2017年10月アーカイブ

家族会の顧問としてご講演いただいている松本俊彦先生の
自傷に関するお話が、読売新聞のコラムに掲載されていますので
皆様にもご紹介したいと思います。
 
 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究サンター
 精神保健研究所  薬物依存研究部 
 部長 松本 俊彦先生

はじめに述べたように、自傷とは10代の若者の1割が経験している
行為です。
その1割の自傷経験者は、早くから飲酒、喫煙を経験し、市販薬の
乱用経験や薬物乱用との交友経験があり、将来の薬物乱用があやぶまれる一群です。

また、拒食や過食、自己誘発嘔吐といった摂食障害な行動を併せ持っていたり、避妊しない性交渉や不特定多数との性交渉といった危険
な性向行動をくりかえしたりする人もいます。

 要するに、生き方全体が「自傷的」なのです。
しかし、その様々な問題行動のなかで最大の自傷的行動は、
何といっても「悩みや苦痛を抱えたときに、誰にも相談しないこと、
人に助けを求めないこと」です。

 だからこそ、自傷について安心して話せる人とのつながりが
とても大切なのです。それは、たとえ、自傷をやめさせることが
できなくとも、その人の自殺リスクを低下させるのには寄与する
はずです。

 そして、最後のお願いです。

もしも自傷する人のサポートに悩んだら、迷わず地域の保健所や
精神保健福祉センターに相談してほしいと思います。
支援者に求められる資質とは、何といっても「人に相談し、
助けを求める」能力ですから。

*補足情報「自殺の現状」
(自殺関連行動を表す語)
♦︎自損
(自分の過失などが原因でけがをしたり損害をうけたりする)
♦︎自殺未遂
(自殺しょうとして、自殺に至らなかったこと)
♦︎自殺企図
(自殺を企てること。自殺しょうとすること)
♦︎自傷
(自分で自分のからだをわざと傷つけることカッター・
 壁で頭を打ちつける・入れ墨・ピアス・やけど など含む)
♦︎自殺念慮(希死念慮)
(自殺を企て実際の行為までに至らない)
♦︎既遂
(誰にも報告せず、完全い死ぬように計画を立て
 それを実行すること)
*BPDの場合、未遂・企図・念慮・自傷を繰り返す。

自殺の原因・動機
1、「健康問題(病気)」1万2,145人
2、「経済・生活問題(貧困)」4,082人
3、「家庭問題」3、641人
4、「勤務問題」2,159人 
5、その他「男女問題」「学校問題」

若年層の死因1位は「自殺」
性別では男性1万6,681人で全体の69、4%

年齢断層別
1位 40代4、069人で全体の16、98%
2位 50代3、979人中 16、6%
3位 60代3,973人中 16、5%
4位 70代3、451人中 14、4%

死因
15歳〜34歳
若い世代で1位が自殺。
これは先進7カ国では日本だけという。
死亡率も他の国に比べて高い。

職業別の自殺状況
無職者
1位 年金・雇用保健等生活者が最も多い
2位 自営業(家族従業者)
3位 失業者
4位 主婦
5位 利子・配当・家賃等生活者
6位 浮浪者
7位 その他の無職者

都道府県別の自殺死亡率
1位 山梨
2位 岩手
3位 秋田
4位 新潟
5位 富山
6位 福島
7位 宮崎
8位 高知
9位 島根
10位 鹿児島

国際的にみた自殺の状況
1位 ロシア
2位 日本
3位 フランス
4位 米国
5位 ドイツ
6位 カナダ
7位 英国
8位 イタリア
*日本は自殺死亡率は男女共に主要国でも高い水準であり、
 女性と男性に比べると男性の死亡率が高い。
*厚生労働省 自殺対策白書(概要)

●パーソナリティ障害での自殺リスクを高める因子
1位 失業
2位 経済的困窮
3位 家族不和
4位 葛藤
5位 喪失体験
自殺リスクを高める心理状況とパーソナリティ
● 不安・焦燥
● 衝動性
● 絶望
● 攻撃性
● 孤立感
● 悲嘆
● 無気力

●統合失調症患者の自殺リスクを高める得意的な危険因子
1位 雇用されていない若年男性
2位 反復する再燃
3位 悪化への恐れ(特に知的能力の高い者)
4位 妄想などの陽性症状
5位 抑うつ症状
自殺が出現しやすい時期
1位 病気の初期の段階
2位 早期の再燃
3位 早期の回復。

●気分障害
1位 持続的な不眠
2位 自己への無関心
3位 症状が重度(特に精神病状を伴ううつ病)
4位 記憶の障害
5位 焦燥
6位 パニック発作
自殺の危険を増大さえる要因
♦︎25歳以下の男性
♦︎発症の早期
♦︎アルコールの乱用
♦︎双極性障害のうつ病相
♦︎混合(躁状態・抑うつ状態)状態
♦︎精神病症状をともなう躁病

