ここ数年、新規向精神薬8剤が使用可能となり、薬物治療の転換期に差しかかっている。しかし、EBMアルゴリズムで第一選択薬とされている非定型抗精神病薬は、わが国ではまだ10数%しか使われていない。標的症状の不明確さ、用量の不安定、副作用への不安など、新薬を使いこなすにはまだまだ経験を積まなければならない。そこで本誌では、新薬から得た知見をすこしでも早く読者と共有する目的で、治療経験を公募し、珠玉の62編を収載できた。合わせて薬剤毎に優秀論文を選定した。
編集 「臨床精神薬理」編集委員会 B5判 484頁
ISBN:978-4-7911-5061-8
発刊によせて | 村崎光邦 |
■Tandospirone |
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原著論文 ・[優秀論文賞]痴呆患者の攻撃性に対するtandospironeの有用性と 改訂長谷川式 簡易知能評価スケール及びBehave―ADとの関連性の検討 |
山根秀夫 増井晃 山田尚登他 |
・強迫性障害に対するtandospironeの使用経験 | 佐々木幸哉 井上猛 傳田健三 他 |
症例報告 ・Tourette症候群に対するtandospironeとpimozideの併用療法 |
岡田俊 |
・Tandospironeと選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)との併用の試み | 稲永和豊 西彰五郎 |
・うつ病に対するtandospirone併用療法の有効性 | 張賢徳 |
■Fluvoxamine | |
原著論文 ・Fluvoxamineの拒食期から過食期への移行期における GHQ(General Health Questionnaire)と食行動に対する影響 |
高宮静男 米永千香 川本朋 他 |
症例報告 ・摂食障害の治療におけるfluvoxamineの使用経験 |
後藤恵 |
・アルコール・薬物依存症と摂食障害の合併した症例に対する fluvoxamineの使用経験 |
後藤恵 |
・Fluvoxamineの少量投与によって著効した重度強迫性障害の2症例 ――若年発症した早期及び慢性症例の治療経験から―― |
仲本晴男 中山勲 |
総説 ・SSRI(Fluvoxamine)はどのようなうつに効くか?――文献的考察―― |
林美朗 植木啓文 |
■Milnacipran | |
原著論文 ・Milnacipranの使用経験――身体症状に対する効果を中心に―― |
佐々木竜二 佐々木信幸 小澤寛樹 他 |
・脳卒中後うつ病に対するmilnacipranの治療効果 | 木村真人 金谷幸一 今井理子 他 |
・抗うつ薬milnacipranの使用経験 | 中山純維 |
症例報告 ・[優秀論文賞] コンサルテーション・リエゾン精神医学からみた milnacipranの有効性 | 保坂隆 山田健志 佐藤武 |
・Milnacipranが有効であった抑うつ状態を伴ったアルツハイマー型痴呆の4例 | 藤沢嘉勝 横田修 中田謙二 他 |
・全般性不安障害に対するmilnacipran(トレドミン)の有効性 | 塚本徹 |
・Milnacipranにより著明に改善した重症うつ病エピソードの1例 | 三浦隆男 |
・総合病院精神科の日常診療におけるmilnacipranの使用経験 | 小澤篤嗣 礒崎仁太郎 山田康弘 |
・高齢者のうつ病,抑うつ状態に対してのmilnacipranの臨床効果について | 石塚卓也 新井平伊 |
・Milnacipran増量により,症状の改善をみたうつ病の2症例 | 鎌田裕樹 |
・Milnacipranとlithium carbonateの併用が効果的であった 気分変調性障害の1例 |
植木啓文 林美朗 |
・老年痴呆に見られた大うつ病エピソードにmilnacipranが著効した1例 | 坂元薫 長谷川大輔 |
・外来通院患者に対するSNRI(milnacipran)の使用経験の検討 ――精神科クリニックにおける治療経過から―― |
上垣淳 高橋幸男 山根巨州 他 |
・意欲低下を主症状とする遷延性うつ病にmilnacipranが著効した3症例 | 大下隆司 白川治 |
・Milnacipranが著効した帯状疱疹後神経痛の1症例 | 宇都宮克也 浮田孟 広田茂 |
・帯状疱疹後神経痛に対してmilnacipranが有効であった症例 | 嶋本恵利子 土井永史 諏訪浩 他 |
・Milnacipranが著効した口腔内セネストパチーの1例 | 田村良敦 木村真人 森隆夫 他 |
・Milnacipran服用中の男性に出現した性機能障害の3例 | 高木隆郎 安藤りか 松浦暁子 他 |
■Paroxetine | |
原著論文 ・[優秀論文賞]Paroxetineによるパニック障害の治療 ――ベンゾジアゼピンとの併用を中心に―― |
竹内龍雄 池田政俊 花澤寿 他 |
