■特集 これだけは知っておきたい――診療・相談記録の書き方(I)
第1章 総 論
●診療に役立つのはどんなカルテか?――「わかりやすいカルテ」を目指して――
毛呂裕臣 花岡直木 毛呂佐代子 安藤直也 福田正人
抄 録 「精神科のカルテはわかりにくい」との問題意識から,(1)「どこがわかりにくいのか?」を整理し,(2)「なぜわかりにくいのか?」を検討し,(3)「どう書けばわかりやすいか?」を提案した。カルテがわかりにくい理由は,「病状がわかりにくい」「治療経過の全体を把握しにくい」「何を治療しているのかがわかりにくい」の3点にまとめられ,精神疾患の特徴に深く根ざしていると考えられた。わかりやすい書き方として,診療ごとに毎回記録する経過記録の案を検討し,工夫点を例示した。また,治療の全体的な流れを明らかにできるように,数か月ごとに簡単なサマリーを記載することが有用であることを指摘した。さらに図解を用いる方法を提案し,それがわかりやすさを増すだけではなく,患者が医療により積極的に参加するための「共有するカルテ」の実現を促進することを述べた。
キーワード:精神医療,カルテ,経過記録,図解,医療チーム
第2章 情報開示時代の法的問題
●わが国での動き
西島英利
抄 録 日本医師会では2000年1月から「診療情報の提供に関する指針」を会員の倫理規範として実施に移し,日常診療における説明,情報提供を徹底するとともに,患者から求めがあった場合には診療記録等の開示(閲覧,謄写)にも応じる取り組みを進めている。一方,政府は個人情報の保護に関する法律案を国会に上程し,すべての個人情報の本人開示,訂正請求などが法制化されようとしており,医療情報も原則として本法律案の対象に含まれている。本稿では,これらの動きを踏まえながら,日医指針の内容ならびにその策定の経緯をとりまく状況を概観したうえで,とりわけ法的観点からの問題点の摘示と今後の展望を模索していく。
キーワード:診療情報の提供,診療記録等の開示,個人情報の保護,プライバシー,閲覧・謄写
●外国での動き(アメリカの場合)
中久喜雅文
抄 録 この小論でアメリカの精神医療における情報開示の問題が,どう治療的,法的に扱われているかについて論じた。そして“Managed care”によって代表される,アメリカの保険医療では,秘密保持の原則が維持できない。この現実の中でどう患者を治療してゆくかを論じた。法的には,1969年におこったTarasoffのケースが秘密保持の原則に強力なインパクトを与えた。これについて報告し,他人に危害(虐待をふくむ)を与える患者の治療中に,その危険性(加害者として,また被害者として)を感じた治療者のとるべき行動が法律的に規制されていることを論じた。基本的には患者へのコミットメントと,社会の安全を守るという両極の間にはさまれた精神医療家の現状を報告した。
キーワード:精神医療,情報開示,法的問題
●医療・相談記録と医事紛争
押田茂實
抄 録 医療行為はチーム医療として多数の医療従事者が協力して施行されているが,危険は医療のすべての場面に伏在している。精神科領域では,他の科と異なり他害・自傷・自殺例についての事例や医事裁判例が散見される。診療録・看護記録以外の各種の相談記録においても医事紛争になると重要な記録として焦点が当てられる。客観的で簡潔な記載を行うためには,事実を把握して記述する訓練が必要であり,不正確な記載により無用の紛争が引き起こされる例もある。経時記録を残したうえでの新しい診療・看護体制や記録法の創造が望まれる。患者の所見について,医師や管理職からのフィードバックにより,不正確な記載,客観性を欠く記載が正されることで,記載能力の向上が期待されよう。カルテ開示にともない,診療・看護記録などが患者や家族の目に触れる機会も激増する。客観的で正確な診療・看護記録などは,医療記録全体の社会的信用を強めていくことになる。
キーワード:医事紛争,医療記録,経時記録,記録の訂正,記録の開示
第3章 さまざまな臨床場面における診療・相談記録の書き方
●初診時
中安信夫
抄 録 外来初診時に限定して,聴取すべき必要最低限の情報および精神的現在症に関する記載上の留意点を概説した。聴取すべき必要最低限の情報のうち,主訴 and/or
