「予算」とストレス
いきなり「ご予算は」と聞かれることが多々あります。
久しぶりに遠方より友来たりて、レストランで歓待しようと予約の電話をすると、さっそく「ご予算は」ときます。1万円、8千円、6千円なんてことになって、その金額で料理のランクやお客のランクが決まってくるような感じです。
では、1万円かけたら、喜ばれる料理ができるのでしょうか。
こういう料理は、どうでしょうか、今の季節こういう料理はおいしいですよ、そう、ではそれでコースを考えてみてください、そうするとお幾らになりますか、そうですね、これくらいでいかがでしょうか、というやり取りをしたいものです。ところが、予約の電話を受ける人が、料理のことを知らないことも多く、値段だけの勝負をかけてきます。
ここのところ毎日といっても良いほど、いろいろな事件があります。事件というより、驚くような出来事、といったほうが良いかもしれません。あまりに新しい出来事が報道されるので、ちょっと前の出来事でも、思い出すことが困難になってしまいます。
コムスン、ノバ、ブックオフ、渋谷の温泉施設での爆発、そして牛ミンチ問題、と目白押しです。2週間前の事件など、すでに霞んでしまいます。これらのどれを見ても、予算達成、売り上げノルマをこなす、ということが、その根底にあるようです。
それにしても「予算」という言葉は、すごい力を発揮しています。予算をたてて達成しろ、予算がないからできません、予算が余ったから使ってしまえ、と、今や予算は錦の御旗ですね。過大な予算をたてて達成するとなると、これはかなりストレスがおおきくなるでしょう。低い楽な予算をたてたらと思うのですが、それでは上司に怒られるそうです。
予算達成、利益追求、で日々攻め立てられ、それで事件があると、今度は、マスコミに攻め立てられます。「牛ミンチに豚を混ぜたのは、誰ですか」と工場長がマスコミの追及を受けていました。 マスコミは、検事でも裁判官でもないのでしょうが、相手の心の状態などまるで考えていないようです。この工場長は、今までも予算にせめたてられ、今度は、被告席です。社長がやったとも言えない、といって、私がやったとは言えない、社長がやったといえば会社でまずい立場になるだろう、などと、2重、3重拘束状態に置かれているようでした。こういうストレスは、心の病の原因になるのでしょうか。
「予算」がストレス惹起性のものならば、「予算」などないほうがいい、と思って、当社には「予算」がありません。精神医学の出版をしている会社に、心の健康に良くないストレスがあるというのも、説得力に欠けます。そういうことから、悪いストレスは、ないほうがいい、と考えて、「予算」も売り上げ目標、利益計画、など、ほとんど何もありません。
また、規則はできるだけないほうがいい、という考えで、ほとんど決まりというものもありません。何時いつまでに出版するという計画を立てると、最後にあわてて突貫工事で仕上げなければならない羽目になります。こうすると、ミスも起きやすいですが、なにより、編集者、印刷所、などのストレスが過大になります。ということで、どんどん出版時期が先にずれ込みます。周りからは、そんな経営は、ただ経営者がぐうたらなだけ、とよく言われます。確かにそうかもしれません。
ということで、出版が遅れているものが多々あります。
何とぞご寛容のほど、お願い申し上げます。
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