●不安障害
 パニック障害
 脅迫性障害
 身体表現性障害
 摂食障害と自殺の関連が報告されている。

●アルコール(アルコール症は自殺のリスクを上昇させる)
アルコール症の自殺と関連する特異的な要因
♦︎ 早期発症のアルコール症
♦︎ 長い飲酒歴
♦︎ 高度の依存
♦︎ 抑うつ気分
♦︎ 身体的な健康状態が悪いこと
♦︎ 仕事の遂行能力が低いこと
♦︎ アルコール症の家族歴
♦︎ 最近の重要な人間関係の途絶または喪失

★「ケアを行なう人に必要な態度」
1、承認・受容・共感
批判的にならない。叱責しない。教条的な説論をしない。

2、傾聴
いかなる状況や相談も真剣に据える。

3、ねぎらい
相談されたことや打ちあけた勇気に対して。

4、支援の表明
力になりたい気持ちを伝える。あいまいな態度はとらない。

5、明確な説明と提案
提案は具体的であること。安易な励ましや安請け合いをしない。

「TALKの原則」
1、誠実な態度で話しかける(TeLL)
2、自殺についてはっきりと尋ねる(AsK)
3、相手の訴えを傾聴する(Listen)
4、安全を確保する(Keep safe)

BPD家族会代表 奥野栄子



 
 

家族会とは

 独りで悩みを抱えこむことなく、
 困っていること、辛いこと、対応、対処方法など
 家族同士が話し合いながら学ぶ場です。
 
 経験してきた家族の話しを参考にしながら、家族同士の学びを
 通して各々の対応を見つけて力をつけてゆきます。
 
 ご家族が自分らしくイキイキと生きることや希望を持つことで
 家族の心の支えとなり、その結果、当時者の回復にも
 大きく貢献できます。
 
 専門家による勉強会はスキルの習得となりますが、
 家族会の本来の目的である家族同士の語り合いを通して、
 日常生活の実践において知恵をつける手がかりとなり
 ご家族自身が力をつけてゆきます。
 
「定例会」に来て私たちと語り合ってみませんか!

 BPD家族会 

家族会の顧問として毎年ご講演いただいている松本俊彦先生の
自傷に関するお話が、読売新聞のコラムに掲載されていますので
皆様にもご紹介したいと思います。
 
 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究サンター
 精神保健研究所  薬物依存研究部 
 部長 松本 俊彦先生

「見える傷」の背後には「見えない傷」がある

自傷という、目に見える傷の背後には、外から見えない
心のなかの傷があります。
実際、自傷をくりかえす人のなかにはつらい記憶を
持っている人が少なくありません。

そうした記憶のなかには、もしかすると本人も覚えていない、
それこそ、「忘れている」ことさえ忘れているような記憶も
あるでしょう。

実は、自傷する人が切っているのは皮膚だけではありません。
皮膚を切るのと一緒に、意識のなかでつらい出来事やつらい感情の記憶を切り離し、「なかったこと」にしているのです。
少なくとも今はそのように切り離しておく必要が
あるのでしょう。

ですから、本人が語り出すまでは解き明かすことを
焦らずに、いまはただ、「見える傷の背後には見えない傷が
ある」と心得ておくだけよいでしょう。


対応のポイント」
●見える傷や言動はとても「派手」なので支援している人達は
 見える部分に着目しやすいということを意識してください。
 
 あえて、見えない本当の傷を見ることを避けているのは、
 実は、ご本人だけではなく、ご家族も避けていることも多いのです。

 なかなか問題解決しない原因を「本人に病識が無いから・病院に行かないから
 ・自分落ち度を認めないから」など、
  本人に問題の責任を押し付ける傾向が強いですが、
  支援やサポートが必要なご本人の辛さと向き合うことが辛く
  ご家族も回避しているケースも実は多いのです。
 
 しかし、「回避する」ことはさほど重要な問題ではなくて、
(問題解決にはなりませんが、辛い時は距離を置くことも必要です)
 回避行動の責任をお互いに擦りつけることが大きな問題となります。
(無意識に問題を擦り付けていることもあり、この場合は厄介です)
 
 さらに、信頼関係が壊れているのにも関わらず、
 繊細な心の傷ついた部分を無理矢理こじ開けることは危険なので
 本人が心を打ち明けるまで待つことも大事です。
 しかし、
「全ては本人次第だから待っている間は何もしなくてよいということでは
 ありません」何故ならば、対人関係とは一方方向ではなく、
 相手がいるからこそなりたっているからです。
 崩壊している信頼関係を取り戻すために何ができるのか?
 いろいろ工夫してみましょう!
 
 また、当時者が信頼を取り戻すことを拒絶しているのであれば、
 家族は淋しい気持ちになりますが、「そっとしておいてあげましょう」。

 最大の問題は「無関心」と「言い訳」です。
 関心とおせっかいは違います。
 自己弁護することと言い訳は違います。
 違いを理解しておきましょう。
 
 相手のことを大事だと思っているだけでは、
 残念ながら相手には伝わりません。
 本人に伝わるような仕方で接してあげることが大切です。

 
 BPD家族会代表 奥野栄子
 
 
 
 
 




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