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■特集 妊娠と出産を巡る精神科臨床—何を理解し,どう関わるか?—Ⅰ
●妊娠・出産と精神科臨床
岡野 禎治
 周産期の精神医学の歴史と施設型ならびに地域型のリエゾン活動について取り上げた。今日の精神科診断基準(分類)の中で周産期の精神疾患の的確な位置づけは困難であるが,臨床単位として依然,注目されている。1)大学病院の産婦人科外来に設置した専門外来の実践から,精神科既往歴のある女性の次回妊娠,妊娠継続に関するニーズが高いこと,神経症性障害の妊産褥が多いことを述べた。2)同時入院できるユニークな母子ユニットについて英仏の統計からその効用と限界について概説した。3)地域における「産後うつ病」のスクリーニング方法が国際的にも定着しているが,日本では誤用が多いことを示した。最後に,4)英国の周産期メンタルヘルスのサービスモデルを紹介して,日本における多職種による施設型ならびに地域型支援システムの可能性を探った。
Key words:liaison psychiatry, mother and baby unit, perinatal psychiatry, screening

●精神科ユーザーの妊娠出産①統合失調症
鈴木 利人
 以前より統合失調症患者の受胎能の低下が指摘されていたが,脱施設化や社会参加の促進,第二世代抗精神病薬の登場などにより妊娠する機会が増えつつある。統合失調症患者の妊娠では,胎児の発育不全や胎盤の異常の産科的合併症が報告されているが,これらには抗精神病薬治療や喫煙,低栄養,不十分な周産期ケア,社会的経済的要因などの影響が指摘されている。とくに抗精神病薬の影響に関して催奇形性のみならず第二世代抗精神病薬による妊娠糖尿病や新生児の体重増加も懸念される。催奇形性は単剤治療のデータはあるが多剤併用の影響は未解決なままである。また近年気分安定薬も処方される傾向があり催奇形性にも注意が必要になる。アドヒアランス低下の影響も再燃のリスクを招く。産褥期はさらに精神状態を安定に保つことが求められる一方で,授乳の可否の検討も必要とされる。最後にインフォームド・コンセントと患者・家族の自己決定権の問題について触れる。
Key words:schizophrenia, pregnancy, antipsychotic medication, obstetric complications, psychiatric outcomes

●精神科ユーザーの妊娠出産②気分障害
森川 真子  久保田智香  尾崎 紀夫
 気分障害をかかえる女性にとって,妊娠・出産期は症状の悪化や再燃・再発の危険性が高まる時期である。この期間における再燃・再発は,母児双方の心身に悪影響をもたらすため,早期から予防対策を検討しておくことが望ましい。薬物療法は母親の症状を安定させるためには有用であるが,胎児・新生児にとっては催奇形性や毒性といった問題がある。そこで,精神療法をはじめとする非薬物療法や環境調整を行いつつ,薬物療法のリスクとベネフィットを十分に理解し,個々に適した治療を行うことが必要である。本稿では,気分障害をかかえる女性が安心して妊娠・出産を迎えるための治療上の要点について概説する。
Key words:major depressive disorder, bipolar disorder, pregnancy, childbirth, pharmacotherapy

●精神科ユーザーの妊娠出産③不安障害
五十嵐友里  内田 貴光  堀川 直史
 挙児を希望する年代は不安障害の好発年齢に当たる。また,妊娠期に不安症状や心理的苦痛が伴うことは,ネガティブな妊娠結果につながりやすくなることも明らかにされている。したがって,妊娠期・産後における不安障害は考慮すべき重要な課題である。本稿は,不安障害が妊娠・出産に先行した場合不安症状はどのような経過をたどるのか,また,妊娠・出産・産後にどのような影響を与えるのかについて述べた。また,妊娠を希望する不安障害患者,治療中に妊娠が判明する女性患者も多い。このような場合には,リスク・ベネフィットバランスを相談した上で可能であれば薬剤の減量または一時中止などを検討すべきと考えられる。その検討の一助となるべく,一般に不安障害の薬物療法における第一選択薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)について,確認された所見に基づいてまとめた。
Key words:pregnancy, parturition, anxiety disorder, consultation—liaison psychiatry

