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星和書店

紀伊国屋書店新宿本店5F人文書・心理学売場にて「輝く!星和書店フェア」開催中です。
輝く!星和書店フェア 【第1弾】 季刊こころのりんしょう a・la・carteバックナンバー特集 第2弾は「認知療法・認知行動療法 再考」、ぜひお越し下さい!

今月の新刊 next
「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?

双極 II 型障害と軽微双極性障害を学ぶ

ジム・フェルプス 著
荒井秀樹 監訳
本多篤、岩渕愛、岩渕デボラ 訳
四六判 並製 468頁  ISBN978-4-7911-0762-9〔2011〕
定価 2,520円(本体2,400円)

うつ病と診断される人が増えている中、「落ち込んでいる」とか「意欲がわかない」といった抑うつ状態が長期間にわたり持続したり繰り返したりする人たちを、すべて同じうつ病と診断していて間違いはないのか? 本書は、長引く抑うつ状態に苦しんでいる人に対して、双極II型障害や軽微双極性障害を念頭において、診断や治療を見直しながら、主治医とともに病気を克服していくための対処方法を示している。また気分障害をスペクトラムとしてとらえる考え方を学ぶ。

統合失調症はどこから来て どこへ行くのか

統合失調症は どこから来て どこへ行くのか

宗教と文化からその病理をひもとく

柴田明彦 著
A5判 上製 304頁 ISBN978-4-7911-0761-2〔2011〕
定価3,990円(本体3,800円)

宗教はかつて人間と社会の存在理由やその進むべき方向性を示してきたが、近代では科学にその立場をとって代わられることになった。この時代の分岐点において、統合失調症概念は出現している。統合失調症の概念はなぜ生まれたのか。その実体とは何なのか。この疾患をどのように捉え、いかに対処していくべきなのか。本書では、統合失調症の今後を考えるうえで、宗教・文化から本疾患の病理を分析し、新たな視点からの検討を行う。

詩集 40人

詩集 40人

精神科医が出会った印象深く
忘れがたい患者さん40人を詩に描出

神谷和弘 著
四六判 上製 170頁 ISBN978-4-7911-0760-5〔2011〕
定価1,890円(本体1,800円)

「わたしはどうすればいいの。23歳のみそらでアルバイトもできない。なぜ? わたしはどうすればいいの。時々わけのわからない恐怖に襲われる。あれはなんなの。世界の底が抜ける・・・」精神の病を患う人の心の世界には、途方もない苦悩、悲しみ、憤り、恐怖、いらだちが渦巻いています。しかし、それは、患者でない人の世界から遠く離れたものではありません。あなたもいつ招かれるかもしれない隣り合わせの世界なのです。精神科医であり詩人である著者が、自然に溢れ出たものを書きつづった40人の心の叫び。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第26巻2号

特集: 職場における「うつ」―臨床現場における留意点― II

うつ病概念の拡大や景気の低迷により、職場のうつ病が増え続けている。復職支援だけに目を向けるのではなく、簡単には職場に戻れない、あるいは職を失っている「本当のうつ」が数多くいる。本特集では、発症予防(一次予防)、早期発見、早期対応(二次予防)、治療と復帰の支援(三次予防)の全域に光を当てる。臨床現場あるいは職場の支援現場でどのような困難が生じているか、その詳細を問題点を含めてダイナミックに把握した精神科医必読の特集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第14巻3号

特集:睡眠障害治療薬の現状とこれから

日本でラメルテオン、欧州でアゴメラチンという新規睡眠障害治療薬が上市されたことを受け、「睡眠学」という新しい学問体系を紹介し、精神疾患における睡眠研究の進歩、睡眠障害とその治療薬の現状、向精神薬と睡眠の関連を取り上げ、これからの治療薬開発を展望した特集。
ISBN:978-4-7911-5161-5

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こころのマガジン
臨床心理士 あや先生のコラム 
Vol.4 地球交響曲 〜ガイアシンフォニー〜

