●統合失調症における思考障碍について
岡 一太郎
まず精神医学史的な観点から,Bleuler, E. が統合失調症概念を提出した際に連合弛緩をその基本症状の筆頭に置くまでの経緯を粗描した。次にこの精神病理の具体的な様態を症例に即して記述し,生の一回性と言語の反復可能性の間の関係からBleuler の議論を再検討することを通じて考察を試みた。連合について正/誤,自然/奇妙という2 つの異なる座標軸を用いることでBleuler は,連合弛緩では正しいが奇妙である思考過程が問題になっていることを示唆していた可能性を指摘した。そのうえで連合弛緩は,個別主体の生の展開に基づく発話行為の全体的な「自然さ」が,個別主体の死後も失われない言語体系において正当化される部分的な「正しさ」によって侵蝕された病理として捉えられ得ることを論じた。
Key words:schizophrenia, loosening of association, Eugen Bleuler, language, life