●がん性疼痛に対する疼痛治療と緩和ケア
高橋秀徳 中山理加 首藤真理子 折茂香織 片山博文 木俣有美子 村上敏史 服部政治 門田和気 下山直人
がんの痛みは,患者の日常生活に大きな変化を引き起こす。がん性疼痛に対しては,オピオイドを中心としたWHOがん疼痛治療指針が標準的治療として存在するものの,わが国ではあまり知られていなかったため,患者は緩和ケア専門病棟を利用しない限りがんの苦痛で苦しまざるを得なかった。しかしながら,2002年に一般病棟での緩和ケアチームの活動が認可されたことや,がん性疼痛治療に用いることができるオピオイドの選択肢の幅が広がりオピオイドローテーションが可能になったことにより,全国各地でWHO方式の普及が進みオピオイドが積極的に使用されるようになった。また,これまで終末期のみが対象であった緩和ケアが,近年では抗がん治療に並行して提供されるべきものとして考えられるようになり,わが国におけるがん性疼痛治療・緩和ケアは「全人的ながん診療」の実現に向けてここ数年で大きな変貌を遂げている。
Key words :cancer pain, palliative care, opioid, WHO guideline, palliative care team