石の上にも30年
長年、同じ分野での出版を続けていると、それなりに評価してもらえるようになり、社名も広く覚えてもらえるようです。毎日、少なくても一つは、お原稿やご企画の御提案が郵送されて来たり、メールで送られてきたりします。
昨年の6月、一通のお手紙をいただきました。かおりさんの手書きのお手紙でした。
(以下は、かおりさんの許可を得て、ここに載せさせていただきました)
はじめまして。私は学校に行っていれば高校2年生の16歳です。今までに星和書店さんの本は、何冊か読んでいます。・・・・・・・・・たなかみるさんは、マンガでいろいろと表現されていますが、私は日本画、誌、日記などで表現しているところです。これは私がまだBPDだとは知らなくて、リストカットを始めたころから描きためてきたものです。・・・・・・・・・
心をなくしたいと何度願ったことでしょうか。入院するたびに思いました。私は全然すばらしくない人間です。でもこんなやつでも生きていけるよって。今、死にたいと思っている人。すごくつらいと思っている人へ伝えたいです。死なないで。窓の外を見てみてください。一度、深呼吸してみてください。刃物を一度手から離してみてください。あなたは大丈夫だと。うまく言えない。けれど、伝えたい。生きていて。私はあなたが必要です。私はあなたと共に生きていきたいです。悩んでもいい。まよってもいい。と。・・・・・・・・・・・・・・・
その後、素晴らしい日本画といくつかの詩、文章が送られてきました。その後、何度かやり取りをしながら、いただいた原稿を整理し、そしてこのたび本になりました。それが今月の新刊「境界性パーソナリティ障害18歳のカルテ・現在進行形」です。かおりさんの本文も素晴らしいですが、お母さんが書かれた頁、そして主治医の先生が書かれた後書きも心を打ちます。上記、本書をクリックして、本書の頁に飛べば、その部分の一部が読めるようになっていますので、是非お読みください。
出版された後、次のようなメールをいただきました。
(ご許可を得て掲載します。)
こんばんは。
かおりです。
今日、本をいただきました。
あんなにたくさんいただけるとは思ってもみなかったので、びっくりでした!
ありがとうございます。
そして今日は、10回目の精神科の入院の、退院の日でもあったので、嬉しいことがたくさんあるので今日は朝の3時半から目が冴えてしまって大変でした。
本を手にしたとき、ホントに嬉しかったです。
あー。死んでなくて良かった。
と。
いつも生きたい。
と願っているのに、いつも
死にたいと嘆いてしまう。
単純です。今日だけはそんな自分にも、やさしくしてやろうかな。
石澤様。
私のほんの小さな希望を拾ってくれてありがとう。
明日も生きていきたい、と、願うことができる今日をつくってくださってありがとう。
これからも、わたしは、絵を描き、詩を紡ぎ、傷つきながら一生懸命いきていこうとおもいます。ありがとうございました。
石澤様
かおりの母です。お世話になり、ありがとうございます。
本を作りたいと夢のようなことを言っていた娘の希望を、せめて手紙だけでも出して「がんばって!」と返事をもらえたらありがたいという思いでいました。
星和書店さんなら、娘の症状を分かって返事してもらえるのでは・・・と願いながら・・。
それが、このような機会を与えてもらえることになり、本当に感謝しています。
今までを振り返りまとめる作業は、大変な事ではありましたが、大きな節目になったように思います。
そして、18歳のカルテは、今も更新中です。日々、エピソードが増えていきますが、娘のことを支えてくださる方々のおかげで何とか今日も無事に過ごすことができました。
石澤社長さん、**さん、スタッフのみなさんに作っていただいたこの1冊が、これからのかおりの大きな支えになっていきます。
みなさまにもよろしくお伝え下さい。ありがとうございました。
こういうご連絡をいただくと、じ〜んと感動してきます。うれしくなりますね。
返信しました。
かおりさん
かおりさんのお母様
こんばんわ。
こちらこそ、ありがとうございます。