●精神科ユーザーの妊娠出産④摂食障害と妊娠出産
西園マーハ文
 近年,摂食障害の妊娠出産が増えているが,妊娠中や出産後に症状が変化する場合があるので,注意が必要である。例えば,過食症の場合,妊娠中に過食嘔吐の症状が軽減しても,産後に悪化したり,産後のうつ病が発症するケースが少なくない。一方,妊娠中に過食嘔吐が軽快し,産後も良い状態を保つ場合もある。神経性無食欲症では,体重が回復して妊娠に至っても,心理的症状が残っている場合がある。子どもに対して支配的に接してしまう場合も多く,かなりの心理的援助が必要となる。摂食障害患者の場合,月経不順のため妊娠しないと思っていて妊娠するケースもあり,出産に対して心理的準備が不十分な場合も少なくない。成人期の摂食障害が増えている現在,妊娠の可能性は常に視野に入れておく必要があり,また,妊娠中は,薬物療法を中断しているケースにおいても,注意深い経過観察を行う必要がある。助産師や保健師との連携も重要である。
Key words:anorexia nervosa, bulimia nervosa, eating disorders not otherwise specified (EDNOS), postnatal depression, pregnancy

●精神科ユーザーの妊娠出産⑤精神作用物質
松本 俊彦
 本稿では,妊娠中の精神作用物質が母体の健康と胎児の発達に与える影響について概説し,そのうえで,物質依存患者の妊娠と出産を援助する際の注意すべき点を論じた。妊娠中における母親の精神作用物質の使用は,その急性中毒や離脱によって胎児循環を阻害し,妊娠の維持や胎児の発育に深刻な影響を及ぼす。また,胎児に様々な構造的異常をもたらすだけでなく,神経発達にも影響を及ぼし,新生児期や幼児期はもとより,青年期以降の様々な問題行動や精神障害への罹患脆弱性の遠因となる危険性がある。しかしその一方で,妊娠や出産は,意外にもそれまで膠着していた物質依存患者の治療経過を大きく変化させる好機ともなりうる。
Key words:birth, fetal alcohol syndrome, fetal alcohol spectrum disorder, pregnancy, substance use disorder

●精神科ユーザーの妊娠出産⑥てんかん
兼本 浩祐  大島 智弘
 精神科に関連する薬剤の中では,抗てんかん薬は他の薬剤と比較して妊娠・出産に関して多くの経験が蓄積されている。主な投薬原則としては,①無投薬にできる可能性がないかを検討する,②投薬が必要な場合は可能な限り単剤にする,③積極的な理由がなければバルプロ酸の投薬を避ける,④葉酸を事前に投薬する,⑤授乳は原則としては可であるといったことを挙げることができる。いわゆるshared decision makingは必須であり,そのためのセッションは,基本的には父親になる予定の男性も参加してもらうことが望ましい。たとえ表面的にはマイナスの情報でも,わかっていることを明確に伝えることで,未知の事柄への対処のしようのない不安を,対処可能な等身大の不安に変えることが多くの場合可能であることを強調した。Lamotrigine,levetiracetamなどの新規の抗てんかん薬が妊娠のための有力な選択肢であると海外文献では繰り返し指摘されており,これらの薬剤が妊娠可能な女性に単剤では適応外処方としてしか使えないという不合理な状況の一刻も早い改善が望まれる。
Key words:epilepsy, pregnancy, teratogenicity, valproate

