精神科臨床の自由《電子書籍版》
記述・暦・病跡学
著者のライフワークである「記述」、および「暦時間」構造について論じた著。オノマトペや共有時空間に注目した音楽療法士へのインタビュー、正岡子規や岡本太郎の作品を通じた臨床論、さらに総論を展開することで深く「記述」について掘り下げる。また既存の時間論から脱却し、生活感覚・臨床感覚に根差した「暦時間」構造を見出した著者は、独自のスタイルで現実の人物を読み解き、より豊かな臨床の理解を目指す。長年の臨床と研究の果てに改めて回帰した著者自身の原点と、新たに発見した視点とを包括し、著者ならではの自由な筆致で記した一冊。
Contents
第Ⅰ部 記述する
音楽療法士がきりひらく時空間/正岡子規の「写生」と精神科臨床における記述/太陽の塔と精神科臨床―緊張病性エレメントを超えて―/健康診断にやってくる身体
第Ⅱ部 記述をつかまえる
臨床が記述を生み記述が臨床を生む/精神科臨床における記述の本領/記述によって開かれる精神療法の展開点/精神症状の「記述」ということ/精神科臨床のツーリズム化と記述の転変
第Ⅲ部 暦をつかまえる
アプド・フェストゥムとしての暦時間/患者の歴史を巡って 歴史フェストゥム論と暦時間/庄野潤三のサルトグラフィ/統合失調症の健康生成を考える
第Ⅳ部 エッセイ
愛好する精神/少し異なる色あいの糸/見学者の作法と「書く」作法/白い空と白い紙:松本雅彦先生をしのんで