●強迫症に対する認知療法─その方法と効果─
石川亮太郎
強迫症に対する認知療法(認知行動療法)は,強迫症を維持・悪化させている認知的解釈にアプローチすることで強迫症を改善させる精神療法である。その代表的な技法として,認知理論の心理教育,ノーマライズ,ケースフォーミュレーション,理論A と理論B の比較,行動実験を紹介する。これらの認知的アプローチと,曝露反応妨害法などの行動的アプローチを併用することで,強迫症に対してさらなる治療効果が期待できる。
Key words:cognitive therapy, theory A and theory B, behavioural experiments
●強迫症の森田療法
舘野 歩
強迫症に対する森田療法の適否の判断,森田療法による治療目標,外来森田療法の実際,入院森田療法の実際を示し,森田療法と認知行動療法との比較を論じた。認知行動療法は症状の軽減のみを治療目標に置いているのに対し,森田療法では症状の軽減のみに治療の目標を置かず強迫行為に対する指導と同時に生活全体を充実させていくよう指導していくところがポイントである。強迫症状は得てして取り除こうとすればますます悪化してしまう。森田療法には強迫症状を取り除こうとする患者のエネルギーをプラスの方向(建設的な行動)へ転換していく独自の観点がある。強迫症状を訴えてきた患者に対し,治療者が症状の軽減のみに「とらわれ」ず,患者の健康な欲求(生の欲望)を発揮するよう援助していく方向で粘り強く患者を支えていくことが森田療法の基本姿勢だということである。
Key words:obsessive-compulsive disorder, Morita therapy, fulfillment of life in general, cognitive behavioral therapy