●IPS(Individual Placement and Support)
西尾雅明
精神障害者の雇用を義務づける障害者雇用促進法の改正が施行されるなど,精神障害者の職業支援が大きな転機を迎えている今,1980年代に米国で開発された雇用付き援助の方法であるIPS(Individual Placement and Support)が注目を浴びている。IPSは,実社会での一般就労を前提に,精神障害をもつ対象者が就職し,職を維持するために必要な援助を継続的に提供するプログラムであり,精神科治療・精神科リハビリテーション・職業リハビリテーションを統合した枠組み,Place then Train(就労してから訓練)とノーマライゼーション(短時間・短期間就労の是認)を重視した援助理念,ストレングスとリカバリー志向の実践を特徴とする。近年では認知機能リハビリテーションと組み合わせることでの有用性が指摘されており,我が国でも普及が待たれている。
キーワード 精神障害,就労支援,援助付き雇用(SE),IPS,認知機能リハビリテーション(CR)
●定着支援のHow to
天野聖子
当法人では,授産施設時代のトレーニングから始まり,障害者自立支援法を受けて就労移行支援事業と就業・生活支援センターの連携という当法人の就労支援スタイルを作った。時代の変化を捉え,プログラム内容も大幅に変えながら実績を上げ,当事者の力もついてきた。しかし度重なる雇用促進法の改正を受け,就職者数にこだわる風潮が企業や関係機関の間で起きてきた。それを受けて企業系事業所が進出し,精神障がい者がビジネスの対象になってきた。離職者の増加も目立ってきたが,基本に戻って連携による支援や,長いスパンの関わりこそ必要な時である。すでに介護や自身の高齢化問題が出てきた方たちもいる。障がい者の就労支援は生活支援が関わってくるので,暮らし全体を支えるという視点と長い関わりであるという覚悟が問われている。
キーワード 時代の中で,変化と工夫,就職と離職,当事者の力,この先の問題