ゆるゆる病棟。
精神医療の新しい可能性を求めて
自分が入院してもいい、あるいはここなら家族を入れてもいいと思えるような病棟、気軽に誰でも受診できるような外来をめざし、医師と心理士が共同で立ち上げた「上尾の森診療所」。医師と心理士の対等な協力関係、有床診療所という稀な形態で、何を求め、どんな型破りな活動を行ってきたのか。今はじめて、波乱万丈、試行錯誤の11年の軌跡と思いを語る。精神、心理関係や患者、家族の方はもちろん、一般医療、福祉、行政、地域活動に関わる方にもおすすめの一冊。
佐藤順恒、山田均著
定価
2,090 円(本体1,900円 + 税) 四六判 並製 304頁
ISBN978-4-7911-0606-6〔2006〕
Contents
- はじめに 佐藤順恒
- プロローグ 佐藤順恒 山田 均
- 出会い
- 開業に向けて
- 上尾の森診療所のコンセプト
- 第一章 上尾の森診療所という試み
-
- 第一節 開設前
- 上尾市の風景
- 住民の反対
- 上尾の森診療所の概要
- 初期の職員配置
- 大切なパンフレットの役割
- オープニングパーティー
-
- 第二節 初期・開設から桶川分院開設まで(平成六年四月~)
- 真新しさの中で
- 初期の入院病棟
- 病棟の一日の様子
- 「ハート倶楽部・上尾」の立ち上げ
- 外来の混雑
-
- 第三節 桶川分院開設(平成九年四月~)
- 桶川分院開設準備
- 桶川分院開設
- ティーパーティーの試み
- ティーパーティーの様子
- デイケアの開始
- 小児相談室
-
- 第四節 本院増開設(平成十五年~現在)
- 走り出したら止まれない
- 増改築後の外来
- 増改築後の病棟
- 本院のデイケア
- 「社会福祉法人あげお福祉会」の誕生
- 上尾の森診療所 ―― 今後の展望
- 第ニ章 それぞれの持ち場から
- 患者さんと医師をつなぐ 受付事務 北畠恵子
- 家守の歩み 臨床心理士 石井里美
- カウンセリングについて思うこと 臨床心理士 福嶋裕子
- 生活共同体としてのデイケア 臨床心理士・精神保健福祉士 大丸一成 精神保健福祉士 結城彩乃
- 緩やかな病棟 看護師 依田ひろ美/野本 勉
- 体を張る心理士の卵 看護助手 須賀雅浩
- 診療所のお母さん 厨房 高橋絹子/辻井なつ子
- 医薬分業について わかば薬局 岩永和巳
- 第三章 上尾の森診療所における臨床 ―― 医師の立場から 佐藤順恒
-
- 第一節 開業当初の臨床実践
- 外来治療
- 入院治療
-
- 第二節 現在の臨床実践
- 外来診療
- デイケア
- 小児精神科外来
- 入院治療
- 主婦の「うつ病」
- 「人格障害」―― 特に思春期境界例
- 摂食障害
- 引きこもり ―― 家庭内暴力
-
- 第三節 私の臨床についての考え方
- 上尾の森診療所までの道程
- 疾病・治療モデル ―― こころの病気と治療
- 上尾の森診療所における「臨床実践論」
-
- 第四節 上尾の森診療所の周辺
- あげお福祉会
- 子どもの問題
- 埼玉精神神経科診療所協会
-
- 第五節 医師として、経営者として、人として
- 経営について
- 人として ―― 地の利と時の運
- 第四章 上尾の森診療所における臨床 ―― 心理士の立場から 山田 均
- 常識的な社会人であること
- 「常識」についてもう少し考えてみる
- 心理臨床を考えてみる
- 臨床理論について考えてみる(一)
- 臨床理論について考えてみる(二)
- 謙虚に「医学」について考えてみる
- 心理臨床に対して「腹をくくる」こと
- 心理臨床における「姿勢」について
- 心理臨床における作法やマナーについて考えてみる
- 経営者として上尾の森診療所の活動を考えてみる
-
- エピローグ 佐藤順恒 山田 均
-
- おわりに 山田 均
《著者紹介》
佐藤順恒(さとう じゅんこう)
医療法人社団順風会上尾の森診療所院長。
1949年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科診療所などの勤務を経て、1994年開業に至る。
山田 均(やまだ ひとし)
医療法人社団順風会上尾の森診療所副院長、事務長、心理士。
1961年、埼玉県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士前期卒業。主に医療領域で心理士として勤務してきた。著書に、「カウンセラーの仕事」(朱鷺書房・共著)「心理学と社会4」(ブレーン出版・共著)ほか。