パーソナリティ障害と症状が似ている障害や合併しやすい障害・疾患もあります。診断の際には、患者さんの根本的な問題を見極め、合併障害との関連も考慮する必要があります。
うつ病(大うつ病・気分変調性障害)
パーソナリティ障害全般に、うつに似た症状が起こる可能性はありますが、特に、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害では、うつ病を合併しやすいようです。
うつ病の一般的な症状は以下の通りです。
① 抑うつ気分
② 興味・関心の喪失
③ 食欲低下・体重減少
④ 睡眠障害(不眠など)
⑤ 無気力・活動の低下
⑥ 疲労・倦怠感
⑦ 自分に対する無価値感、罪悪感
⑧ 思考力・集中力の低下
⑨ 希死念慮
上記のような症状は、元々あるパーソナリティ障害により、人間関係につまずいたり、仕事がはかどらなくなったりした結果、生じることがあります。
双極性障害
うつ病と躁状態の両方を示す障害で、従来、躁うつ病と呼ばれてきました。気分が高揚し、常に高いテンションを保ちながら意欲的に活動するのですが、1つのことにじっくり取り組むというような感じではなく、興味の対象が転々としたり、話題も飛びやすくなったりします。イライラしやすく、エネルギーが怒りに向けられることもあり、トラブルの元になったりもします。
双極性障害は、サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害と関連が深く、これらのパーソナリティ障害から進展することもあるのです。また、軽い躁状態が続くタイプの双極Ⅱ型の場合、サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害と似たような症状を示すため、鑑別する必要があるのです。
統合失調症
妄想性パーソナリティ障害、スキゾイド・パーソナリティ障害、スキゾタイパル・パーソナリティ障害は、統合失調症に近い性格であり、統合失調症に移行しうるパーソナリティ障害なのです。
統合失調症とは、思考・情動・意欲などの人格に全般的に障害が起こる精神疾患です。妄想や幻覚、奇行が現れる陽性症状と、感情鈍麻、無欲、社会的孤立などの陰性症状があり、病型により症状の現れ方が異なります。
パーソナリティ障害は、統合失調症の診断基準を満たさないことが条件なのですが、近縁疾患であるため、鑑別が必須なのです。
不安障害(パニック障害など)
不安障害とは、不安な気持ちが基で様々な身体症状を起こす障害です。不安障害の中には、社交恐怖(集団内で他人の注目を浴びることに恐怖を感じ、社会参加を避ける)、パニック障害(動悸、息切れなどの不安発作が反復して起こる障害)などが含まれるのです。
もともとあるパーソナリティ障害のために、人間関係や社会生活に支障が生まれると、不適応が起こり、不安障害を合併しやすくなるようです。
引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012年1月10日
文責:吉本