●せん妄と睡眠時随伴症
鈴木 貴浩 金野 倫子 内山 真
せん妄と睡眠時随伴症はともに夜間に起こることが多い。直接観察する前にある程度見当をつける必要に迫られることも多い。そのためにはせん妄,睡眠時随伴症,それぞれの疾患としての特徴を把握したうえで,的確に診療を進める必要がある。本稿ではせん妄と睡眠時随伴症の鑑別を述べ,睡眠時随伴症として覚醒障害(睡眠時遊行症,錯乱性覚醒,夜驚症),レム睡眠行動障害,悪夢障害,睡眠関連食行動障害を挙げ,それぞれの概要を解説する。
Key words:delirium, parasomnia, arousal disorder, REM sleep behavior disorder, night mare, sleep related eating disorder
●せん妄が身体疾患の経過と予後に与える影響
臼杵 理人 西 大輔
せん妄の発症が身体疾患の予後不良に関連しているとするエビデンスが近年蓄積されつつある。ICUにおけるせん妄の発症は,死亡率,ICU在室日数,入院日数,人工呼吸器装着期間,認知機能障害など,多くの重要な予後を予測することがわかっている。それ故,せん妄の予防および適切なモニタリングは,患者の身体状態を管理していく上でもきわめて重要な課題であると言える。本稿ではAmerican College of Critical Care Medicine(ACCM)による,ICU成人患者における疼痛・興奮・せん妄対応の実践臨床ガイドラインを下敷きとして,せん妄が身体疾患の経過と予後に与える影響を概観する。また,せん妄の予防と加療におけるエビデンスを振り返り,その可能性と妥当性を検証する。
Key words:delirium, ICU, critical care, mortality, outcome