精神科リエゾンは今後、社会や病院内のニーズの増大に伴い、さらに発展していくものと予想される。そのため、精神科リエゾンの知識と経験は、より多くの精神科医にとってさらに重要なものとなりつつある。また、新卒後臨床研修制度では、精神科が必修科目に選定されたが、プライマリケア医の能力向上のためにも精神科リエゾンの知識と経験は非常に有用である。本増刊号は、日本の精神科リエゾンの第一線で活躍する執筆陣を揃え、現時点における精神科リエゾンのガイドラインとして最良・最高の内容を誇る。精神科リエゾンの現場のみならず、精神医療に従事するすべての人に必ず役立つガイドライン。
編集:「精神科治療学」編集委員会 B5判 並製 324頁 通巻210号
発刊にあたり | 堀川直史,加藤 敏 |
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第 I 章:リエゾン精神医療でよく見る精神症状とその対応 | ||
1. | 物忘れが多く,部屋を間違える(痴呆) | 大久保 拓,高橋 正 新井平伊 |
2. | 何か見えるといって徘徊する(せん妄) | 中村 満,一瀬邦弘 竹澤健司,益冨一郎 島 陽一 |
3. | 精神科リエゾン・コンサルテーションにおける幻覚・妄想 ―「何か見える(幻覚)」「悪口を言われている,付け狙われている(妄想)」― |
大塚公一郎 |
4. | ハイテンションになり,しゃべりまくる(躁状態) | 日野原 圭 |
5. | 怒りっぽく,攻撃的である | 小林聡幸 |
6. | 沈み込んでいる(抑うつ) | 野村総一郎 |
7. | 死ぬのではないかと不安におののいている,息をハアハアしている(不安) | 河瀬雅紀,前林佳朗 津田 真,成本 迅 國澤正寛,吉田卓史 土田英人,福居顯二 |
8. | 訳のわからないことを言って,暴れている(苛立ち・衝動的な言動) | 河瀬雅紀,岩重達也 前林尚絵,國澤正寛 太田好美,福居顯二 |
9. | ぼーっとして,戸惑っている(困惑) | 兼本浩祐,深谷修平 |
10. | 動かず,何も言わない(昏迷) | 大澤卓郎 |
11. | 体の不調を執拗に訴える(心気症状・身体化) | 向井泰二郎,人見一彦 |
12. | 体の痛みを強く訴える(疼痛) | 岡島美朗 |
13. | 手首・前腕を切った,大量に薬を飲んだ(自殺企図,自殺念慮) | 鈴木博子,大久保善朗 |
14. | 本当の症状,疾患を偽装する人々(虚偽性障害,詐病) | 西松能子 |
第 II 章:リエゾン精神医療でよく見る問題行動とその対応 | ||
1. | 医療拒否 | 松木秀幸 |
2. | 接触が深まらない | 西村勝治 |
3. | セルフケアを守れない | 堀川直史 |
4. | 患者-医療者間のトラブルとその対策 | 佐伯俊成,田妻 進 |
第 III 章:リエゾン精神医療に必要な身体疾患患者の心理の理解 | ||
1. | 対象喪失と障害受容―とくにモリス・シュワルツの生き方から学ぶ― | 平山正実 |
2. | 慢性疾患患者の心理 | 春木繁一 |
3. | 患者への情報提供―がんの告知を中心に― | 松島英介,松島雅子 |
第 IV 章:精神症状・問題行動の身体的な原因 | ||
1. | 脳疾患 | 向井泰二郎,人見一彦 |
2. | 脳以外の身体疾患 | 向井泰二郎,人見一彦 |
3. | 一般治療薬による精神障害 | 木下玲子,宮岡 等 |
第 V 章:リエゾン精神医療における治療的対応 | ||
1. | 精神科への紹介―他科の医療者との連携を深めるために― | 堀川直史 |
2. | 診療への導入―重症身体疾患患者と何をどのように話し合うのか― | 堀川直史 |
3. | コンサルテーション・リエゾン精神医療における支持的精神療法 | 明智龍男 |
4. | リエゾン精神医療における認知療法 | 中川敦夫,大野 裕 |
5. | リラクセーショントレーニング―自律訓練法,漸進的筋弛緩法,バイオフィードバック法,EMDR― | 小川栄一,志和資朗 佐々木高伸 |
6. | リエゾン精神医療における精神分析の視点 | 姉歯一彦 |
7. | リエゾン精神医療における音楽療法 | 山下晃弘,加藤 敏 |
8. | リエゾン精神医療における家族アプローチ | 渡辺俊之 |
9. | リエゾン精神医療における集団療法 | 保坂 隆 |
10. | 他科の医療者との協力,リエゾンカンファレンス | 佐野信也,菊地秀明 |
11. | 家族に対するサポート―家族面接のポイント― | 佐伯俊成,萬谷智之 大園秀一,山脇成人 |
12. | 身体疾患患者に向精神薬を使用するときの留意事項 | 工藤謙太郎,尾鷲登志美 上島国利 |
13. | 身体疾患患者における修正電気けいれん療法 | 竹内 崇,本橋伸高 |
第 VI 章:個々の身体疾患・診療場面における患者の心理・精神症状とその対応 | ||
1. | 脳外傷・脳腫瘍・その他の脳外科疾患―脳外傷を中心に― | 先崎 章 |
2. | 脳血管障害,パーキンソン病,ハンチントン病,その他の神経内科疾患 | 木村真人,下田健吾 |
3. | 心筋梗塞に伴ううつ病について | 尾崎紀夫 |
4. | 慢性閉塞性肺疾患・その他の呼吸器疾患 | 佐藤 武,木道圭子 |
5. | 腎疾患と透析 | 天保英明 |
6. | 糖尿病 | 山家邦章,加藤 敏 |
7. | 全身性エリテマトーデス(SLE) | 恩田浩一,加藤 敏 |
8. | 産婦人科疾患・出産 | 中山和彦,仲條龍太郎 |
9. | 脊髄損傷・四肢切断 | 岸 泰宏 |
10. | 重症熱傷 | 川本恭子 |
11. | 皮膚科疾患 | 加茂登志子 |
12. | HIV感染症における精神障害と心理社会的ストレス | 赤穂理絵 |
13. | がん医療 | 清水 研,秋月伸哉 岡村優子,嶋本正弥 中野智仁,内富庸介 |
14. | 臓器移植(ドナー・レシピエント) | 山下 仰 |
15. | 救命・救急センター | 堤 邦彦 |
16. | ICU―せん妄に対する非定型抗精神病薬の有効性と使用法について― | 小森 薫,小森実穂 |
17. | 緩和ケア―霊的・実存的苦痛に対するケア― | 森田達也,井村千鶴 栗原幸江,小澤竹俊 河 正子,田村恵子 村田久行 |
18. | 小児におけるリエゾン精神医療 | 稲垣卓司,斎藤千都香 宮岡 剛,堀口 淳 |
19. | 精神疾患患者の手術 | 桑原達郎,日高 真 |
20. | 悪性症候群,セロトニン症候群,横紋筋融解症 | 西嶋康一 |
21. | 低ナトリウム血症,水中毒,SIADH | 塩田勝利,西嶋康一 |
22. | 摂食障害患者の身体的問題 | 堀田眞理 |
第 VII 章:医療者のメンタルヘルス | ||
1. | 医療者のメンタルヘルスケア | 村岡真理 |
2. | リエゾン精神科診療のストレス構造とメンタルヘルスケア | 佐野信也,菊地秀明 |
事項索引 |