受診動機については(1)患者の主訴と同伴者の受診動機を区別する,(2)主訴は患者の生の言葉で陳述通りに記載するの2点を,また現病歴については(1)現病歴をいつの時点から書き始めるかは治療者の判断に属する,(2)時間を追って記載し,時期の特定とともにその折の患者の年齢や社会的立場も記載しておく,(3)患者ならびに同伴者の陳述を生かし,術語は用いずに記載するの3点を肝要なこととして述べた。精神的現在症に関しては,〔表出〕は正常・異常の区別なく,すべてを取り上げ,微妙な綾まで表現するためには母国語(我々の場合は日本語)を用いること,〔体験〕および〔行動〕はその異常のみを取り上げて精神病理学的術語を用いて記載することを述べ,加えて各々その記載上の注意点を述べるとともに,筆者の作成したカルテから実際の記載例を引用し例示した。
キーワード:主訴,受診動機,現病歴,精神的現在症,状態像
●入院時
岡島由佳 中込和幸
抄 録 入院時に必要な診療録の記載項目は診断名,主訴,現病歴,生活歴,既往歴,家族歴,入院時現症がある。これらは診断・治療においてすべて重要な情報であるが,入院初日の限られた時間のなか,これらの情報をすべて記載することは困難で,必要な情報を優先し,後日少しずつ書き足していく方法が現実的である。しかし入院時現症は,診断の過程が理解でき,入院後の病状の変化にも対応するためにも詳細に記載しておくことが重要である。また診療録は医療のプロセスが読み取れるものでなくてはならない。誰がみてもその患者の問題点やその対策が理解できることが必要である。精神科特有の診療録の特徴としては,精神科病棟への入院は精神保健福祉法に基づいて行われるため,入院や行動制限に関して精神保健指定医が必要事項を記載することが定められている点があげられる。近年,日本の医療は転換期を迎え,医療倫理がうたわれるなか「医療情報の提供と開示」が求められる段階を迎えている。こうした患者への診療録開示の観点からも,診療録の記載は診療の事実に則し,医学的論理に基づいた記載であることが重要である。
キーワード:診断名,主訴,現病歴,生活歴・家族歴,入院時現症
●退院時サマリーと退院療養計画書の書き方
渡邉博幸 伊豫雅臣
抄 録 退院時の記録として,「退院サマリー」と「退院療養計画書」を取り上げる。診療情報開示や電子カルテ化の要請の中で,これらの記録の「他医療施設やユーザーへの情報提供ツール」としての役割を検討してみる。退院時サマリーには,スムーズな治療連携を可能にするための良質な情報提供が望まれる。また診療情報アクセス権の尊重という流れの中で将来的には「医療コンシューマーに対しての報告書」として利用される可能性もある。本文の中で,これらの新しい役割を念頭に置いて,記載の要点や留意点を詳述する。また,限られた時間で質の高い記載を可能にするために,電子カルテが強力な臨床援助手段となりうることを述べる。次に,退院療養計画書について,ユーザーにわかりやすい記載をするための工夫を例示し,その心理教育的側面について強調する。
キーワード:退院サマリー,診療情報開示,電子カルテ,心理教育,医療ユーザー
●訪問面接時
伊藤晋二 佐藤親次
抄 録 訪問面接時の診療・相談記録は,その訪問や往診そのものの法的根拠,また診断や入院要否の判断の医学的根拠を示さなければならない。また,チーム医療を行う際に,チーム内での情報の伝達を正確に行うためのデータベースとしての意義が重要である。訪問以前の記録としては,一般的な予診記録のほかに,患者宅の地図,間取り図,家族状況,経済状況などを医療の発展性を見込んで記載する。訪問時には患者の生の生活状況を記録し,訪問後直ちに面接記録を逐語的に記録する。問題点のリストをSOAP形式で作成し,最後に得られた情報を総括し,現在の状態についての評価,今後必要とされる医療の展開の見通しなどを記述した,総合評価を作成する。精神障害者の地域ケアにおける訪問面接時の診療・相談記録の重要性は今後ますます大きくなってくるものと思われる。
キーワード:法的根拠,医学的根拠,チーム医療,地域ケア,データベース
●精神科における紹介状の書き方
野村総一郎