●妊娠・出産・授乳における向精神薬の使い方
松島 英介
 向精神薬は,精神疾患のコントロールのため妊婦・授乳婦が服用せざるを得ないことが多く,精神科医は妊婦・授乳婦に対する向精神薬の影響について,文献的にも臨床的にも正しい知識を身につける必要がある。妊婦に与える向精神薬の影響についてみると,妊娠初期(第1三半期),とくに妊娠4週(受精後3週の初め)から7週までの胎児の中枢神経系,心臓,消化器,四肢などの重要な臓器が発生・分化する時期や,妊娠8週から15週までの中枢神経系の発達,口蓋の閉鎖や性器の分化などが行われる時期は,形態奇形を生み出すもっとも危険な臨界期とされている。また,妊娠16週から分娩までの妊娠中・後期においては,胎児の機能的成長に及ぼす影響や発育の抑制,子宮内胎児死亡など胎児毒性を引き起こすことがあり,とくにこの時期に投与された薬物が行動(機能)奇形として出生後の児の精神神経発達に影響を及ぼす可能性についても考慮しなければならない。さらに,妊娠後期に投与された薬物により,生下時から生後1週間ほどの間,新生児に直接の副作用や離脱症状を引き起こすことがあり(新生児薬物離脱症候群),注意が必要である。一方,胎盤の通過性と同様に母乳へはほとんどの薬物が移行すると考えられ,授乳に際しても一定の配慮が必要である。
Key words:psychotropic drugs, pregnancy, delivery, lactation, teratogenicity

●妊娠期・産褥期の電気痙攣療法
渡邉 博幸
 妊娠期・産褥期における重症の大うつ病・双極性障害・統合失調症に対して,修正型電気痙攣療法は有効かつ相対的安全性の高い治療とみなされている。しかし,本法は胎児への催奇形性については安全性が示されているものの,実施中あるいは実施後の一過性子宮収縮や切迫早産,誤嚥,胎児の一過性徐脈などを生じることが報告されており,これらのリスクについて産科医,麻酔科医等との協働の上,患者家族への説明,周到な準備,モニターが必要となる。
Key words:electroconvulsive therapy, depression during and after pregnancy, cardiotocogram, deceleration

●石川県における母親のメンタルヘルス支援事業
飯田 芳枝  小林 千鶴  中田 有美  角田 雅彦
 本県の母親へのメンタルヘルス支援事業は,平成9年の地域保健法の施行に伴い,未熟児や多胎児を出生したハイリスク要因を持つ母親の支援から開始してきた。当時,地域保健師がNICU等の医療機関内に入り込んだ活動は行っておらず,NICUで行う退院支援に対し,小児科医師からは,「すべての対象者について,地域保健師がNICUに入り込み,医師等医療チームと連携した支援はできるのか?」という指摘があった。しかし,NICUと地域保健活動の連携は,地域開業助産師を巻き込み,さらに産後うつ病支援の展開の中で一般産科との連携が図られ,現在は精神科とのさらなる連携強化を進めているところである。これまでの活動は,行政が主導した,関係者間の顔の見える,多機関多職種チームの連携による協働となっており,併せて関係者間の信頼関係が強化された。本県の取り組みは,平成25年度に各都道府県が策定する医療計画の目的である地域医療連携パスの実践でもある。今後は,行政保健師のコーディネートがなくても,妊娠早期からの産科と精神科間,地域クリニックと専門医の医療機関間の連携強化が促進されることがさらに望まれる。
Key words:Edinburgh Postnatal Depression Scale, postnatal depression, perinatal mental disorder, mental health support services

●産婦人科病棟での治療介入
清野 仁美  湖海 正尋  松永 寿人
 精神疾患合併妊産褥婦に対する周産期の介入においては,治療方針の決定,周産期特有の精神症状の変化,養育機能の評価,養育支援など,様々な課題があり,精神科医のみならず,多領域・多職種の連携による対応が求められる。本邦では欧米諸国と比較し,分娩目的での産婦人科への入院期間が長く,必然的に産婦人科病棟が介入の場となる。その中で精神科医の果たすべき役割は,精神症状の管理にとどまらず,周産期に関わるスタッフ全体が患者の心理社会的背景を理解し,包括的な治療関係を構築できるように配慮し,周産期に生じる特有の心理的変化へ対応することである。さらに,患者とその家族の家族機能を高め,新たな母子関係を形成するためには,どのような支援が必要かを多角的に検討しなければならない。そして,地域母子保健や精神保健の従事者との連携下にて養育指導や福祉資源を提供し補助するなど,退院後も母児とその家族に対する継続した包括的介入が望まれる。
Key words:perinatal care, psychiatric intervention, maternity ward