この映画をご覧になったことがある方も多いかもしれませんが、素敵な作品なのでぜひここでも紹介させていただきたいと思います。

龍村仁監督が作った映画「地球交響曲」は現在第7番まで完成し、日本各地で上映されています。何をきっかけにこの映画のことを知ったのか忘れてしまったのですが、その時仕事の忙しさにかなり疲れていて、何か自分にプレゼントしたいと思い、ネットで色々見ていた時に目にとまったのが、地球交響曲DVD第1〜5番クリスマスギフトパックでした。5巻セットで3万円。1巻ずつ買うより多少お得になっているものの、うーん、高価すぎるかも…と躊躇しつつ、でも内容にひきつけられたので思わず購入ボタンを押してしまいました。

さっそく届いたDVDを観てびっくり。世の中にはこんなに素晴らしい人々がいて、またこんな奇跡のような現実があるんだ…と感動でした。

すべてが何度も観たいような内容なのですが、まず第1番、第2番から、心に残ったことをお話ししたいと思います。

第1番には、普通の1粒のトマトの種から13000個も実のなる木を育てた植物学者の野沢重雄さんが登場します。通常1粒の種から採れるトマトは60個くらいだそうですが、いったいどんな魔法を使って13000個も実のなる巨木に育てたのでしょうか?

野沢さんは「植物にも心がある」と言います。自分を取り囲む環境が今どのような状態かキャッチする植物の感受性は非常に高度だそうです。そこで、まだ芽の小さいうちから養分を充分与えて「どんどん伸びていっていいよ」という情報を与えます。どんなに成長しても養分が足りなくなることはない、好きなだけ伸びて大丈夫、というメッセージを届けるのです。するとトマトの苗は、ものすごいたくましさで上へ横へすくすく枝を伸ばしていきます。野沢さんは「抑える力を除けたらいくらでも大きくなる。植物が能力を存分に発揮できるよう手助けしている」「宇宙には無限の生命力が存在する」とおっしゃっていました。

そのような生命力を持った植物を食べて人間は生きているわけですが、第2番に登場する佐藤初女さんは「食べることは自然の命と心を頂くこと」と言います。

初女さんは、女学校時代に父親の事業の失敗で一家が何もかも失うという経験をします。そのショックを全身で受け止めた結果、肺を病んでしまったそうです。ちょっと笑っただけでも血管が切れて血を吐いてしまうほどで、薬を飲んでもなかなか良くなりませんでした。でも食べ物を食べると、何か力がつくのを感じたそうです。それ以来食べ物をとても大切にしていらっしゃいます。初女さんの料理は、赤ちゃんをお風呂にいれるような丁寧さで、そのやさしい手つきを見ているだけで感動してしまいます。「新鮮な自然な食べ物に手を加えながら元の命を新しく生かしていく」、そんな気持ちで料理しているそうです。そのおむすびを食べて自殺を思い止まった人がいるという有名な「初女さんのおむすび」は、お米を潰さないように、ご飯が呼吸できるように、ふんわり握られています。出来上がったおむすびも、ラップなどでは苦しそうだからと、きれいなタオルにやさしく包まれています。

現在も青森県の岩木山の麓にある「森のイスキア」へ、心を病んだ人、苦しんでいる人がたくさん訪れています。初女さんはその方々と一緒に食卓を囲み、その方々の話に耳を傾けます。「ひとりひとりの中に神が宿っている。どういう人と会う場合でも、その人の中にいる神との出会い」という姿勢で、訪れる人を迎えているそうです。初女さんは、心をこめた食事を一緒に食べ、話に耳を傾けるだけで、他に何かをするわけではありませんが、初女さんの料理を食べ、初女さんに心のうちを話すことで、絶望から救われた方が大勢います。もしかして、初女さんが私たちの中の神に出会うという姿勢でいてくださるから、こちらも初女さんを通して神様に出会えているのではないか、そんな気もしてきます。

以前、東京で行われた講演会で初女さんのお話を聞くことができたのですが、気負いもなにもない自然そのものという佇まいが素晴らしかったです。

ところで同じく第2番に出てくる、素潜りの世界記録で有名なジャック・マイヨールさんは、先ほど紹介した野沢重雄さんと同様に「宇宙の生命力」について語っていました。

空気中には、ヨガの言葉でプラナと呼ばれる生命エネルギーがあって、それを意識して呼吸すると、その生命エネルギーで自分を満たし、活性化することができるそうです。「赤ちゃんがへその緒でお母さんとつながっているように、私たちは呼吸を通して宇宙の母とつながっている」「自然に寄り添い、自然と調和した時、無限の可能性が生まれる」「生と死は同じことの表と裏のようなもの」「過去も未来もない、現在があるだけ」など、その経験から生まれる言葉はどれも深いです。

