まずは、周りの人から
当社のような小さな会社でも、経済状況が悪いせいか、
近くの銀行の管理職の方々がたずねてくるようになりました。
経済活動とはあまり縁のない出版社なので、
銀行の人たちと話が合うはずはありません。
利益を出す経営とか、資産運用なんて話をされても、
まるで馬の耳に念仏です。せっかく来ていただいたのに、
こちらがつまらない顔をして追い返すのも悪いので、
これをいい機会だと、うつ病など、
精神科の話をするようにしました。そうすると、これに懲りて、
もう2度と当社には来ないだろう、と予測したわけです。
それがすっかり期待を裏切られました。
皆さんすごく熱心に話を聞いてくれます。話し出すと、
こちらも時間を忘れてしまいますが、あちらも、
いろいろ質問などして、あっという間に1〜2時間過ぎてしまいます。
しばらくすると、みなさん、また尋ねてきます。
忙しい銀行の支店長なども、よく電話で、今から行ってもいいですか、
と連絡してきて、飛んできます。最近では、経済的な話題は全くなく、
行員の方々のいろいろな相談をしにきます。急に休んでいるのだけど、
どうもお客さんとうまくいかないのだけど、
最近元気がないんだけど元気づけてもいいのかなあ、などと、
こちらが話した成果がでてきたような相談内容がふえてきました。
忙しいときに時間はたくさんとられますが、これも啓蒙活動のうち、
当社の仕事の延長線、と考えて、楽しく相談にのったり、
精神科の各疾患の話をできるだけわかりやすく
お話しするようにしています。
当社では、当社の本をお読みいただいた患者さんやご家族から、
ちょくちょくお電話をいただきます。
読者からのご質問やご相談の電話は、
私に回ってくることになっています。
時には1時間ほどもお話になる方もいます。最初は、
すごく攻撃的だったりということもあるのですが、
こちらが真摯にお話をお聞きしていると、
いろいろなことをお話になり、
とめどもない話にもなりますが、
最後にはすごく今日は話ができてよかった、
精神科に行ってもなかなかこんなに話を聞いてもらえなかった、
と言っていただけることがあります。
企業の中でもメンタルヘルスの啓蒙が
行われているとは言われていますが、
それは本当に大きな会社の、
また中心部でのことのような気がします。
銀行でも、支店レベルになると、
全くといって良いほど、何も知りません。
何しろ、毎日、数字、数字、数字、
で責められているのですから。
私どもこの分野で働く者は、
いろいろな機会を見つけて、
少しづつでもメンタルヘルスの話を、
これらの人たちにしていかなければ
いけないのでしょうね。
まずは、毎日の実践です。私は、
昼食をとりに行く近くの店のおやじさんたち、
当社の仕事をしてくれている印刷会社の社長さん、
車を売りに飛び込みでくるセールスマン、
コピー機などをうりにくるセールスマン、
などにメンタルヘルスの話を
押し付けがましくするようにしています。
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