抄 録 「簡潔にして要をえた」紹介状を書くことは案外難しい。ここでは精神科医から他の精神科医に向けた紹介状のポイントを提示する。氏名,生年月日,性別,診断名,職業,家族構成,処方,副作用歴などの項目はもちろん必須であるが,これらに加えて「家族の中のキーパーソンは誰か」「これまでの治療反応性」「患者の理解度と医療への信頼性」などについて,ごく短く触れておくと非常に有用である。また診断を巡る多少の学問的考察も加味すると良い。必須でありながら,案外忘れたり,ピントはずれの記載になりがちなのが,「なぜ依頼したのか」という点である。これらを簡潔にまとめられるということは,患者全体像をよく把握していたということの証左でもあり,紹介医の力量がよく反映されるものであるだけに,紹介状を書くに際して気をぬいてはいけない。
キーワード:紹介状,キーパーソン,治療反応性,インフォームド・コンセント
●引き継ぎ時
安宅勝弘
抄 録 臨床医であれば自身の転勤・異動など外的な要因により患者の治療を他の医師に引き継がなくてはならない状況を必ず経験するはずである。診療録に引き継ぎ時の情報として記載する内容には一般的なmedical
recordとしての診断名,治療経過,投薬内容,検査所見,現在の病像(問題点)の他に,精神科臨床においては患者の心理社会的背景(家族状況や社会適応など)についての要約も必要である。さらに精神療法に力点を置いた治療の場合,これらの他に精神力動的なアセスメントに関する情報が盛り込まれていることが望ましい。また記載される内容とは別に,主治医の交代という事態が治療におよぼす影響についての配慮が必要であり,これは特にインテンシヴな精神療法においては一種の“termination”(終結)として患者とのあいだで取り扱われなければならない。
キーワード:主治医交代,申し送り,終結,精神力動的評価
●治療経過の記録の仕方
古川壽亮 竹 内浩 金井高広 東英樹 安田年伸 中野弘克
抄 録 治療経過を記録する目的には,診療を記録することと,診療を計画することがあるだろう。この目的をかなえるためには,カルテ記載の基本として,1)読める字で書く,2)誰が書いたかわかるようにする(つまりサインする),3)日々の記録と全体のまとめを区別する,ことが必要であろう。POS/SOAP式は,厳密には精神科診療になじまない面があるように思われる。そこで,われわれはconversation-assessment-planのCAP方式での記載を試みている。
キーワード:カルテ,診療記録,POS(problem-oriented system)/SOAP(subjective-objective-assessment-plan)
●カルテの書き方:家族との面接――その原理的困難と「客観的恣意性」――
小野博行
抄 録 カルテは公文書であり司法的論議の対象となりうる,ということがカルテ記載に原理的困難をもたらす。第一は診療内容の取捨選択の困難であり,第二は非言語的コミュニケーションの意味判定の困難である。それはいずれも恣意性・客観性の問題に深く関わっており,この原理的困難は解決不能なものとなっている。そこで実践的に必要となってくるのが「客観的恣意性」とでもいうべき判断的視座の獲得である。そして,この視座に基づいたカルテ記載を実現するためには,診療現場での意味連関の即時的把握に習熟することが必要となる。
キーワード:公文書,普遍妥当性,恣意性,客観的恣意性,意味連関
●職場関係者との面接
黒木宣夫
抄 録 産業精神保健に関わる面接には,一般の医療機関,企業内医療機関,企業内健康管理室とさまざまな場所・場面での面接があり,さらに企業規模により企業それぞれの健康管理体制があるため,それに関わる職場関係者との面接がある。職場の人との面談が就業者にどのような影響を与えるのか,慎重に検討した上で治療過程の中で関係者面談を組むことが重要である。そして治療者が置かれる立場は,本人,家族,職場上司,人事,産業スタッフとの狭間で微妙な立場に立たされることがあり,関係者面談の診療録記載のポイントは,それぞれの立場からの発言がわかるように記載することである。そして治療者が中立的立場から患者に対する守秘義務を考慮しながら職場関係者への説明,ないし指示がわかるような記載,また復職,業務上の措置が必要な場合には安全配慮義務に配慮した形での記載が望ましい。
