2016年11月アーカイブ

パーソナリティ障害と関連する障害1

 パーソナリティ障害と症状が似ている障害や合併しやすい障害・疾患もあります。診断の際には、患者さんの根本的な問題を見極め、合併障害との関連も考慮する必要があります。

 

うつ病(大うつ病・気分変調性障害)

 パーソナリティ障害全般に、うつに似た症状が起こる可能性はありますが、特に、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害では、うつ病を合併しやすいようです。

 うつ病の一般的な症状は以下の通りです。

    抑うつ気分

    興味・関心の喪失

    食欲低下・体重減少

    睡眠障害(不眠など)

    無気力・活動の低下

    疲労・倦怠感

    自分に対する無価値感、罪悪感

    思考力・集中力の低下

    希死念慮

 上記のような症状は、元々あるパーソナリティ障害により、人間関係につまずいたり、仕事がはかどらなくなったりした結果、生じることがあります。

 

双極性障害

 うつ病と躁状態の両方を示す障害で、従来、躁うつ病と呼ばれてきました。気分が高揚し、常に高いテンションを保ちながら意欲的に活動するのですが、1つのことにじっくり取り組むというような感じではなく、興味の対象が転々としたり、話題も飛びやすくなったりします。イライラしやすく、エネルギーが怒りに向けられることもあり、トラブルの元になったりもします。

 双極性障害は、サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害と関連が深く、これらのパーソナリティ障害から進展することもあるのです。また、軽い躁状態が続くタイプの双極Ⅱ型の場合、サイクロイド・パーソナリティ障害やサイクロタイパル・パーソナリティ障害と似たような症状を示すため、鑑別する必要があるのです。

 

統合失調症

 妄想性パーソナリティ障害、スキゾイド・パーソナリティ障害、スキゾタイパル・パーソナリティ障害は、統合失調症に近い性格であり、統合失調症に移行しうるパーソナリティ障害なのです。

 統合失調症とは、思考・情動・意欲などの人格に全般的に障害が起こる精神疾患です。妄想や幻覚、奇行が現れる陽性症状と、感情鈍麻、無欲、社会的孤立などの陰性症状があり、病型により症状の現れ方が異なります。

 パーソナリティ障害は、統合失調症の診断基準を満たさないことが条件なのですが、近縁疾患であるため、鑑別が必須なのです。

 

不安障害(パニック障害など)

 不安障害とは、不安な気持ちが基で様々な身体症状を起こす障害です。不安障害の中には、社交恐怖(集団内で他人の注目を浴びることに恐怖を感じ、社会参加を避ける)、パニック障害(動悸、息切れなどの不安発作が反復して起こる障害)などが含まれるのです。

 もともとあるパーソナリティ障害のために、人間関係や社会生活に支障が生まれると、不適応が起こり、不安障害を合併しやすくなるようです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

 パーソナリティ障害の診断について以下のようにまとめてみました。


診断がつくまでには時間がかかる

本人以外(家族など)の話も参考にする

一定期間における症状の変化の把握が必要(複数回の面接が必要)

症状の似ている疾患・障害が多く鑑別が必要

すぐに診断がつかないこともある

 

不安や心配ごとがあれば、医師に素直に話し、診断に時間がかかる理由を医師にたずねてみましょう。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

パーソナリティ障害の診断

 初診時に、すぐに診断されることはなく、患者さんとの面接を繰り返し、家族の話なども聞きつつ、他の障害や疾患との鑑別を行ったうえで慎重に診断を行っていきます。

 

受診先は精神科・心療内科

 パーソナリティ障害の診断・治療を専門的に行う診療科は、精神科、心療内科などです。

 ただし、これらの診療科がある病院やクリニックでさえ、パーソナリティ障害の専門知識を持ち、治療経験が豊富な医師がいるとは限らないのです。診断・治療過程で、症状に改善がみられなかったり、主治医との信頼関係が築きにくいといった場合、他の医療機関に変えるという選択肢も必要になってきます。

 医療機関の情報については、インターネットなどを活用する方法があります。パーソナリティ障害を専門的に診ることができる医師を探す手助けとなるでしょう。

 

面接により現在の状態をみる

 受診した場合、最初、医師が患者さんに面接を行い、現在困っていること、悩んでいること、気分の状態などを尋ねます。1回の面接だけで患者さんの状態を把握することは困難ですので、診断がつくことはありません。患者さんには何度か足を運んでもらい、一定期間経過を観察しながら、気持ちや考え方に変化がないかどうかも確認します。過去に起こった出来事や幼少期の親子関係についてたずねることもあります。

 更に、本人だけでなく、家族など、患者さんの周囲にいる人の話も参考になります。患者さん自身が自分をどのように捉えているのかということが比較できると、患者さんの家族関係もよく見えてくるのです。

 このように、面接を複数回重ねることで、患者さんの抱えている問題が明らかになり、性格や物の捉え方、行動パターンや偏りも明らかになってくるのです。

 

心理テストを行うことも

 患者さんの話だけで性格や気質を捉えにくい場合、心理テストを行い、患者さんの精神状態やパーソナリティの理解を手助けすることもあります。心理テストには、患者さん自身が記入する質問紙法やロールシャッハのような投影法があります。

*ロールシャッハとは、左右対称のインクのしみがどのように見えるかを患者さんに問い、患者さんの無意識の心理を分析するテスト

 問診や心理テストの結果を十分に吟味し、最後にDSMICD-10などの診断基準に照らし合わせて慎重に診断を下すのです。

 

ほかの疾患・障害との鑑別

 パーソナリティ障害には、うつ病や不安障害、双極性障害、統合失調症など、症状が似通っている近縁障害・疾患があります。これらの障害・疾患との鑑別を行う必要があります。

 また、これらの障害・疾患を合併しているケースや複数のパーソナリティ障害が合併しているケースもあるので、患者さんの病態をよく理解した上で、慎重に診断をつけることが求められるのです。

 

 

引用・参考文献:
「図解 やさしくわかるパーソナリティ障害」 牛島定信著 ナツメ社 2012110

 

文責:吉本

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