現代社会とメンタルヘルス《電子書籍版》
包摂と排除
現代の障害者福祉やメンタルヘルスの問題を考えるうえで「包摂」と「排除」が有効なキーワードとなっている。本書は、排除を最小化して包摂を最大化したいという強い思いから、多様な職種と活動の場をもつ25人の執筆陣が、精神医療と心理臨床の領域で支援のネットワークからこぼれがちなテーマを取り上げて解説。ひきこもりやオタク、ホームレス、性犯罪被害、自然災害、薬物やギャンブルなどの依存症、DV・児童虐待、高齢犯罪者や外国人犯罪者など、現代社会の周縁にある現象に光を当て、排除されやすい人々を包摂へと導く道筋を探る。現場の発想を起点とした本書から理解と解決の糸口が得られる。
中谷陽二 責任編集
斎藤環、
森田展彰、
小西聖子 編集
小池純子、菊池春樹、渡邊敦子、大江由香、種田綾乃、池田朋広 編集協力
データ形式:フィックス
(画像形式)定価
3,960 円(本体3,600円 + 税)
Contents
序にかえて(中谷陽二)
第1章 社会へのメッセージとしての孤立
ひきこもりと社会(斎藤環)
排除の臨床としてのハウジングファースト(熊倉陽介,久保田健司)
仮想現実の世界(田中速)
アニメは何を語るか(山上尚彦,斎藤環)
マインドフルネスとのつきあいかた─善も悪も─(簑下成子)
優生学─選良と排除の間─(中谷陽二)
変態心理学─明治から昭和初期までの催眠術受容史,精神分析受容史詳述─(安齊順子)
第2章 トラウマ・被害者
性犯罪被害時の回避的対処,及びその直後の心理について─抵抗できない,怒りを持てない─(小西聖子)
知的発達障害(精神遅滞)のある犯罪被害者(伊藤きょう子)
自然災害による傷つきと排除(種田綾乃)
包摂につながる学校精神保健教育とは(小塩靖崇)
ラベリングとスティグマ─自閉スペクトラム症を中心に─(岡坂昌子,小池純子)
第3章 社会現象としての依存症
薬物依存が社会に与える損傷(ハーム)を最小化するためには?─「ダメ,絶対」から回復支援へ─(森田展彰)
政策としての依存症対策と地域での支援─薬物依存症を中心に─(渡邊敦子)
物質依存症の再使用リスク評価─研究とアセスメントをつなぐ対話的視点─(大谷保和)
依存症が深刻化するプロセス─ギャンブル障害を中心に─(新井清美)
様々な依存症をどう捉え,治療するか─性依存症を例に─(大江由香)
第4章 家庭内葛藤
「助けて」が言えない人への支援─家庭内暴力の被害者の心理教育を中心に─(森田展彰)
「排除と包摂」の視座から見たDV問題(妹尾栄一)
児童虐待を受けた子どものアタッチメントとケア(徳山美知代)
養育困難な親─排除の構造と養育の関係─(菊池春樹)
第5章 現代社会の生きにくさと犯罪
精神医療改革と触法精神障害者─包摂か排除か─(中谷陽二)
超高齢化社会における高齢犯罪者─要因と課題を抱えた高齢者との共生社会を目指して─(染田惠)
性犯罪者の再犯予防と社会復帰─新しい「包摂」のために─(小畠秀吾)
非行少年─自立と共生に向けて─(大江由香)
外国人の生きにくさと犯罪(伊藤きょう子)
子どものいる女子受刑者のその後─母親としての生きづらさを抱えての更生─(望月明見)
精神障害者が法に触れるとき(小池純子)
執行を待つ人々─死刑とメンタルヘルス─(中谷陽二)
あとがきに代えて─誰も一人ぼっちにしない,ということ─(斎藤環)