臨床心理士 のコラム
Vol.3 チームまさか企画
「生まれた意味ってなんだろう?〜生まれる・笑う・亡くす・許す〜」
チームまさか企画 「生まれた意味ってなんだろう?〜生まれる・笑う・亡くす・許す〜」
……というタイトルのイベントに、母と行って来ました。一緒にこのイベントに参加できたってなんて幸せなことなんだろう……と泣けてしまうようなイベントでした。
上記のテーマに沿って、自然分娩を推奨する吉村医院の元婦長である岡野眞規代先生の講演、元吉本興業の芸人さんで今は路上詩人&映画監督のてんつくマンさんのお話、母への感謝・命の不思議を歌ってくれたかわいい双子デュオの〈Hi-Fu〉の演奏、胎内記憶の研究をしている産科医の池川明先生の講演、そしてこの企画をしてくれたチーム「まさか」会長の名前詩人山本英利さんのお話、フィナーレは一期一会のライブを続ける関西の人気バンド〈おかん〉の直球ストレートの演奏……が4時間にわたって行われました。
それも、入場料は495円。え? お医者さんとか元吉本の芸人さんとか呼んでこの価格?と驚きました。「+感動募金制(感動しただけお志を)」というシステムだったのです。
ボランティアスタッフは当日参加した方々だけで140人、赤字スタートで始めることによってみんなが本気で取り組めて、本気で幸せになれるから、という会長山本さんのもとにたくさんの人が賛同して集まり、実現したイベントだったようです。
さて、実際どんなお話が聞けたのか、いくつか紹介したいと思います。
まずスタートは、吉村医院の元婦長さん、岡野眞規代さんの「生まれる」をテーマにした講演でした。吉村医院の様子は、河瀬直美さんが撮った「玄牝(げんぴん)」という映画がこれから公開されるので今まで以上に有名になるかもしれません。この医院は敷地内に茅葺き屋根の古民家があることで有名です。妊婦さんたちは、希望者だけですが、そこで薪割りなど昔ながらの家事をしながら出産に向けて体作りをしていきます。出産も完全に自然分娩です。岡野さんによると、5年間で危険なことは一回もなかったそうです。でも吉村先生は、出産は死ぬ可能性もある行為なんだということも前もって説明するそうです。その上で、ここのやり方に賛同し、ここで自然に産みたいという方々が集まっています。
そのような医院なので、他の病院では受け容れてもらえなかったケースもありました。無脳児がお腹にいるケースです。重症の奇形なので中絶を勧めます、とどの病院でも言われたそうです。それでもこの方は、たとえ少ししか生きられなくても生みたいと、吉村医院で出産しました。その赤ちゃんは自分で呼吸ができないので、12時間この世にいて還って行ったそうです。出来事だけを聞くと悲しいことのような気がしますが、その脳のない赤ちゃんを胸に抱いた出産直後のお母さんはとても穏やかな幸せそうな顔をされていました。そのスライドを見て、命をお腹に預かって、産む、ということを通してお母さんと赤ちゃんの間でなされる交流を思うと、宇宙のような広大な何かを感じました。
その他、岡野さんのお話の中で印象に残ったことは、吉村先生の言葉だそうですが「検査結果などのデータは表面的なこと、見えない生命力が大切なんだ」、「動物とは動く物と書く、安静にするんじゃなくて、どんどん動くことで生命力が高まる」などです。私たちが本来持っていた体力や生命力が、現代的な生活の中で弱ってしまっているんだな、鍛えればそんなに変わるんだな、と驚きました。
講演の順番とは違いますが、「亡くす」をテーマにした池川明先生のお話を先に紹介します。先に書いた無脳児の赤ちゃんは、多くの方が中絶を選ぶ中、そのお母さんなら産んでくれると知っていてやってきたのではないか、そんな気がする、と岡野さんはおっしゃっていたのですが、池川先生のお話の中でも、赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくるらしいという、たくさんの子どもにアンケート調査した結果が紹介されました。
2〜4歳の子どもの30%が、胎内にいた時のこと、あるいはお腹に宿る前に雲の上のような所にいた時のこと、を覚えているそうです。その内容について『ママのおなかをえらんだわけは』など多数の著作で紹介されています。
この日に聞いたことの中で印象的だったのは……
・学ぶこと、人の役に立つこと、この2つを人生の目的としてみんな生まれてくる
・家族を幸せにするため、気づきを持ってもらうためにその親を選ぶ
ということです。
そんな立派な決意でみんな生まれて来たはずなのに、すっかり忘れてしまっています。そして、おもしろかったのが、お母さん選びの人気ランキングの話です。
一番人気は「やさしそうなお母さん」。これは誰もが納得します。ただ池川先生によるとやさし「そう」という所がポイントで、「私まちがえちゃった!お母さんやさしそうだったから選んだのに、そんなに怒るなら還っちゃうからね!」と泣いた小4の女の子もいたとか(笑)。
そして驚いたのが二番人気で、なんと「悲しそうな不幸そうなお母さん」だそうです。自分が行ってお母さんを幸せにしてあげると意気込んで、辛そうなお母さんを選ぶ魂がたくさんいるとか。でもお腹に宿ったとたんに、お腹の外で繰り広げられるケンカや虐待の音を聞いて後悔し、自分には荷が重すぎると必死に還ろうとする子もいるそうです。なんと自分で臍の緒を握って血流を弱めたりしたケースもあったそうです。
