エコロジー と エソロジー
40年ほど前は、要らなくなった紙類が高く売れました。
経済成長著しい時代ですから、回収業者が紙を高く買っていきました。
出版物を作る場合、出版社は、紙は紙卸から買い、印刷所に印刷を発注し、
製本所に印刷があがった刷り本を運んで製本してもらいます。
製本所では、
大きな紙に印刷されているものを幾重にも折ります。
そうして頁を
そろえてから、
周りを
ズバッと
断裁機で裁ち落とします。
この紙のゴミが、かなりの量になります。
当時は、この裁ち落とした紙のゴミを売るだけで、製本所で働く人の給料が出たといわれていました。
このため、当時の製本所は、とても儲かっていたそうです。
考えると、この紙のゴミは、出版社が買った紙なのですから、本来は出版社のものなのでしょうが、当時は、出版社も鷹揚でした。
出版社も、売れなくなった本を断裁するとき、その紙が高く売れたものです。
その後、紙は売れなくなり、出版社も、断裁するとき、紙を売れるどころではなく、経費を払って断裁してもらうという時代になりました。
最近は、出版物が売れないせいもあるのでしょうが、廃業する製本所が増えています。
ここ1、2年のことでしょうか、外に紙を捨てておくと、いつの間にかなくなっています。
ゴミ収集業者ではなく、普通の荷物車で、ゴミの収集車が来る前に、集めて回っています。
紙がまた売れる時代になってきたようです。集めた紙は、中国や東南アジアに良い値で売れるそうです。
ここのところ、製紙メーカーの古紙の含有率が問題にあげられています。
何が問題なのでしょうか。古紙の含有率を偽っていたということが問題なのでしょうか。
古紙の利用率が低いということが問題なのでしょうか。
大量に紙を消費すること、すなわちたくさんの木が伐採されることが問題なのでしょうか。
エコロジカルな観点からみても、資源を保護すべきであるということに、異論はないでしょう。
大量消費時代に別れを告げて、ものを大事にしなければならない現在、
企業は、たくさん販売し、売り上げを上げることに夢中になっているようです。
そんなにビールを売らなくてもいいのにと思えるのですが、各ビール会社は、
販売量を増やすことにあの手この手、宣伝費をかけ、大量の宣伝物をばらまいています。
野球チームが優勝すると、なんと、たくさんのビールやシャンパンを、頭からかけ合っています。
それをテレビが、うれしそうに何度も何度も放映しています。飲むのも良くはないのでしょうが、
なんと、大量に捨てているのですね。
100円ショップでは、安く売るために、大量に物を作ります。買うほうも、
安いからといろいろ買ってしまって、ずいぶんと無駄になっている場合もあるかと思います。
回転寿司なるものでは、時間がたってしまった寿司を、廃棄処分にするそうです。
こうしてビジネス的に成功した回転寿司の会社をテレビ局は、すばらしい成功例として紹介します。
どんどんお寿司が捨てられていくのを、とてもすばらしいことのように放映していました。
フリーペーパーなるものがあります。無料で駅などにおかれている雑誌です。
広告でなりたっているのですから、何しろたくさん作って、広告料をたくさん集めたいわけです。
ですので、いい内容というよりも、うけ狙いの内容ばかりになりますし、何しろたくさんの紙が使われます。
余った雑誌は、大量に廃棄されます。
これら利益追求型のビジネスモデルが、次から次と出てくる現実と、物を大事にする、
資源を大事にする、という理想とを、どうとらえたらいいのでしょうか。
エコを訴えるテレビ番組の次に、ビールのかけっこ大会を平気で放映しているテレビ局もあるのですから、
人間の欲は本当にすごい魔物なんですね。
つい先日、賞金女王となった女子プロの子ども時代からの歴史がテレビ報道されていました。
小学校4年のとき、熊本でゴルフ塾に入って練習し始めたそうです。
なんと、このゴルフ塾は、無料なのだそうです。世界に通用するプロゴルファーを育てようと、
一人のプロゴルファーが、自分の身銭をきってひらいているそうです。1人2人を教えているのではなく、
たくさんの子どもたちがその塾で練習しています。ゴルフは、お金がないと出来ないと思われていますが、
ここでは、レッスン料が無料なだけではなく、ゴルフクラブもすべて無料で与えてくれるのだそうです。
ここで育った子どもたちが、そこを巣立って、他のコーチについて、ついには、
プロゴルファーへと成長していきます。塾長は、そこを巣立った子どもが、賞金女王になっても、
きっと、一銭も利益にはならないのではないでしょうか。塾の卒業生から、
優秀なプロゴルファーが育ってくれたという喜びが、この塾長にとっては、
金銭よりもはるかにおおきなものなのでしょう。
人間の生き方について、エソロジカルな面からもいろいろ考えさせられる昨今です。
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