星和書店 こころのマガジン
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あけましておめでとうございます。でも、どうして年が明けると、おめでたい のでしょうか。おめでとうございます、と言ったばかりのニュースキャスター が、引き続き、悲惨なニュースを報道していました。

いやな気分、いい気分

傷つけられた心は、なかなか回復しないようです。恐ろしい、辛い、苦し い、気分は、しっかりと心の中に保存されてしまうのでしょう。災害や地震な どの恐ろしい出来事だけでなく、ちょっとした辛い出来事が、人の心に辛い感 情を持続的に生じさせ、 それが何年も何年も続くPTSDを引き起こすこともあ ります。落ち込んでいる人を、なんとか気分よくさせようと周りがいろいろ工 夫しても、なかなか上手く行かないという経験を皆さんされていることでしょ う。

ところが、いい気分は、簡単にこわれてしまいます。ああ幸せ、とか、わあ、 美味しい、といった楽しい感情は、簡単になくなります。 またいい気分が続 いているからといって、問題にはなりません。 

こう考えてみて、他者を辛い気持ちにさせること、人に苦痛を与えることは、 罪なことです。 この苦痛は、苦痛を味合わされた側にしか分からないもので す。 他者を喜ばせたり、他者の気分を良くする体験を与えるとかは、大事な ことです。 ですが、いい体験をさせたのだから、ちょっとくらい嫌なことを しても問題はない、というのは、どうも間違いのようです。 何か事件があっ て、「あんなに良くしてやっていたのにどうしてそんなことをしたのだろう」 というような話をよく聞きます。 国を与え一国一城の主にさせてあげたのだ から、と言っても、心の傷が反乱を引き起こしてしまいました。味合わされた 苦痛は、本当に、なが〜く、なが〜く、残るようです。 例えば、戦争の時味 合わされた辛い思いなどは、PTSDとなり、長い年月を経てもその当時の辛い思 いが風化せず、そのままの強さで残っていると思われます。 このことから他 者がいやだいやだ、辛い辛いと言っているのに、そんなことはない、そんな気 持ちは理解できない、とは言えないはずです。 痛くて痛くてと痛みを訴えて くる患者さんに、検査結果から何も原因は見当たらないので、痛いはずはあり ません、と言う医師がいたとしたら、どうでしょうか。

 いやな気分にさせる外的環境が支配的ななかで、どうしたらいやな気分を変 えていけるのしょうか。辛い気持ちを変化させていく治療法もいくつか開発さ れてきました。 辛い気分になられた方々を少しでも援助できるように、また それらの人々を治療されている治療者の方々の手助けになる情報を本年も星和 書店は出版していきたいと思います。 本年も何とぞよろしくお願い申し上げ ます。


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