生まれつきの気質、成育環境、社会状況など、様々な要因が絡んでパーソナリティ障害を発症すると考えられます。しかし、原因を突き止めることが、必ずしも治療に結びつくとは限らないことも念頭に置くべきでしょう。
複数の要因が絡む
パーソナリティ障害を発症する原因は一つではありません。本人が生まれつき持っている気質、成育環境、親や周囲の接し方、時代特有の価値観や考え方など、様々な要素が関連しているのです。このことは、あらゆるパーソナリティ障害の発症に多かれ少なかれ関与しているのですが、パーソナリティ障害の種類によって、強く関与する要因には違いがみられます。例えば病前性格型のパーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害の場合、生まれつきの気質が関わる割合が大きいのですが、未熟性格型のパーソナリティ障害では、成育環境や親子関係のあり方などに強く影響を及ぼすと考えられています。
生まれ持った気質
人は誰でも、生まれつきながらの固有の気質を持っています。
個人のパーソナリティが形成されるまでに、発達過程での親子関係などの影響も受けますが、基盤となる固有の気質は生まれつきのものなのです。生後間もない乳児でも、おとなしい子や活発な子、神経質な子や無頓着な子もいるのです。このような生まれつきの気質は、その人のパーソナリティの基盤になるものですから、その偏りがパーソナリティ障害の元になっている場合もあります。
育てられ方の影響
自我が芽生える幼少期に、養育者にどのように育てられたかということは、パーソナリティの形成に大きく影響を与えます。親から十分な愛情を注がれたか、親子の愛着関係がスムーズに築けたか、虐待やネグレクトを受けなかったかといったところが重要なポイントとなります。
幼少期に、親との愛着関係をしっかり築かれていない、または、主体性を形成し損なうと、パーソナリティが不安定になりがちで、成人してからも、些細なことで不安になったり、傷つきやすくなったりするのです。
遺伝子の関与
パーソナリティ障害には、遺伝的な要因があることが指摘されています。全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児と、遺伝子が多少異なる二卵性双生児を比較し、双子の兄弟のどちらともパーソナリティ障害になる確率を調査した結果、一卵性双生児の方が確立が高いことがわかりました。このことは、パーソナリティ障害の発症に、なんらかの遺伝子が関与していることを裏付けています。
パーソナリティ障害の関連遺伝子が幾つかあり、それを受け継いだ場合、パーソナリティ障害を発症しやすくなるということです。
ただし、親がパーソナリティ障害であれば、子どもも必ずパーソナリティ障害になるというほど、強い因果関係があるわけではありません。遺伝のしやすさであれば、糖尿病や高血圧のほうが遺伝子の関与が大きいといわれています。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本