きづらさをどうしてくれよう?」「この傷つき体験を抱えたままでどうやって生きていくのか?」といったことを自分自身に問いかけてきます。それらの問いかけを無視しながら何とか節目を乗り越えていくことも可能かもしれませんが、40歳という不惑の年齢で惑いまくっていた私は(当時は「アラフォー」という軽やかな言葉はありませんでした)、「ここでこれらをしっかりと見つめ、今一度自分の生き方をしっかりと考える必要が絶対にある、そしてスキーマ療法がその鍵を握っている、スキーマ療法が私を解決に導いてくれる」と確信しました。そしてその「バイブル」を訳しながらスキーマ療法を学びつつ、スキーマ療法を実践した私自身も、不惑の危機を無事なんとか乗り越えることができたのでした。あのときあのタイミングでスキーマ療法に出会えたことを、私は今でも深く感謝しています。

ちなみにスキーマ療法でいう「スキーマ」とは正確には「早期不適応的スキーマ」という名前を持ちます。スキーマとはもともと発達心理学や認知心理学の言葉で、「心の法則」「心の中の深い思い」「その人なりの信念」といった意味を持ちます。「早期不適応的スキーマ」は、簡単に定義すると「人生の早期に形成されたその人なりの思いや信念(すなわちスキーマ)で、形成されたときには適応的だったかもしれないけれども、後にその人を生きづらくさせるスキーマ」のことを言います。生き方レベルで何かを乗り越えたいとき、従来のCBTで扱う自動思考だけでなく、特に自らの早期不適応的スキーマを理解し、スキーマレベルの回復を図る必要がある、というのがスキーマ療法の基本的な考えです。

さてスキーマ療法の具体的な理論や内容については、興味のある方には書籍(たとえば拙著『自分でできるスキーマ療法Book1』『自分でできるスキーマ療法Book2』『スキーマ療法入門』)を参照いただくとして、ここではスキーマ療法で最も重要な「治療的再養育法」という考え方と技法に触れておくことにしましょう。

CBTでの治療関係は「協同的実証主義」などと言いますが、セラピストとクライアントが治療チームを作ってチームメンバー同士で協同しながら様々なワークを行うことを重視します。もちろん治療の責任はセラピストにありますが、その中で対等でフェアな関係を作っていく感じです。一方、その人の生きづらさや傷つき体験をダイレクトに扱うスキーマ療法での治療関係は、「治療的再養育法」といって、セラピストがクライアントを再養育するような関わり方をします。そしてクライアントの中に「安全で健全な養育者」のイメージを作って、その「養育者のイメージ」がクライアントの傷つきを癒し、クライアントを健全な方向に再養育できるようにもっていくのです。もっと平たい言葉で言えば、その人の中に、「その人を癒し、導いてくれる素敵なパパやママの存在」を作っていく感じです。セラピストとクライアントという治療関係の中でスキーマ療法を行う場合は、セラピストがそのモデルになればよいのですが、私のように一人でスキーマ療法に取り組む場合は、生身のセラピストがいませんから、代わりに「自分を癒し、導いてくれる素敵なパパやママの存在」のイメージを作る必要があります。私の場合、それが「ムーミンママ」であり「バカボンのパパ」のイメージでした。

ムーミンママのイメージは私にとっては「ザ・ママ」であり、悲しいときや寂しいとき、イライラしたときや機嫌が悪いとき、どんなときでも優しく受け入れ、抱きしめてくれる存在です。どんなときでも「いいのよ」「大丈夫よ」と言って、安心させてくれる存在です。一方、バカボンのパパのイメージは私にとっては「ザ・パパ」であり、いつだってドーンと構え、「これでいいのだ!」と私を認め、ときには背中を押してくれる存在です。そんなイメージに助けられ、再養育されながら、私自身のスキーマ療法は進んでいきました。さて、皆さんが治療的再養育法を自分でするとしたら、皆さんのパパやママはどんなイメージでしょうか? スキーマ療法に取り組まなくとも、それをイメージするだけでも結構癒されたり、気持ちが安定したりするものです。目をつぶって、どんなパパやママに登場してほしいか、イメージをしてみてください。もしご自分でスキーマ療法に取り組んでみたいという方がいらっしゃれば、ぜひ拙著(『自分でできるスキーマ療法Book1』『自分でできるスキーマ療法Book2』)をご参照ください。

(了)

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