本当に素晴らしい本ができましたね。かおりさんに初めて文章を 見せていただいた時、ふっと心が動かされました。かおりさんの才能に気づかされた最初です。今、本ができてみて、改めてその実感がこみ上げてきます。
また、お母様の頁にも本当に感動いたしました。一気に読みました。
今の精神科の本では、言葉を多用し理論ばかりの本が多く、実際の心の動きは伝わってこないものが多いのです。お二人の文章は、本当に心から書かれていて、読む人誰をも感動させるものだと思います。
読む人に大きな勇気を与えてくれます。私も勇気を与えてもらいました。
本当にありがとうございます。
このたびいただいたお二人のメールは、当社の出版の姿勢をよくあらわしてくれています。
何時も患者さんのため、治療者のための本を出していきたい、
ビジネスとしての出版ではなく、心ならずも心病める人のために役立つものを、
という当方の気持ちを、お二人の文章がとてもよくあらわしてくれています。
かおりさんから、お母様からのメールを読むと、出版社をやっていて良かった、と本当に報われた気持ちにさせてくれます。
本当に、本当に、ありがとうございました。
かおりさんの本に勇気づけられる人が、これから沢山出てくると思います。
人生って、決して辛いことだけではなく、素敵なこともあるんですね。
それをかおりさんがみんなに教えてくれています。
かおりさんが、人を大事に思う気持ちが、よく伝わってきますよ。
これからの人生、一生懸命、だけど気を楽に、何事も楽しい面を見て
素敵な人生を歩んでください。
再度 かおりさんからご連絡をいただきました。
こんばんは。さっきも携帯でメールを送ったのですが、
散歩中でした。家に帰ってPCで石澤さんからのメールをみて嬉しかったので、
もう一度送らせていただきます。
嬉しかったです。
嬉しかった。
私はいつも助けてもらう。
今日も昨日も調子が悪くて病院へ行きました。
谷口先生ありがとう。
「今日から、10日間なにも口にいれない。」
そう決めた。
退院して4日め。
食べては吐き食べては吐きの繰り返し。
1日で1キロ以上の体重の減り。
100グラム増えては泣き。運動をふらふらのまま1時間。
でも。
**さんからのメール。
石澤さんからのメール。
「あ、お腹空いた。」
久々の感情。
食べた。
「大丈夫や。」
吐かずにいれた。すごいすごい!うれしいな。
ほら、また。 あたたかなこころに救ってもらったな。
いつも私はありがとうを忘れていないようで忘れてる。大事な人に冷たく接したり、自分にまでひどいことをする。
でも、日々を生きていく事で、そのわすれかけた「ありがとう」は必ずまた思い出せる。
家族を大切にしたい。
絵を描きたい。
詩をかきたい。
自分にあたたかくしたい。
生きていくこと。それは。
「ありがとう」を、繋ぐこと。
生きていくこと。それは。それは。
かおりより。
かおりの母より
石澤様、返事をいただきながら、パソコンを開かない日が続き、返信が遅くなり失礼しました。
温かい言葉をたくさんありがとうございます。かおりの返事にありますように、いつも調子が悪くてどうしようと思っているときに石澤さんや**さんから連絡をいただき、助けてもらっています。ありがとうございます。
また、石澤さんの本を作る理念が、障害を持つ子供たちを身近に見ている私には、救いの言葉です。
世の中に、利益よりも心を大事にしてくださる方が確かにいて下さることのありがたさをしみじみと感じます。
自分たちにも何か出来る事を見つけていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
今回の出版は、著者のかおりさん、かおりさんのお母さん、そしてこの本を読んでいただいた人たちに、喜んでいただくことができました。そしてその喜びが私たちに伝わってきて、私たちも幸せな気分にさせていただきました。
今後も、皆様に感動をお届けできるような出版活動を続けていきたいと思っております。
※かおりさんの絵画展が池袋のジュンク堂で開かれています。
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