余命宣告を受け、死に直面したセラピストが、かつて「治療に失敗した」人物をセラピーグループへと迎え入れる。だがそれは、人間嫌いで知られるショーペンハウアーの生き写しとも言える人物だった──。過去の因縁が絡まりあうグループの中で、メンバーたちは死、愛憎、性、プライド、そして生の哲学について語り合いながら、それぞれの内面へと向かっていく。そのたどり着いた先で彼らが見出したものとは──。
本書は、実存療法、集団療法の専門家として、また哲学への造詣が深いことでも知られるヤーロムが、専門書では描ききれなかったというセラピー体験の本質を小説として具現化したものである。
心理学・精神医学の学生や専門家にとってはグループセラピーの教科書として活用でき、また、自己探究に関心のある一般読者にとっても、期待を裏切らない優れたセラピー小説となっている。親密で、危険で、思いやりに満ちた、セラピストとクライアントの関係性に、誰もが釘づけになるにちがいない。
アーヴィン・D・ヤーロム 著
鈴木孝信 訳
定価 2,970 円(本体2,700円 + 税) 四六判 並製 540頁
ISBN978-4-7911-1118-3〔2023〕