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星和書店 こころのマガジン
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精神科医がうつ病になった

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回復のポイントは何か? 何を心がけたらよいか?

小松順一 著

本体価格 1,800 円 + 税

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不安や心配を克服するためのプログラム

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患者さん用ワークブック

全般性不安障害(全般不安症)をもつ人や,その傾向のある人のための認知行動療法

ミッシェル・G・クラスケ、デイビッド・H・バーロウ 著
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ハイパーアクティブ:ADHDの歴史はどう動いたか

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複雑に概念が変遷してきたADHDについて一挙に理解を深めることができる

マシュー・スミス 著
石坂好樹、花島綾子、村上晶郎 訳


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よくわかるギャンブル障害《電子書籍版》

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本人のせいにしない回復・支援

「自己責任」という呪文がギャンブル障害の回復を妨げる

蒲生裕司 著

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精神科治療学

月刊 精神科治療学 第32巻10号

《今月の特集》

双極性障害薬物療法のState of the Art II

双極性障害の薬物療法の現時点での到達点とその限界を2号にわたり網羅。

双極性障害の研究は飛躍的に進み、治療法も確実に進歩した。気分安定薬の使用が一般的となり、非定型抗精神病薬や抗てんかん薬など、処方の選択肢も増えた。しかし臨床では今なお病状安定に苦慮する症例は多い。

今号では特殊なケースや薬物療法の諸問題を取り上げた。本特集は、最新の知見を目の前の患者にいかに適用するかが具体的に書かれており、読者にとって日々の臨床におけるディシジョンメイキングの大きな道しるべになるだろう。

本体価格 2,880 円 + 税

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臨床精神薬理

月刊 臨床精神薬理 第20巻11号

《今月の特集》

持効性抗精神病薬治療の課題と新たな可能性

持効性抗精神病薬治療の現在と未来について考える!

持効性抗精神病薬注射製剤の治療について、様々な角度から考察した特集。

有効性証明への課題、3ヵ月製剤の可能性、双極性障害における治療の位置づけ、治療の継続性、少量維持治療の意義、経口抗精神病薬との併用投与、地域包括ケアにおける役割と適性評価について、第一線の専門家が概説した。

本体価格 2,900 円 + 税

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精神科治療学 第32巻 増刊号

精神科治療学 第32巻 増刊号

高齢者のための精神科医療

精神科医療の現場で急増している
高齢の患者への対応を解説した決定版!

高齢化社会を迎え、認知症をはじめ、統合失調症や気分障害などの精神疾患を持つ高齢者に対応する場面が増えている。一般精神科医もそうした高齢の患者への対応に精通しなければならない。

本増刊号は、高齢化による病像変化、身体機能の低下に伴う薬剤調整、高齢発症の精神疾患や認知症合併例への対応、さらには自動車運転や終末期医療などの社会的・倫理的問題や、医療経済面も取り上げた。

高齢者の診療を行う機会のない精神科医はほとんどいない現状において、高齢者のための精神科医療を網羅した、すべての精神科医療関係者必読の書。

本体価格 5,900 円 + 税

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今月のコラム

葉の色が変わらない木々に囲まれても
紅葉狩りを楽しむことはできません

鈴木孝信

私は普段トラウマを抱えた方たちの心理臨床に携わっていますが、今までずっと腑に落ちず納得できなかったことがありました。それは特にトラウマの問題に関して言えることですが、トラウマにフォーカスされた方法は実際どのように効果があるのだろうか、ということです。学術論文でその効果が示唆されていたり書籍などで紹介されているものの、実際はどうなんだろうと。というのは、トラウマを抱えた特定の来談者に対しては、技法はあまり効果を発揮しないのでは、と臨床経験からずっと思っていたからです。

その疑問の答えが最近ようやく分かった気がします。そのきっかけになった海外の論文をまずご紹介したいと思います。Journal of clinical psychologyに掲載されたトラウマ療法の臨床試験を対象としメタ分析が行われた研究です(Gerger, et al, 2014)。

この研究では、PTSDの複雑さ(複雑性でないVS複雑性)によってoutcomeはどうなるかということ、またトラウマにフォーカスされた具体的な技法を伴ったセラピー(例:TF-CBT)と、具体的な方法を伴わないセラピー(例: 支持的療法)とではoutcomeはどう違うかということが調査されました。これらの比較をするために、18のランダム化比較試験が分析されました。

分析の結果、とても興味深い可能性が見出されました。まず、複雑性でない問題を抱えている来談者の場合、トラウマにフォーカスしたセラピーの方が、そうでないセラピーより効果があることが分かりました。これは当然だと思うかもしれません。興味深いのは、複雑性の問題を抱えている来談者の場合です。この場合、トラウマにフォーカスしたセラピーとそうでないセラピーとの間に、outcomeの差がほとんどないことが分かったのです。

つまり、複雑性のPTSDを持つ来談者には、トラウマに特化した技法を使うのも、比較試験で用いられるコントロール群への介入も、効果においてはあまり差がない、という可能性が示唆されているのです。私がずっと疑問に思っていた点はこれだったんです。愛着の問題やたくさんのトラウマを抱えている方に対しては、色々学んできたトラウマ療法に効果があることが期待するほど多くなく、協力して問題に取り組み、共感があり、承認するような(特別な技法を用いない)治療関係の中に効果があることが予想外に少なくなかったのです。

トラウマを扱う際は、やっぱり治療関係がとても大事なんだろうな、そう私は思っています。その上に臨機応変に技法が活用されると、さらに効果が発揮されるのでしょう。でもひょっとしたら逆かもしれません。技法が有効に使われると、治療関係がさらに意味をなし、それが治療効果を引き出すのかもしれません。私はトレーナーとしてBrainspotting(ブレインスポッティング)という心理療法を指導していますが、この治療法では、治療関係の意義は、技法の結果として生じるという理論的枠組みを持っています。技法は関係性を支持するためにある、そう教えているのです(普通は逆を想像しますよね)。技法の活用により治療関係による癒しの力が強まる。それによってうまく調整された脳の情報処理が起きるので、素早く徹底的な、そして安全な処理が生じる、そういった性質を持つ方法です。

今思うと、冒頭の疑問に対しては、私の中では答えがなんとなく分かっていたのかもしれません。関係性の重要性を大前提としたBrainspottingに惹かれた理由も、そのあたりにあったのでしょう。  

参考文献

 Gerger, H., Munder, T., & Barth, J. (2014). Specific and Nonspecific Psychological Interventions for PTSD Symptoms: A Meta-Analysis with Problem Complexity as a Moderator. Journal of Clinical Psychology, 70, 601-615.
 Grand, D.(2013). Brainspotting. New York, NY: Sounds true.(グランドD. 藤本昌樹・鈴木孝信(訳)(2017).ブレインスポッティング入門 星和書店)

鈴木孝信(すずきたかのぶ)

 ケンタッキー州立大学文理学部卒業。心理学を専攻、哲学を副専攻として学ぶ。マサチューセッツ大学大学院教育学部カウンセリング学科修士課程修了(理学修士)。現在、東京多摩ネット心理相談室代表。医療法人和楽会赤坂クリニック非常勤心理士。国際ブレインスポッティング・トレーナー。ブレインスポッティング・トレーニング・インスティチュート日本(BTI-J)代表。
  訳書に『ブレインスポッティング入門』(デイビッド・グランド著,共訳,星和書店刊)がある。

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