従来のパーソナリティ障害に加えて、最近循環病質を基にしたパーソナリティが目立ってきています。基本的には社交的・活動的なタイプなのですが、気分変動が起こりやすい特徴を持っています。
見過ごされてきた障害
循環病質とは、ドイツの精神科医クレッチマーが1920年代に提唱した病前性格の一つなのです。社交的で明るく、ユーモアがあり親しみやすい性格であるのに、人間関係でトラブルが生じると些細なことで落ち込んだり、イライラしたりする傾向があります。クレッチマーは、循環病質を躁うつ病に進展しやすい性格(躁うつ病の病前性格)と位置付けたのです。しかし、循環病質に対して、その後の精神科領域では注目されることはなかったのです。アメリカ精神医学会やWHO(世界保健機関)が作成した診断基準や疾病分類でも循環病質は障害としても疾患としても取り上げられていません。パーソナリティ障害の分類にも循環病質のパーソナリティは含まれていないのが実情です。
循環病質から移行しやすいといわれている躁うつ病に対しても、一時期、患者の存在が目立たなくなったのです。社会変容の過程でストレスが原因で発症しやすい大うつ病(気分が沈み、関心や意欲が低下するタイプのうつ病)の患者が増加し始めたため、大うつ病患者が極端に取り上げられるようになったのです。このことから、うつ病といえば大うつ病のことを指すことが一般化され、躁うつ病はあまり注目されなくなったのです。
循環病質を基にした2つのパーソナリティ障害
しかしながら、最近、循環病質を基にしたパーソナリティを持つ人が、社会生活でつまずいたり、トラブルになったりする事例を見かけるようになったのです。
こういった人々を適切に治療せずに放置しておくと、症状が悪化し、社会でのトラブルや摩擦が大きくなり、生活や人生を破綻させたり、躁うつ病に進展してしまう恐れがあります。
こういった現状から、循環病質=サイクロイドを基盤にしながら、人格形成が未熟なパーソナリティをパーソナリティ障害の一つに含め、サイクロイド・パーソナリティ障害と呼ぶことにします。サイクロイドの傾向のある人に対して症状が進行していない初期段階に適切な治療や支援を行うべきだと牛島先生は述べています。
また、循環病質を基に、社会との接触を失ったような障害を持った人も見受けられます。これをサイクロタイパル・パーソナリティ障害(循環病質型パーソナリティ障害)と呼んで、それぞれパーソナリティ障害に位置付けています。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本