●「主たる精神医学的問題がADHDの特徴だけをもつ成人」の生きづらさ
田中 康雄
本論では,主たる生活の課題のために,治療を求めて受診された方のなかから,実はADHDの特徴が生きづらさを作り出していたと思われる成人との出会いをもとに「主たる精神医学的問題がADHDの特徴だけをもつ成人」について,当事者であるADHDのある人の人生を成人期から遡って検討した。事例から,主たる精神医学的問題がADHDの特徴だけをもつ成人の人生は,それこそ多岐にわたり,上手に社会適応している方もいれば,必死に日々を生き抜いている方も存在することを明らかにした。結果として,「日常の生活の困難さを一緒に悩み,すこしでもよい方向へと向ける努力に基づく行為」と「発達支援」を定義し,「生活の困難さ」をいかに共有するかが大きな課題であると主張し,発達障害をもって生きる姿には発達の障害はないと考え,経過としての発達という時間軸に生活の困難さが浮上するときに支援が作動すると理解したい。発達障害が生活障害へと姿を変え,臨床家は,単純に要請に誠実に答えるという姿勢こそが求められる。
Key words:developmental disorder, AD/HD, living disorder, disappointed in life
●積極的な育児支援により回復した遷延する産褥うつ病2例の経験
藤本 明 藤原 雅樹 三木 知子 高橋真由美
2例の遷延した産褥うつ病を経験した。症状の遷延の根底に育児問題があるように思われたので,その解決のために一時的な育児免除を,地域の社会資源の活用や家族の協力体制の整備と組み合わせて行うという積極的な育児支援を導入した。この積極的な育児支援の導入でも即効的な効果はなかったが,薬物療法との組み合わせで2例とも寛解に至った。産褥うつ病における育児支援の重要性が再確認された経験となった。なお,この2例では解離症状やパニック症状という,うつ病の症状としては非定型な症状が加わっていたが,これはうつ病の症状として理解できると考えられた。
Key words:postpartum depression, a suspension in the caring baby, childcare support
本ホームページのすべてのコンテンツの引用・転載は、お断りいたします
Copyright(C)2008 Seiwa Shoten Co., Ltd. All rights reserved.