こころの臨床 à·la·carte 第22-1巻増刊号
ほんとうに困った症例集:神経内科編
2003年2月
神経内科領域には、ALSをはじめ、難治性の疾患が数多く存在する。医師らは、これら疾患に生じる診療上のさまざまな問題点を、どのように悩み、解決していったか。若い医師のみならず、治療に携わるすべての者にとって、先輩たちの経験は、治療向上のための共有の財産となるだろう。このような趣旨のもと、全国の神経内科のオーソリティーよりたくさんの症例報告が寄せられた。各章に難渋したケースと打開策を提示し、「著者からのメッセージ」を紹介する。 医師たちの真摯な姿を伝える貴重な事例集。「精神科編」に続く第2弾。
編集 作田学(杏林大学医学部神経内科教授)
B5判 210頁
序 文
1.<診断をめぐって>
- プリオン遺伝子異常と経過からC-J-Dが疑われ、剖検で痴呆を伴う筋萎縮性側索硬化症と診断された一例
平井俊策、他
- 診断が困難であった孤発性若年型筋萎縮性側索硬化症sporadic juvenile ALSの症例
井田雅洋、他
- 筋萎縮性側索硬化症と運動性ニューロパチーの鑑別、及び治療に苦慮している一例
園生雅弘、他
- 嚥下障害を主徴とし、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と鑑別の困難であった慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の一例
小寺実
- 無動症と体幹の筋固縮を主徴としたパーキンソン症候群の5症例
中島八十一
- 初期に診断に苦慮した卵円孔開存に伴う奇異性脳塞栓症の若年例
橋本洋一郎、他
- 低髄圧症候群と両側硬膜下血腫を合併し、胸椎側方髄膜瘤様所見を呈した外傷性くも膜下腔―胸腔瘻孔の一例
坂井利行
- 家系内に同症者を認めなかった家族性アミロイドポリニューロパチーⅣ型の一例
池田佳生、他
- SMONの疑いから慢性感覚運動性多発ニューロパシーの鑑別を行い、確定診断に至った例
荒木淑郎、他
- 神経原性変化あるいは筋原性変化にとらわれるな! 確定診断に長期間を要した進行性筋萎縮症
川上正人、他
- 長期観察した高CK血の一症例
高木昭夫、他
- 嚥下障害が脳梗塞に伴う仮性球麻痺と誤診され続けた高齢女性―高齢発症の重症筋無力症
滑川道人、他
- 意識障害にステロイド・パルス療法が著効した高齢発症の全身性エリテマトーデスの一例
井上昌彦、他
- 片側の持続性頭痛を呈した2症例br>寺本純
2.<治療をめぐって>
- シェーグレン症候群を合併したパーキンソニズムの一例
真先敏弘
- 抗パ剤による幻覚がとれにくかったパーキンソン病の一例
寺尾壽夫
- 多数の危険因子を有し脳底動脈閉塞を来した脳幹梗塞例
平田温
- 抗コリン薬により発作が抑制された嚥下性脳虚血の一例
木下真男
- Tolosa-Hunt症候群が疑われた海綿静脈洞膿瘍の一例
内潟雅信
- 治療法の確立していない特殊な症状に対し、試験的に投与したカルバマゼピンが効果的であった2例
岩田淳
- 良性再発性無菌性髄膜炎の一例(いわゆるMollaret髄膜炎)
小澤英輔、他
- IVIg以外の免疫療法に抵抗性を示す慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの難治例
国分則人、他
- 難治性多発筋炎の治療:ステロイド、メソトレキセート、免疫グロブリン大量静注療法の効果
栗原照幸
- 通常の治療に抵抗を示した球症状の強い重症筋無力症
高橋竜哉、他
- 治療に行き詰まったが賢明なる助言により寛解導入に至った重症筋無力症の難治例
國本雅也、他
- 大量のステロイド投与が有効であった重症筋無力症例
小尾智一
- REM睡眠行動異常症の一例
米澤久司、他
3.<処遇をめぐって>
- 重症筋無力症に伴った筋萎縮と運動ニューロン疾患との鑑別が困難であった症例
玉岡晃、他
- 発病から長期間を経過してコントロールが難しくなっているパーキンソン病の一例
小池秀海
- 長期生存例
八瀬善郎
- 全身の骨新生を伴なった“Stone Man”の一例
伊藤和則、他
- 転院先を決めるときに成人後見人制度の利用が必要であった男性例
亀井徹正
- 在宅医療で搬送の必要な検査をどうするか
小笠原望
- ALSの病名告知が不十分であった患者への介入
谷口亮一
- 家族の支援に不安の残った筋萎縮性側索硬化症の一例
百瀬義雄
- 「説明」と「理解」の困難さ―筋萎縮性側索硬化症の一例をめぐって―
東琢哉、他
4.<家族をめぐって>
- 本人の事前指示が不明確なため家族の希望に反して気管内挿管を継続せざるを得なかったALSの一例
清水貴子、他
- 病棟職員に攻撃的な遺伝性変性疾患患者の娘
小長谷正明、他
- 家族の崩壊が激しい疼痛を引き起こした糖尿病性神経障害例
木原幹洋
- 神経難病(ALS)患者を抱えた家族の葛藤と長期療養問題
田中茂樹
- 介護者が替わり短期間で臥床、死亡した脊髄小脳変性症の一例
小松本悟
- 予後不良疾患でキーパースン不在のためコミュニケーションのとれなかった家族
内海裕也、他
5.<薬をめぐって>
- 副腎皮質ステロイド剤副作用で難渋する難治性重症筋無力症への新しい免疫抑制剤の導入
高守正治
- コリンエストラーゼ阻害薬により慢性膵炎急性増悪を反復した重症筋無力症
新井陽、他
- 片頭痛と診断されたが不完全な薬物療法により難治性頭痛となり治療に苦慮した一例
濱田潤一
- 更年期に頭痛が悪化し、ホルモン補充療法が有効であった片頭痛の一例
五十嵐(淺倉)久佳
- 重いペニシラミン副作用を来したウイルソン病に対する新薬の導入
有馬正高
6.<アフターケアをめぐって>
- 経過中に療養方針の見直しを迫られたALS症例
関晴朗、他
- 急性呼吸不全にて発症した筋萎縮性側索硬化症の一例
尾野精一
- 筋萎縮性側索硬化症患者の療養における神経内科医の役割
野中道夫、他
- 疾患の受容が難しく在宅療養に困難を来したALSの一例
児玉知子、他
- 在宅神経難病患者の療養環境の整備脊髄小脳変性症の一例
近藤太郎
- 神経症状を合併したAIDSの一例で「患者」「家族」との接し方と「アフターケア」でほんとうに困ったケース
若林行雄
7.<リスクの高いケース>
- 進行性核上性麻痺の転倒について
眞野行生、他
- ウイルス性脳炎で失外套症候群様状態に陥ったがステロイド大量療法後改善した症例
立花久大
- 内頸動脈血栓症による脳梗塞と上矢状静脈洞血栓症による出血性脳梗塞を合併した症例
荒崎圭介
- 高度肥満、妊娠を伴った多発性神経炎
新藤和雅、他
- 色々な合併症を伴った老齢期発症の重症筋無力症の男性症例
石田哲朗
- 危険なめまい
今福一郎