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星和書店
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チャレンジング行動から認知症の人の世界を理解する

チャレンジング行動から認知症の人の世界を理解する

BPSDからのパラダイム転換と認知行動療法に基づく新しいケア

イアン・アンドリュー・ジェームズ 著
山中克夫 監訳

A5判 並製 216頁
ISBN978-4-7911-0926-5〔2016〕
本体価格 2,300 円 + 税

BPSDといわれる認知症の問題行動を、つらい状況を本人なりに解決しようとする努力のあらわれである「チャレンジング行動」ととらえ、認知行動療法の枠組みから対応策を理論から実践例まで紹介。

自閉症:ありのままに生きる

自閉症:ありのままに生きる

未知なる心に寄り添い未知ではない心に

ロイ・リチャード・グリンカー 著
神尾陽子、黒田美保 監訳
佐藤美奈子 訳

四六判 上製 612頁
ISBN978-4-7911-0927-2〔2016〕
本体価格 3,300 円 + 税

文化人類学者であり自閉症の娘をもつ著者が、混沌とした自閉症の世界を巡り歩く。何が真実で、何が虚像なのか。グローバルな視点で分析され導き出された自閉症の定義や解釈が本書に結実。

EMDR革命:脳を刺激しトラウマを癒す奇跡の心理療法

こころの治療薬ハンドブック第10版
《電子書籍版》

酒井隆、宮本聖也、吉尾隆、諸川由実代 編

本体価格 4,000 円 + 税
M2PLUS eBook Store から、 iOS、AndroidOSの電子書籍をご購入いただけます。

日本国内で使用されている向精神薬を1つ1つ見開きページでわかりやすく解説する。単なる薬剤情報のみではなく、実際に使用したときのエピソード、服用や処方のポイントなど、他書にはないすぐに役立つ情報が満載。医師だけではなく、精神科の薬物療法に関心のあるコメディカル、患者さんやその家族にも大好評の書。薬剤写真や識別コード一覧もさらに充実し、向精神薬の最新情報が一目でわかる。最新版では、2015年末までに発売された新薬や適応が拡大された薬剤についての情報を追加した。精神科領域での使用が注目されている漢方薬の項目がさらに充実。

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精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第31巻3号

特集:鑑別しにくい精神症状を診分ける

鑑別しにくい精神症状の診分け方を徹底解説!操作的診断基準が普及した現在、ともすれば精神症状の見方が雑になってはいないか。だとすれば、精神科医にはどの程度の鑑別能力が求められるか。本特集では、統合失調症と自閉スペクトラム症、うつ病と神経症圏における身体症状の鑑別、認知症とうつ病、単極性うつ病と双極性うつ病、境界性パーソナリティ障害と双極II型障害、興奮の鑑別、大人のADHDと双極性障害や神経症性障害などを取り上げた。鑑別しにくい精神症状に出遭ったときに役立つ特集。
JANコード:4910156070368

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第19巻4号

特集: Venlafaxine遂に上陸

新規抗うつ薬の登場。SNRIに分類される抗うつ薬Venlafaxine(商品名:イフェクサーSRカプセル)が、20年の治験を経てわが国で承認された。海外ではうつ病治療における第一選択薬として広く使用され、エビデンスもきわめて豊富である。本特集では、venlafaxineの薬理学特性や作用機序、薬物動態、治療ガイドラインにおける位置づけ、国内・海外での臨床データ、など、本剤を使いこなすためのあらゆる情報を提供し、SNRIの新たな可能性を探求する。
ISBN:978-4-7911-5222-3