お腹の中からどのくらい外の様子がわかるんだろう?という疑問に対して、福岡の産科医が録音したという音声を聴かせてもらいました。
子宮口がなかなか開かない方にバルーンを入れますが、その際にバルーンの中に音声マイクを仕込み、外からの声が子宮の中でどのくらいの大きさに聞こえるか実験したのだそうです。すると、お父さんの「早く出てきてください。お願いします」という声が、はっきり録音されていました。そんなに大きな声ではなく、普通に呼びかける感じでしたが、それでも充分に聞こえました。ちなみにお母さんの声は、かすかなハミングでもしっかり伝わっていました。こんなに聞こえるんじゃ、お腹の外のこと全部わかっちゃうな、とびっくりしました。
ところでこの世に生まれるということは、旅に出るような感覚だそうで、特に刺激のない平和なあの世から、非日常的なハラハラドキドキワクワクを求めてこの世にやってくるそうです。だから仲のいい平和な夫婦のもとには、なかなか子どもが生まれないこともあるとか。それでは今いるあの世? 天国? と大差ないからつまんない、ということらしいのですが……。
また魂は学ぶために生まれてくるという点で上昇志向があるらしく、私たちが受験校を選ぶときにちょっと難しいかな? と思うチャレンジ校も受験して、受かったらすごい! と喜ぶような感覚で、少しチャレンジ要素のある人生を予定して生まれてくるそうです。そして、学校生活が始まってから周りが優秀すぎてついて行くのが大変だということに気づくように、生まれて育つうちに「なんでこんな大変な目に遭わなきゃいけないんだろう?」という展開になる……。
いずれにしても、いろんな経験ができる波乱万丈な人生を送った魂こそ、あの世に還って行く時は大満足だそうです。
ところで、少し話が変わりますが、流産と中絶は似ているというお話がありました。アメリカの鍼灸師の方によると、望まない妊娠をした方が、自然の中で本気で瞑想すると100%自然に流産するそうです。流産も、中絶も、途中であの世に還るという点では一緒で、大切なのは還り方ではなく、魂がちゃんとあの世に辿り着くかどうかだそうです。そして流産や中絶によってお母さんが自分を責める必要は全くなく、それも見越して宿った魂がほとんどだそうです。『ママさようなら、ありがとう』という本に、流産、中絶、そして死産のケースがたくさん載っています。この本を読むと、そのような経験をされた方々が救われるだろうなと思いました。
池川先生は「怪しげな話ですからね、信じなくてもいいんですよ」と笑いながらおっしゃっていましたが、1000人以上の子どもたちが同じような内容を語っているのも事実なわけで……とてもとても興味深かったです。
てんつくマンさんの講演は以前に聞いたことがありましたが、この日のお話もとっても面白かったです。さすが元吉本芸人、話し方がジェスチャーなど交えて絶妙で、YouTubeでもいくつか見ることができるので、ぜひそちらでライブの面白さを実感していただければと思います。こうして書くと半分くらいしか伝わらないかもしれませんが、この日は主に大変な時はそれをネタにするなど、どれだけ自分を立て直す言葉や方法を知っているかが大事という内容でした。
てんつくマンさんは、映画を作ろうと吉本興業を辞めたものの、資金不足で困っていたそうです。その資金集めの途中で、ものすごくいろんなことが起きるのですが、その中の1つを紹介します。
ある時から「あなたを見てインスピレーションで詩を書きます」と路上詩人として活動を始め、人気が出て来たので全国のデパートで展示会をしながら資金集めをしようということになったそうです。お金がないので自転車で全国を回ったそうですが、坂道や悪天候など想像以上につらいので、スタッフみんなで合言葉を決めたそうです。それは「よくあること よくあること」。なにか大変なことが起こったら「よくあること よくあること」と関西弁のイントネーションで言うと、たしかに少し気が楽になります。そのようにして目標額の6000万円に対し、2000万円集まったところで、なんと事務所が火事で焼けてしまったそうです。黒焦げになったパソコンを前にして呆然としつつ、てんつくマンさんが「よくあること よくあること」とつぶやくと、「よくあることあるかぁ!」とすぐに突っ込まれたそうですが……。それでもその言葉でみんな笑いだし、黒焦げの事務所の前で記念写真を撮ったということでした。ちなみにこの言葉じゃ楽にならない時は「修行 修行」、それでもつらい時は「幻 幻」とつぶやくそうです。そういえば以前の講演会では、ピッチピッチ、チャップチャップ、ランランラン♪という歌になぞらえて、「ピンチピンチ、チャンスチャンス、ランランラン♪」と歌うという話も教えてくれました。
また、目の前の出来事に囚われない方がいい、「それで? 自分はどうしたいの? そこに向かうために自分は何ができるの?」と考えると、難しそうに見える状況を越えていけるとも話してくれました。それだけ聞くと、それができれば苦労しないけどさーとぼやきたくもなってしまいますが、てんつくマンさんは、二日連続交通事故に遭うなど「ありえへんやろ」という経験をいくつもされ、起きている出来事にはすべて意味があると実感したうえで話してくれるので、とても説得力があります。その日に買って帰った『あんたの神様』という著書を読んで、より理解が深まりました。
(尾方 文)
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