●精神疾患患者の周産期管理—産科医より—
新澤 麗  三木 明徳  難波 聡  板倉 敦夫  石原 理
 ①月経のある女性はいつ妊娠してもおかしくないので,パートナーがいるかどうか問診の一環として精神科医からも聞いてほしい。妊娠の可能性があると判断すれば,「妊娠と薬情報センター」などを有効に活用して無理のない投薬量の調整を行うことが必要である。②妊婦健診は金銭的に少ない負担で受診できる体制が構築されている。金銭的な理由で妊婦健診を受診しないという事態を避けるため,妊娠していれば精神科医からも妊婦健診受診を指示してほしい。③母乳哺育に関しては,臨機応変に対応すべきであり,母乳哺育にこだわりすぎることによる睡眠不足と過労に起因する精神疾患の状態悪化は避けたい。十分なサポート体制があれば育児は可能である場合が多いが,地域保健行政も巻き込んで奮闘する必要がある。そのためには居住地近くでの妊婦健診と分娩が望ましいと考えられる。④どうしても育児ができない場合には,児童虐待を防ぐ意味からも乳児院などの利用が必要となる。難しいことだが,育児環境までも含めた疾患の管理および生活サポートが必要である。
Key words:pregnancy, psychiatric disorders, pregnancy category, breast feeding, rearing newborns

●精神疾患を有する妊婦の精神科救急—精神科救急・合併症病棟の現場から—
小池 香  竹内 澄子  松浦 暁子  赤田 弘一  斎賀 孝久  佐藤 茂樹
 精神疾患を有する女性が妊娠し,入院を要するような精神症状の悪化をきたした場合,精神疾患に対する治療と同時に,妊娠・出産への対応も行わなければならない。その場合,産婦人科,精神科の両方を有する総合病院に依頼されることが多い。今回われわれは,産婦人科を有する総合病院である成田赤十字病院の精神科病棟に入院した妊婦31例について調査を行った。入院経路は精神科ルートからの入院が26例,産科ルートからの入院が4例,一般救急ルートからの入院が1例であった。入院理由は精神症状の増悪が20例,妊娠・出産管理のためが11例であった。産科的転帰は,出産14例,人工妊娠中絶8例,妊娠のままでの退院9例であった。精神疾患合併妊娠,特に精神科救急を要するような症例に対応するためには,産科・新生児科と精神科との協働が可能となるような総合病院の存在が必要である。
Key words:pregnancy, parturition, psychiatric emergency, liaison psychiatry, general hospital

●精神疾患の遺伝カウンセリング
佐藤 有希子  後藤 雄一
 精神疾患の多くは,遺伝要因と環境要因が複雑に作用して発症する多因子遺伝病である。患者や家族が挙児を考える上で疾患の遺伝に悩む場合があり,遺伝カウンセリングが必要となる。遺伝カウンセリングでは,相談者の抱える悩みを聴き,状況を遺伝医学的視点から評価した上で,必要と考えられる情報を提供し,心理社会的な支援を行う。遺伝の可能性は,経験的再発率に個々の状況を加味して算出する。遺伝に関する情報は,不確実さを含んでいたり,相談者にとって望ましくない情報を含んでいたりする。相談者が疾患とその遺伝について正しく理解し適応できるよう,相談者の反応に留意しながら必要な支援を見極めて提供することが求められる。精神疾患の診療に際しては,患者や家族が適切な遺伝カウンセリングを受けられるよう,院内外の遺伝医療専門職と連携することが望ましい。
Key words:genetic counseling, multifactorial inheritance, empirical recurrence risk

●地域看護師等との多職種連携が奏効した不安障害の妊娠例
齋藤 暢是  日野原 圭  加藤 敏
 厚生労働省調べによると2009年時点で乳児院には約3,000人の乳児がおり,そのうち18.9%の養育困難理由は母の精神疾患とされ,その数は増加傾向にある。精神疾患を合併した母子の処遇困難例の多くは,医療的な介入だけでなく,地域連携を含む多職種の包括的なサポートを必要とする例が少なくない。本稿では多職種連携を必要とした精神疾患合併妊娠の一症例を提示し,「事例性caseness」と「疾病性illness」の視点で考察を行い,多職種連携の実際を紹介する。
Key words:pregnant woman, anxiety disorder, mental retardation, multidisciplinary team, caseness/illness, PSW