症例報告 ・Paroxetineへの切り替えが奏効した社会恐怖の1症例 |
伊賀淳一 吉松誠 前田正人 |
・難治性の気分障害に対してparoxetineが奏効した4例 | 五十嵐潤 杉原克比古 姜昌勲 他 |
・Paroxetineが奏効した小児期崩壊性障害の1例 | 成本迅 清水博 上田英樹 他 |
・精神科外来診療所におけるparoxetineの適応 | 竹村隆太 |
・Paroxetine投与と外来でのA―Tスプリットの試みにより 軽快を示した社会恐怖(社会不安障害)の1例 |
山口成良 武山雅志 秋月玲子 |
■Risperidone | |
原著論文 ・慢性期分裂病の入院患者におけるrisperidoneへの 切り替えの有効性とその意義 ――PANSSによる精神症状の評価と対費用効果―― |
松本良平 土田英人 福居顯二 |
症例報告 ・[優秀論文賞]初発未治療精神分裂病治療におけるrisperidoneの位置づけ |
小原喜美夫 竹内正信 藤内栄太 他 |
・定型抗精神病薬の長期投与で生じた遅発性ジスキネジアが 疑われる不随意運動がrisperidone投与により改善した2症例 |
澤田 和之 |
・陰性症状,認知機能障害を伴った難治性摂食障害症例に risperidoneが奏効した1例 |
松本出 井上祐紀 丹羽真一 |
・急性期の活発な幻覚妄想状態にrisperidoneが著効した3例 | 矢萩英一 中江重孝 |
・治療抵抗性うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬への risperidoneによるaugmentation療法 |
福永貴子 坂元薫 |
・定型抗精神病薬からrisperidoneへの緩徐なスイッチングが 有効であった慢性精神分裂病の3症例 |
田伏英晶 内藤宏 古川壽亮 他 |
・Risperidoneにより認知障害を伴った高度の陰性症状が著明に 改善した総合失調症の1症例 |
佐々木俊徳 板井貴宏 |
総説 ・急性期精神病患者へのアプローチ ――Risperidoneによる急性期薬物療法―― |
大下隆司 |
■Quetiapine | |
原著論文 ・Quetiapineでせん妄を治す |
佐々木幸哉 松山哲晃 井上誠士郎 他 |
症例報告 ・[優秀論文賞]従来型あるいは非定型抗精神病薬からquetiapineへの 切り替え症例の検討 |
久住一郎 高橋義人 本田稔 他 |
・多飲に対しquetiapineが有効であった1例 | 梶山浩明 藤川徳美 斎藤浩 他 |
・Haloperidolからquetiapineへの置き換えが有効であった 遅発性ジストニアの1例 |
仙波純一 山本紀子 |
・Quetiapine単剤投与への切り替え ――著効した精神分裂病の5症例とその臨床的特徴―― |
辻敬一郎 |
・細菌性髄膜炎に伴うせん妄に対してquetiapineが有効であった2例 | 廣西昌也 近藤智善 |
■Perospirone | |
原著論文 ・[優秀論文賞]Risperidoneをperospironeに変更した 33例の分裂病患者における経験 ――慢性期分裂病におけるSDAからSDAへの切り替えの可能性―― |
藤田和幸 兼本浩祐 |
症例報告 ・Perospironeが著効した5例 |
五十嵐雅文 田口理英 原隆 他 |
・難治性陽性症状にperospironeが奏効した1例 | 上田均 |
■Olanzapine | |
原著論文 ・[優秀論文賞]外来精神分裂病患者に対するolanzapineの効果 ――一般診療における使用経験―― |
高木隆郎 浜垣誠司 |
・精神分裂病患者におけるrisperidoneからolanzapineへの切り替え ――Quality of lifeの向上を目指して―― |
伊藤雅之 丹羽真一 松本出 |
症例報告 ・入院直後からolanzapine単剤治療により急速に好転した1症例 |
増山浩一 丸香奈恵 植村富彦 他 |
・向精神薬多剤投与からolanzapine単剤投与に切り替えて軽快した 精神分裂病の1例 |
山口成良 桃井文夫 |
・激しい幻覚妄想および精神運動興奮状態を呈した精神分裂病患者に olanzapineへのスイッチングが奏効した1症例 |
尾内隆志 熊倉徹雄 中込和幸 |
・Olanzapine投与により急激に退院要求が強まった精神分裂病の1例 | 紺野雅人 佐々木信幸 佐々木竜二 他 |
・定型抗精神病薬からolanzapineへの切り替えにより, 精神分裂病患者の認知機能ならびに社会生活適応度は改善するか? |
柴田勲 丹羽真一 |
・強迫性障害に対するolanzapineの使用経験 | 佐々木幸哉 井上猛 傳田健三 他 |
・神経性食欲不振症へのolanzapine治療経験 | 森孝宏 |
・神経性無食欲症治療におけるolanzapine ――5症例の検討―― |
高宮静男 山本欣哉 佐藤倫明 他 |