本書は教養人に与うる書である。心という実体は実在しない。心が痛むことはない。心が躍ることはない。読者は、このような解釈に戸惑い、心の正体に驚き、やがて首肯する。それは高次教養レベルへの自然な歩みである。
漱石は心ということばを使わずに『こヽろ』が書けたかもしれない。なぜなら心は不要だから。確かに心は魅力的なことばだ。だが、悩める教養人が重苦しくなった心と呼ばれる外套を脱ぎ捨てると、そこに素朴な人間が出現する。その時、心が、否、体が軽くなる。
話題は愛、比喩、心と体、感情、幸せ。教養を刺激しながら、心が神出鬼没する世界へ、ボンボヤージュ。
山田純 著
データ形式:フィックス
(画像形式)
定価
1,980 円(本体1,800円 + 税)
Contents
第1章 愛は移ろう
第1節 去りゆく愛
第2節 生まれ出づる愛
第3節 愛の拡がり
第2章 ことばと比喩と心
第1節 ことばと心
第2節 心的辞書は存在しない
第3節 比喩の中の心
第4節 漱石『こヽろ』の中の「心」
付 録 刺激と反応の連鎖
第3章 心と体
第1節 人は心と体からできているのか
付 録 根強い二元論
第2節 一遍上人の歌の謎
第3節 行動主義者と認知主義者の対話
付録1 「我思う,ゆえに我在り」と不滅の心
付録2 心だけの世界 唯心主義
第4章 感情をとらえる
第1節 感情はいくつあるか
第2節 感情は行動である
第3節 知能指数 IQより感情知能 EIか
付 録 痛みと心と体
第5章 幸せをたずねて
第1節 幸せの正体
第2節 禍福はあざなえる縄のごとし
第3節 幸せを測る