キーワード:守秘義務,安全配慮義務,企業内面接,企業外面接
第4章 職種別にみた診療・相談記録の書き方
●診療録を如何に書くか(精神科)
安永浩
抄 録 医師は診療録を書くことがあまりに日常的になっているので,かえってその意義を十分自覚していないことがあり得る。診療録は「誰が読むのか?」という形で先ずこの問題を考察した。4つの場合をあげたが,ほぼこれで尽きているのではないかと思う。「読めるためには」と題した項で述べたことはいささか蛇足,と自分でも思わないでもなかったが,実際問題としては甚だ重大なことであるので書いた。以下は「初診部」と「経過部」とに分けて,それぞれ必要と思われるところを述べた。その途中で表現,記述,というものの根本に遡った考察も簡単ながら論じている。更に関連して,今後問題となるであろういわゆる電子カルテの問題についても言及した。
キーワード:精神科,診療録,記述,カルテ開示,電子カルテ
●診療録の書き方の昔話と今の私
臺弘
抄 録 昔の巣鴨病院や松沢病院の診療録は呉秀三先生を初めとする明治の諸先覚によって作られた。そこでは多くの精神科用語の創製を含めて,日本語の新しい表現の1つとしての病歴の書き方が摸索された。その後輩たちは,それぞれの精神医学・医療への取り組み方に応じて,用語や文体を自分のものとしていった。現在もなお精神科の臨床では,新しい言葉(視点・理論)が求められているが,それはわかりやすい言葉で実践に即して実証をめざしたものでありたい。私の今のカルテは,外来診療の現場にふさわしく,問答と行動記録と医学的基礎所見と「簡易精神生理テスト」からなるメモのようなものとなっている。それは臨床的応用と診断書などの文書の基礎資料となり,公開に耐えるものである。
キーワード:日本語の病歴,診療現場,外来カルテ,簡易テスト,臨床的応用
●診療録の書き方
千葉裕美 濱田秀伯
抄 録 診療録には患者の内面とそれをどのように把握しているか,治療方針および治療経過を記載する。そして適切に精神症状を把握し他人にわかりやすく書く。精神症状を適切に把握するためには精神疾患の知識が不可欠である。ただ単に専門用語を使うのでなく,実際にどのように患者が表現したか記載し,それを適切な用語を使って把握する。精神症状は観察所見と問診から得られた情報に分けて記載する。問診から得られた情報は,感情,知覚,思考,自我,意志と欲動などに分けられて把握し,状態像,診断名を記載する。診療録の記載は,診療報酬の根拠としても要請され医療事故の際も重要な証拠となる。精神科の場合,退院や外来治療継続の判断が問題となることがあり,診療録の記載がその際,重要な根拠となる。これらのことを念頭において適切に精神症状を把握し,その内容や治療方針をわかりやすく記載することが推奨される。
キーワード:診療録, 診療報酬, 精神症状, 医療事故
●看護婦
川野雅資
抄 録 看護婦が書く記録には,アセスメントのための記録(情報収集用紙),看護上の問題点ないし看護診断・ケアプラン・短期目標・評価日の記録(看護計画用紙),そして毎日のケア,あるいは患者の状態を表す記録(熱型表あるいは温度表,フローシート,チェックリスト,経過記録)がある。
看護記録の目的には,チーム医療を促進するための情報交換,ケアの質を保証するためのデータベース,看護教育・研究のための資料,医療行為の法的証拠,の4つがある。経過記録の種類には,経時(逐語)記録,POSのSOAPもしくはSOAPIE,SOAPIER,フォーカスチャーティング,CBE,PIE,ケースマネージメントモデルがある。経過記録は看護計画と密接に結びついている必要があるので,具体的な例を元に看護計画,経時的記録,フォーカスチャーティングで比較してみる。フォーカスチャーティングは,問題点に対してどのような看護を行ったのか(A),その結果どのような成果が得られたのか(R)がわかる。また,良い点も記述できるので,トータルな看護を展開できる記録システムであり,この方式は患者中心,成果中心に看護の視点を変えていくものであるという特長がある。
