家族会の顧問として毎年ご講演いただいている松本俊彦先生の
自傷に関するお話が、読売新聞のコラムに掲載されていますので
皆様にもご紹介したいと思います。
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究サンター
精神保健研究所 薬物依存研究部
部長 松本 俊彦先生
「ケアしないこともまた自傷」
自傷した後に、傷の手当てを求めて学校の保健室や職場の医務室、
あるいは医療機関を訪れるのはよいことです。
もしも自傷する人がそのような行動をとったなら、「よくやったね」
「頑張ったね」などと、ねぎらいの言葉をかけるべきです。
自傷とは、単に自分を傷つけることだけを指すのではなく、
その傷をケアしないことも含めた行為なのです。
したがって、自傷後に傷の手当てを求めることは、「反・自傷的行動」
〈=自分を大切に行動する行動)として称賛に値します。
その称賛は、「自分を大切に」などといったありきたりな説教より
数百倍効果的でしょう。
それから、自傷したことを告白した場合には、「話しをしてくれて
ありがとう」と返してあげてください。
すでに述べたように、自傷の本質は「誰にも頼らずに苦痛を緩和すること」
にあり、その裏には根強い人間不信があります。それにもかかわらず、
その人が自傷したことを正直に告白したという事実は、脅えながらも
人を信頼しょうと勇気を出したことを意味します。
これもまた、「反・自傷的行動」といえるでしょう。
自傷の告白を穏やかに受け止めてくれる人とのつながりは、
たとえ気の利いたアドバイスなどなくておも、ただそれだけで
治療的な効果があります。
コラム:読売新聞
家族会:「自分を傷つけずにはいられない 〜その理解と対応のヒント〜
*「対応のポイント」奥野からのアドバイス
BPD当時者の場合、攻撃の対象は他人には向くことがありません。
どちらかというと、身近でサポートしている家族・兄弟姉妹・パートナーに
攻撃が向きます。
当時者の暴言が激しいので、「脅えながらも人を信頼し・・・勇気をだして
告白している」という文面に「?」を感じるかもしれません。
しかし、皆さんを激しく攻撃しているからといって、自分の本質を話せているかどうかは別のこととなります。
自分のことがちゃんと話せない・ストレスがピークに達して
爆発する・それから自傷行為にいたる人もいれば、暴言や暴力
につながる人もいます。
支援してくれる身近な人に対して言いたい放題で周囲の人達を傷つけていると
周りからはそのように映っているかもしれません。
しかし、そのようなレッテル張りが実は本人の言動に追い打ちをかけて
しまっている可能性もあるのです。
アドバイスはいりません。
本人の行動を止める必要もありません。
大切なのは、穏やかに受け止めてあげることが大事なのです。
やっていけないことは
見て見ぬ振りをする。
放って置くことが何よりも避けるべき行為なのです。
BPD家族会代表
心理カウンセラー
奥野栄子