●寝室の温熱環境調節
久保 博子
日本は四季の変化が大きく,住居内も季節変動の影響を受け睡眠を阻害する可能性がある。睡眠時は,サーカディアンリズムによる自然な体温変化を妨げないように,寝床内環境を適正に保つように住居環境に合わせて適切な調整が必要である。夏期は昼間の日射による暑さを遮蔽し,夜間の冷気を取り込み,室温を調整し自然に冷やせればよいが,室温が29℃以上では睡眠を阻害するので,おおむね27℃程度を目安に適切に冷房使用した方が快眠に繋がる。温度変化も寝具や寝衣が薄く室内環境の影響が大きいので,睡眠に影響を及ぼす。タイマー使用では,睡眠前半3時間ほどは室温を上昇させないようにすべきである。冬期は,手足の過度の冷えを防ぎ,寝床内環境を33℃±1℃程度に保つようにすべきであるが,寝床内暖房器具は35℃以上では発汗し,40℃以上では低温やけどの危険もあるので,高温に注意を要する。夜間のトイレや起床時のヒートショックや血圧のモーニングサージの影響を考慮すると,寝床内を暖めるだけでなく,室温も調整すべきである。
Key words:thermoregulatory, bedroom temperature regulation, season, heating and cooling, bed climate
●睡眠環境の調節―身体加熱―
都築 和代
入浴は身体加熱を通して,その後の夜の睡眠のノンレム睡眠や徐波睡眠,なかでもデルタ波のパワーを増加させるという効果を持つが,そのメカニズムははっきりしない。湯温や入浴するタイミングにより睡眠への効果は異なり,日中であれば高めの湯温でもよいが,夜間であれば就寝1〜2時間前に40℃の湯温で10分から15分間が望ましい。40℃のミストサウナなども同様の効果が認められ,また,天然温泉や人工炭酸泉についてもさら湯よりもデルタ波のパワーを増やしていた。足浴についても膝から下を40〜42℃の湯温に浸漬すると入眠改善等の効果が認められたが,日中に高齢者について実施した場合も主観的な睡眠感を改善した。また,眼部への温熱刺激も入眠潜時を短縮し,睡眠前半の中途覚醒を減らす効果があった。電気毛布は就床前の寝床内の温めに使うことが奨励され,足部などの局所に冷えを持つ人が入眠時に使うことが推奨される。
Key words:bathing, foot bathing, mist sauna bathing, eye-mask containing heat- and steam-generating, electric blanket