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今月のコラム
精神科医と患者さんの人生
中山靜一

このたび『精神科・心療内科にかかる前に読む本』という本を星和書店から出版していただきました。この本を書くにあたって考えたことを書いてみたいと思います。

(1)「精神科」という言葉
 ひと昔前は精神科の病院は「精神病院」と呼ばれていました。昨今は「精神科病院」と呼ばれます。「精神病院」は「精神科病院」と比べて「科」という字がない分、医学の他の科とは違って特殊だという雰囲気が強調されていました。
 精神病院は恐ろしい場所であり精神科という言葉は、声をひそめて発しないといけない言葉でした。身体の病気や事故で駆けつける白い救急車ではなくて、黄色い救急車で迎えに来て鉄格子のはまった部屋に収容されたが最後一生出られない。映画『カッコーの巣の上で』のように電気ショックやロボトミーが治療という名のもとで懲罰として行われ死なないと退院できない。死んで棺桶に入れられて退院することを精神病院の長期入院患者さん達は「ガン箱退院」と呼んでいました。
 「精神科」というとこの精神病院のイメージがまだ完全には払拭されていないのではないでしょうか。精神の病にかかるということは、とりもなおさず、もう治らないという意味で「精神障害」になることである。精神の病=精神障害=廃人という図式です。たぶん「精神科」のハードルはまだまだ高い。

(2)「心療内科」という言葉
 本来の「心療内科」は高血圧・胃潰瘍・気管支喘息・過敏性腸症候群などの、発病や経過に心理的要因の関与が大きい身体疾患(すなわち「心身症」)を扱う診療科のことです。内科医が心療内科を標榜するときはこの通りだと思われますが、不眠症や軽症のうつ病や神経症も治療の対象になっていることがあるようです。
 一方で精神科医が「心療内科」を標榜する場合は精神疾患の患者さんが受診しやすいようハードルを下げるために本来の意味と違う「ソフトな精神科」の意味で「心療内科」という名称を使っています。これは本来の「心療内科」の意味と異なっているので正しい使い方ではないというそしりを免れません。精神科医自身が「精神科」というと患者さんに敬遠されるからと、患者さん以上に偏見を持っているのかもしれません。

(3)医師患者関係
 統合失調症の患者さんと一緒に生活している家族の方が、患者さんに対して批判・敵意・感情的巻き込まれなどを表現することが多い(すなわち感情表出が高い)と患者さんが不安定になりやすい。逆にそれらが少ない(感情表出が低い)と患者さんの再発再燃が少ないということは今や常識になっています。これは別に家族の方に限ったことではなく、職場の上司や同僚・学校のクラスメイトや教師の方など患者さんの周囲にいらっしゃる方すべてにあてはまります。そして病院やクリニックの医師・ナース・薬剤師・コメディカルスタッフ・受付など事務職の方にもあてはまります。おそらく統合失調症以外の精神疾患の多くでも事情は同様でしょう。
 医師が患者さんに対して共感を持って接し、いつも穏やかで落ち着いていて、怒ったり批判したりあるいは巻き込まれたりしなければ患者さんも安心して受診できるでしょう。
 同じ薬が処方されても医師の人柄・表情・態度・雰囲気によって薬の効き方に違いが出ます。病気に対する患者さんへの説明の仕方、薬に対する説明の仕方、通院の頻度によっても違いが出ます。薬は脳内の神経伝達物質に働きかけ神経回路を調整して効果を示すわけですが、医師患者関係そのものもこれらに作用するからだと思います。平常心・自然体で穏やかに患者さんに接することができるように医師は自分自身の体調管理がとても大切になります。

(4)事実は小説より奇なり
 私の精神科臨床は極めて常識的で平凡なものですが、患者さんの人生は平凡ではありません。波乱万丈という表現がまさにぴったりという方も少なくありません。私は患者さん達との関わりから多くのことを学びました。そして私自身の人生にも大きな影響を与えてくれました。
 精神科医の最初の診立てとその後の治療がうまくいくかどうかで患者さんの人生を変えてしまう可能性がありますので精神科医の責任は重大です。患者さんの人生をマイナスの方向に向けてしまわないよう、今後も勉強し精進をしてゆかないといけません。

 最後になりますが、今回本を書きながら、いろいろ成書を読み、あらためて大変勉強になりました。しかし私の不勉強と理解不足による間違いや不適切な表現があると思います。ご指摘いただければ幸いです。

中山靜一(なかやま せいいち)
袋田病院副院長。1955年静岡県下田市生まれ。精神科医。臨床精神神経薬理学専門医。
近著『精神科・心療内科にかかる前に読む本』星和書店刊。
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