●患者から挙児希望を相談されたとき
西澤 治  近藤 毅
 QOL向上を目指した今日の精神科医療の中で,精神疾患を抱えながらも挙児を希望する女性患者が増加している。しかし,精神疾患を有する女性の妊娠,出産,育児においては,計画外妊娠,向精神薬の催奇性,母児合併症のリスク,服薬中断による妊娠・産褥期の精神症状の再燃,残存精神症状による育児能力の低下,など様々なリスクが挙げられている。現状では,妊娠判明後に内服減量・中止が行われる風潮があるが,統合失調症の場合,向精神薬中断による精神症状悪化は連鎖的な負の帰結を招きがちであり,実際面では,服薬中止のリスクが服用中の催奇性リスクを上回る点を強調した情報提供がなされるべきであろう。挙児可能年齢の女性には,妊娠前より最小有効量に向けた薬物調整を行い,心身ともに安定した状態で出産を迎えさせるよう準備を進める必要がある。
Key words:female psychiatric patients, pregnancy, psychotropic drug, psychotic relapse, teratogenicity

■研究報告
●遅発性dysphoric maniaの自殺企図の1例—発揚気質の均衡不安定化—
狩野 正之
 不快躁病の急性発症期に自殺企図した高齢の1例を提示し,自殺行動に至った心理過程についてstate—trait interactionの視点から考察した。患者は身体的健康上の問題をかかえ,半年間の軽うつ状態を経て,短期間のうちに鼻出血に対する不安を契機に興奮状態,躁性混合状態に移行し,強い意図で衝動的に自殺企図した。遅発性不快躁病の発症により生じた自殺念慮が,発揚気質の均衡不安定化により衝動性を帯びたものと考えられた。亜型の発揚気質は自殺防御因子とならない可能性にも言及した。
Key words:attempted suicide, dysphoric mania, hyperthymic temperament, state—trait interaction

■臨床経験
●Lithium関連副甲状腺機能亢進症により認知症とみなされていた双極性感情障害の1例
中山 寛人
 Lithiumで治療中に認知症の合併が疑われたが,精査にて副甲状腺機能亢進症の存在が明らかとなった双極性感情障害の87歳女性例を経験した。1973年にlithium関連副甲状腺機能亢進症(lithium—associated hyperparathyroidism : LAH)が報告されたが,本例もlithium内服と血清Ca濃度の変動に関連を認め,intact PTH高値と画像検査上での甲状腺左下極の異常集積像から,LAHの存在が示唆された。責任病巣の同定はできず,外科的摘出はできなかった。精神症状のコントロールのためやむを得ずlithiumを少量投与し,高Ca血症に対してalendronateを併用することで,意識障害をきたすことなく安定して経過している。
Key words:hyperparathyroidism, hypercalcemia, lithium, bipolar disorder, dementia

●怠薬を契機に発症したと考えられる急性腎不全を合併した悪性症候群の一例
山本 和央  塩路 直弘  中島亮太郎  長尾 卓夫
 悪性症候群(NMS)は,高熱,著明な錐体外路症状,多彩な自律神経症状,意識障害を呈し致死的となる危険性もある一連の症候群である。NMSは抗精神病薬の投与開始や急激な増量に関連して発症することがよく知られている。また,比較的まれな原因であるが,抗コリン作用の強い向精神薬の急激な減量あるいは中止によって発症することも知られている。後者の場合は,“cholinergic rebound”が生じドパミン神経系が抑制されてNMSを発症すると考えられている。今回,我々は怠薬を契機に発症したと考えられたNMSを経験した。NMSは軽症化する傾向があるとも言われる中で,本症例は急性腎不全も合併しており血液透析を必要とするなど極めて重症であった。発症の原因および治療経過について若干の文献的考察を加えて報告する。
Key words:neuroleptic malignant syndrome, cholinergic rebound, acute renal failure, quetiapine, procalcitonin


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