つい最近まで、「脳は再生しない」と考えられていた。破壊された神経細胞が関与する機能の回復は絶望的であった。しかし、この10年間に、胚性幹細胞、神経幹細胞などの神経再生の研究は飛躍的に進歩し、絶対無理とされていた神経疾患を治療できる可能性が開けてきた。本増刊号の狙いは、神経細胞の再生に関する現況、展望、そして臨床応用がどこまで進んでいるかを解明することにある。したがって、神経の基礎研究者のみでなく、脳神経外科や神経内科の臨床医にも最新の知識の集大成とともに、臨床応用の可能性を提示する。
編集 「脳の科学」編集委員会 B5判 並製 248頁
1 神経再生のオーバービュー | ||
中枢神経系の再生と機能修復をめざして | 福田 淳 | |
2 幹細胞 | ||
2-1 | 胚性幹細胞を用いた移植治療の展望 | 丹羽 仁史 |
2-2 | 胚性幹細胞からの分化誘導 | 仲野 徹 |
2-3 | 成体神経幹細胞の分子制御と再生医療への応用 | 山本 真一 星地亜都司 中村 耕三 中福 雅人 |
2-4 | 神経幹細胞の同定 | 村山 綾子 松崎 有未 岡野 栄之 |
2-5 | 神経幹細胞の分離・培養法 | 岸 憲幸 岡野 栄之 |
2-6 | 神経幹細胞移植のソース | 本望 修 寶金 清博 端 和夫 |
2-7 | ヒト神経幹細胞の単離とその臨床応用の展望 | 高橋 淳 |
3 神経再生にかかわる因子 | ||
3-1 | 再生と神経栄養因子 | 堀江 秀典 |
3-2 | ニューロトロフィン | |
3-2-1 ニューロトロフィンによる中枢神経細胞内シグナル | 荒木 敏行 那波 宏之 | |
3-2-2 ニューロトロフィンとシプナス長期増強 | 茜谷 行雄 津本 忠治 | |
3-2-3 ニューロトロフィンと神経伝達可塑性:長期抑圧 | 永雄 総一 北澤 宏理 首藤 文洋 | |
3-2-4 眼優位可塑性における神経栄養因子の役割 | 一坂 吏志 畠 義郎 | |
3-3 | 神経栄養因子による神経伝達調節 | 武井 延之 |
3-4 | グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF) | 中川原 章 榎本 秀樹 |
3-5 | 神経再生因子としての肝細胞増殖因子(HGF) | 中村 健二 船越 洋 中村 敏一 |
3-6 | 接着因子 | 長谷川 光広 |
3-7 | サイトカインによる神経肝細胞の細胞系譜制御 | 瀬戸口啓夫 中島 欽一 田賀 哲也 |
3-8 | 神経の修復・再生に関わるグリア細胞由来因子 | 中嶋 一行 高坂 新一 |
3-9 | プロサポシンの神経栄養因子作用 | 小谷 泰教 佐野 輝 |
4 脳の再生 | ||
4-1 | 細胞移植によるパーキンソン病の治療 | 大本 堯史 新郷 哲郎 伊達 勲 |
4-2 | 神経移植と機能の回復 | 中尾 直之 垣下 浩二 板倉 徹 |
4-3 | 中枢性脱髄疾患に対する骨髄細胞・胚性幹細胞の移植 | 佐々木祐典 本望 修 寶金 清博 端 和夫 |
4-4 | 胚性幹細胞の脳梗塞モデルへの移植 | 田之岡 篤 本望 修 佐々木祐典 岡 真一 飯星 智史 寶金 清博 |
4-5 | 海馬損傷後の記憶障害と神経幹細胞移植 | 越永 守道 茂呂 修啓 福島 匡道 片山 容一 |
4-6 | 神経幹細胞を用いた脳腫瘍の複合療法 | 矢﨑 貴仁 |
4-7 | 脳出血に対する神経細胞移植研究 | 相原 徳孝 神田 佳恵 山田 和雄 飛田 秀樹 西野 仁雄 |
4-8 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS)における再生治療 | 三本 博 |
5 脊髄の再生 | ||
5-1 | 脊髄損傷からの機能回復 | 井上 洋 |
5-2 | 神経幹細胞による脊髄の再生 | 中村 雅也 |
6 末梢神経障害 | ||
6-1 | 末梢神経の再生機序 | 鳥越 甲順 |
6-2 | 末梢運動神経の再生・変性の決定因子 | 木山 博資 本間 大 濤川 一彦 桐生(瀬尾) 寿美子 |
6-3 | 損傷後の初期末梢神経再生を調節する酸化型ガレクチン-1 | 堀江 秀典 門屋 利彦 |
6-4 | キトサンチューブを用いた人工神経の開発 | 伊藤聰一郎 山口 勇 鈴木 真澄 高久田和夫 四宮 謙一 田中 順三 |
6-5 | 末梢神経再生のためのtissue engneeringの応用 | 仲尾 保志 筏 義人 |