キーワード:看護記録,経過記録,経時(逐語)記録,SOAP,フォーカスチャーティング
●保健婦・士の相談記録
杉本正子
抄 録 東京都地域保健課主催による「保健婦・士の記録の在り方に関する検討会」のプロセスを概説しながら,保健婦・士の相談記録(2号様式)について提示した。記録の改善に向けて考慮した点は,(1)必要な情報を整理できること,(2)誰が見ても相談内容がつかめること,(3)毎日の業務にあまり負担をかけないことの3点を考慮し,POS(problem
oriented system)を土台とし作成した。相談記録の目的は,(1)記録により保健婦・士活動の透明性を高め,サービスの向上を図る,(2)継続的な関わりの保証,(3)事例の集積により地域の健康課題を明確化すること,であった。試行期間を経て,平成13年6月より新相談記録の使用にふみきったが,今後さらに「相談記録システム検討会」で評価検討していきたい。
キーワード:保健婦・士,相談記録,POS(problem oriented system),情報開示
●精神保健福祉士からみた相談記録の書き方
田中英樹
抄 録 ここでは,精神保健福祉士からみた相談記録の書き方について述べている。論旨は,まず,精神保健福祉士にとって記録の持つ意義や重要性を確認する。相談記録は,何よりも利用者へのより良い援助を提供するためにある。また,記録は所属する援助機関としての社会的責任を明確化し,支援機能を高めるために不可欠なものである。さらに相談記録は利用者のアドボケイトに貢献したり,現任者や研修生の教育訓練や調査研究のためにも活用される。次に相談記録の種類と様式に関して,叙述的経過記録,要約記録,説明記録を紹介し,インテーク記録と経過記録の書き方を解説している。また,記録記入上の留意点にも7項目ふれている。そして相談記録のマッピング技法についてエコマップを中心に例示している。
キーワード:相談記録,ジェノグラム,エコマップ,マッピング技法
●総合病院精神科における臨床心理士の場合
篠竹利和
抄 録 総合病院における臨床心理士は狭い意味での「心理療法/カウンセリング」や「心理検査」の実施だけでなく,多岐にわたる役割業務を期待され,実践している。それらに通底するのは,臨床心理士が病にかかった個人の病のもつ意味を探求し理解する仕事を求められており,そして,そうした患者に対する臨床心理学的な見方を医療チームに説明する役割を担っているということである。ここにおいて心理士の書きとどめる記録は,その具体的な実践のためのツールとなる。本稿では,心理検査の報告書作成およびそれを患者にフィードバックする作業や心理療法の記録における試行錯誤の例を紹介した。とどのつまり,これぞというhow
toはない。ただし,そうした作業がチーム医療全体に統合されるためには,院内カンファレンスに継続的に出席するなど,日ごろのコミュニケーションを通しての素地づくりが肝要であるとは確かに言えると思う。
キーワード:臨床心理士,総合病院精神科,心理検査報告書,心理療法の記録,Narrative Based Medicine
●診療記録および情報活用とその現状――診療情報管理士の立場から――
鳥羽克子
抄 録 近年の医療経済,社会構造・環境の変化が医療現場にも大きな影を落とし,いま病院経営は暗い袋小路に入っていると言われる。そのため多くの医療機関がコスト管理を目的に様々な効率化・合理化を行い始めている。だが,現状はこうした状況下で発生する診療記録および医療情報が効率的・効果的に管理され,時代に合ったシステムで提供されているとは言えない。一方,かつて無いほど「診療記録および情報開示」に対して多くの人々の関心が集まっている。それは現状が,医療への強い期待と不信の交錯する中に置かれている為とも言える。そのような中,記録管理・情報提供に深く関っている管理士に対して俄かに注目が集まり始めている。そこで,診療情報管理士の立場から「診療記録の収集・管理・活用」を中心に,その問題点を探り,現状と今後の課題について見ていく。
キーワード:医療への期待と不信,記録整備,管理士の役割,インテグレートシステム
連載
●診察室から外へ打って出ると(第1回)
桜クリニック/名古屋大学名誉教授 笠原嘉