季刊
精神科臨床サービス 第08巻03号
2008年07月
《今回の特集:見通しをもつことで深まる精神科臨床サービス》
症状や薬、生活や人生についての今後の見通しは、精神科の医療や福祉を利用する当事者や家族の誰もが知りたいことであろう。しかしながら、エビデンスになじみにくい「見通し」について、専門家の間で正面から論じられることは少ない。どうしてそういう見通しをもてたのかと問われても意識化しにくい。後輩にどう伝えたらよいかわからないし、自分でどうやって身につけたのかも判然としない。また、未来を見通すことはなかなか難しい。こうした見通しについて、多くの専門家の経験をまとめたというのがこの特集である。冒頭では、当事者や家族に見通しについての経験や思うところを述べていただいた。見通しに関する確かな知識を得ることが困難なだけに、他に類をみない貴重な特集テーマといえるであろう。
ISBN:978-4-7911-7131-6
【特集】 見通しをもつことで深まる精神科臨床サービス
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第1章 総論
〈当事者〉
- 当事者が持つ病気・症状の回復の見通し
伊藤知之
- 当事者の持つ見通しと希望
宇田川健
- 当事者にとって〈見通し〉をもつということ
明念倫子
〈当事者の家族〉
〈精神科臨床サービスにおける見通しの意味〉
第2章 当面の見通しをどう立てるか
- 精神症状はこれからどう回復できるか―回復をみる視点―
岩井圭司
- 機能レベルはどのくらい回復できそうか
安西信雄
- 自立を実現するために当面の見通しをどう立てるか
小澤壽江,小田 潤
- 薬をやめるときの見通し
熊田芳子,藤井康男
- 自殺のリスクをどう見通すか
水野康弘,張 賢徳
- 他害や暴力のリスクをどう見通せるか
樽矢敏広
- 衝動行為をどう見通すか
石本佳代,林 直樹
第3章 当面の見通しをどう伝えるか
- 見通しをどのように伝えるか―統合失調症や気分障害の初診時を中心として―
青木省三
- リハビリテーションの見通しをどう伝えるか
江畑敬介
- 気分障害の復職
高野知樹,島 悟
- 統合失調症の就労―IPSの理念を基にした就労支援の見通し方―
中原さとみ,中谷真樹
- 入院時の見通し
亀山正樹,小野樹郎,齊藤良ほか
- 退院時に何を伝えるか
蟻塚亮二,渡嘉敷史郎,飯田淳史ほか
- 治療が停滞して見通しを持ちにくいときの対応の工夫
原田誠一,勝倉りえこ
第4章 見通しをもてたことでの成功/もてなかったための失敗
- 外来臨床サービスにおいて「見通し」をもつことの意義―失敗・成功経験に基づく考察―
中村道子
- 入院治療における見通しをもてたことでの成功/もてなかったための失敗
五味渕隆志
- 精神科デイケアでの「見通し」
原 敬造
- 見通しを持つということは,可能性を信じて伴走すること―引きこもり青年が就労につながるまでのプロセス―
松浦幸子
- グループホームからアパート生活への「見通し」について
鈴木卓郎
- 精神疾患を持つ人々の就労と職場適応支援における職業臨床的関与について
佐織壽雄
第5章 どうすれば見通しをもてるようになるか
- 当事者・家族とどう見通しを共有するか
西尾雅明
- 治療チーム内で見通しをどう共有できるか
漆原貴子,山口大介,池淵恵美
- 病気と生活の見通しを学ぶ
福田正人,原田明子,日原美和子ほか
第6章 生活と人生のこれからを見通す
連載
気質論と精神科治療および臨床サービス