2016年8月アーカイブ

双極Ⅰ型と双極Ⅱ型の違い

 前回説明した双極性障害のⅠ型とⅡ型の特徴について、下表にまとめました。


            .1 双極Ⅰ型と双極Ⅱ型の違い

 

双極Ⅰ型

双極Ⅱ型

躁状態が続く期間

1週間以上(または期間に関わらず、入院治療が必要な場合)

4日間以上

躁の症状

1.    気分の高揚、時には怒りっぽくなる

2.    自尊心の肥大・誇大

3.    睡眠欲求の減少

4.    普段より多弁になり、しゃべり続けようとする

5.    考えやアイデア、話題などが次から次へと浮かび上がる

6.    注意散漫

7.    活動性が高まり、じっとしていられない

8.    あとで困った結果になることが分かっているのに、浪費や投資、性的逸脱行動に走る

うつの症状

憂うつな気分、食欲不振、不眠、悲観的、思考力の低下、意欲・関心の低下、自責感、自殺企図など

診断のつきやすさ

典型的な躁状態、うつ状態が現れるため、比較的診断がつきやすい

軽い躁状態のため、周りから気づかれにくく、診断もつきにくい

受信者の推移

近年、減少傾向にあり、目立たなくなっている

近年、増加傾向にある

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

 

双極性障害とパーソナリティ障害

 循環病質を基にしたパーソナリティ障害と深く関わりのある躁うつ病(双極性障害)について説明していきます。一部の双極性障害は、パーソナリティ障害と重なる部分が大きいようです。

 

双極性障害とは

双極性障害とは、基本的には、躁状態とうつ状態の2つの病態を持つ病気のことで、うつ状態だけの「大うつ病」とは異なります。

 生涯有病率は、0.3%前後で、大うつ病の830%と比較するとかなり少ないですが、診断がついていない軽い双極性障害も含めると、実際の患者数はもっと多いといわれています。

 

躁状態とうつ状態

 躁状態とは、気分の異常な高揚が続く状態をさします。脳の働き活発になったように感じられ、睡眠を取らずに終日活動を続けたり、アイデアがどんどん浮かんできたりします。また、自分にはできないことなど何もないと気が大きくなり、場合によっては破壊的な行動に移る場合もあります。

 うつ状態とは、気分の落ち込みが激しく、活動が低下した状態をさします。意欲や関心が失われ、終日塞ぎ込んで食欲も低下します。自分はダメな人間だと思い詰め、希死念慮(死にたいという思い)を起こすこともあります。

 双極性障害ではこの二つの病態が交互に繰り返したり、混ぜ合わさったりします。循環病質の人は、双極性障害になりやすい因子を持っているといえます。ですが、循環病質の人すべてが双極性障害になるとは限りません。その人の性格や周囲の環境や人生での経験などが複雑に絡み合って発症するのです。このことから、実際に双極性障害に移行する人はごく一部に限られます。

 

双極Ⅰ型と双極Ⅱ型

 双極性障害には、病態の重いⅠ型と比較的軽いタイプのⅡ型があります。

双極Ⅰ型は、重い躁状態とうつ状態を繰り返す病態で、うつの違いが明確です。前者の時は、投資やギャンブルなどで多額の金銭を浪費したり、性的逸脱行為に走ったり、攻撃性が増して暴力行為に発展することもあります。このようなことから、生活が破綻してしまう場合もあります。

双極Ⅱ型の場合、躁状態の時は、普通よりちょっとテンションが高いという程度のため、本人や周囲の人にも異常が気づかれにくいのです。しかし、大きなトラブルもないまま、精神活動エネルギーが消耗していき、疲れやすくなると気分が落ち込んでうつ状態になります。

最近、双極Ⅰ型の患者数は減少傾向にありますが、反対に双極Ⅱ型の患者数は増加傾向にあるようです。双極Ⅱ型では、躁状態の時には誰も病気に気づかず、うつ状態に陥って本人が苦しいと感じた時にはじめて医療機関を受診する場合が多いようです。

 

適切な治療を受ける

 サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害は、双極Ⅱ型の病態と共通点が多く、両者は非常に関連の深い疾患だと考えられています。

 受診した患者さんを1、2度問診しただけでは、パーソナリティ障害か、双極Ⅰ型なのかの判断はすぐにはつきません。1人1人の患者さんに、より適切な治療法を見つけるために、じっくりと正確な診断を行う必要があるのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

循環病質とパーソナリティ障害の関係

 前回の復習を兼ねて、循環病質とパーソナリティ障害の関係をおさらいします。

 

循環病質(サイクロイド)の人が...

「社交的で親しみやすく、意欲的・活動的に物事に取り組むが、寡黙で気弱な側面もあるタイプ」

1.    満たされない成育環境下におかれた場合...

→サイクロタイパル・パーソナリティ障害に罹患しやすい

(不安定な気分、暴力やアルコール依存、自傷などの衝動行為がある)

上記の障害に対して適切な治療をせず放置した場合...

→双極性障害に罹患する可能性がある

(躁状態とうつ状態が交互に、或いは混合的に表れる病気)

2.    人間関係のトラブルや社会生活のつまずきが度重なった場合...

→サイクロイド・パーソナリティ障害に罹患しやすい

(不安定な気分、心身不調、抑うつの症状がある)

といった方向に移行する場合があります。

 

最近の「うつ病」事情

 ここ数年、医療機関を訪れるうつ病患者の病態に大きな変化がみられるようになってきています。今までは、責任感が強く生真面目な中高年に発症しやすかったうつ病が、若者の間で急増しているのです。彼らは従来のうつ病患者とは異なり、自責の念に駆られるのではなく、責任を他に求め、職場で症状が重くなる半面、休日には症状がとれて趣味や娯楽に生き生きと興じるのです。単なるなまけ癖のようにも見えますが、うつ病の診断基準と比較すると、診断基準を満たしているのです。

 このようなうつ病患者は、従来の薬物療法が効かない場合が多く、病態を詳細に確認すると、うつの合間に軽い躁状態を引き起こしている場合もあることがわかってきています。一時期忘れられた躁うつ病を見直す必要があるのではないかと指摘する精神科医も増加傾向にあるのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

このアーカイブについて

このページには、2016年8月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2016年7月です。

次のアーカイブは2016年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

home

家族会掲示板(ゲストプック)

家族会 お知らせ・その他

本のページ