そういえば第1番に登場する、ラインホルト・メスナーさんは、世界の8000m級の山すべてを無酸素単独で登頂した方ですが「人間はいわば生命力の通り道」「自分が自然の一部分だということを知っている」など、ジャック・マイヨールさんと同じようなことをおっしゃっていました。深海や高山という、人間が生きることの難しい領域に素のままで辿り着いたお二人が、共に、自分は宇宙や自然と確かにつながっているという実感をもたれたことはとても感動的です。

以下に少々長くなりますが、第1番〜第7番までの出演者をご紹介したいと思います。

第1番には、上記の野澤重雄さん、ラインホルト・メスナーさんのほか、元アポロ9号の宇宙飛行士ラッセル・シュワイカートさん、そして密猟で親を亡くした子象を保護し、育てて森に返しているダフニー・シェルドリックさんが登場します。

第2番には、上記の佐藤初女さん、ジャック・マイヨールさんのほか、「人間の究極の本性は慈悲と利他の心である」という14世ダライ・ラマ法王や、1960年代から宇宙人に様々なメッセージを送り続けている天文学者のフランク・ドレイクさんが登場します。

第3番は撮影開始直前に亡くなった写真家「星野道夫さんに捧ぐ」作品で、自然と密に関わっている方々が登場します。美しい自然を写していた星野道夫さんをよく知る人々、オルカの研究をしている理論物理学者フリーマン・ダイソンさん、古代カヌーを再現し、星や風や波を頼りに昔ながらの方法で、ハワイータヒチ間5000kmを航海したナイノア・トンプソンさんなどです。

第4番のテーマは「21世紀に育つ子どもたちへのガイアからの贈り物」。チンパンジーから人の心のルーツを学んだという霊長類学者ジェーン・グドールさん、自然との調和、自分との調和をサーフィンから学んだという伝説のサーファー、ジェリー・ロペスさん、沖縄に住む版画家名嘉睦稔さん、生物物理学者のジェームズ・ラブロックさんが登場します。

第5番のテーマは「全ての存在は繋がっている」。これまでに地球交響曲に出演した方々が出会い、新たなメッセージが届けられます。哲学者で物理学者でもあり、科学と心の調和を目指すアーヴィン・ラズロさん、沖縄伝統の草木染めを現代に蘇らせた染色家の石垣昭子さんも登場します。分娩台を使わない自然なお産で有名な明日香医院での出産シーンもあります。

第6番のテーマは「音を見て、光を聴く」。音は神なりと語るインド音楽の巨匠ラヴィ・シャンカールさん、ザトウクジラが人間と同じ作曲法で歌を作っていることを発見した海洋生物学者のロジャー・ペインさん、演奏することは超越的な力に奉仕すること、音楽の通り道となること、と語るピアニストのケリー・ヨストさんなどが登場します。

去年公開されたばかりの最新作、第7番のテーマは「すべての生命が潔く健やかに生き続けるために」でした。1995年に人力と犬ぞりで北極海を横断した高野孝子さん(現在は子どもたちが自然の中で経験から学ぶ機会を提供するお仕事をされています)、元ツールドフランスチャンピオンのグレッグ・レモンさん(散弾銃の事故による瀕死状態から復活し、再びチャンピオンに返り咲いたことで有名です)、そして世界各地の伝統医療と最先端医療を統合するアンドルー・ワイル博士(「癒す心、治す力」というベストセラーが有名です)が登場します。最近見たばかりだからかもしれませんが、私はこの第7番が一番好きです。というか、実は最新作が公開されるたびに、これが一番好き、と思います。第7番では高野孝子さんの笑顔を見て、こんな風に笑える人になりたいな、と憧れてしまいました。

ぜひ一度見ていただくと、自分にとって必要なメッセージが届くと思います。そして地球交響曲というタイトルの通り、私を越えた、そして私とつながっている地球に対する思いが変わるのでは……と思います。

(尾方 文)
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