2017年8月アーカイブ

家族会の顧問として毎年ご講演いただいている松本俊彦先生の
自傷に関するお話が、読売新聞のコラムに掲載されていますので
皆様にもご紹介したいと思います。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
松本 俊彦先生

「是非をめぐって議論しない」
自傷する人と自傷の是非をめぐって議論するのは、「百害あって一利なし」です。
特に「自分を大事に」とか、「親からもらった大事な身体じゃないか」とかいった、
お決まりの説教も、自傷の当時者には伝わらないでしょう。

そもそも、なぜ「自傷してはいけないのでしょうか。自傷をくりかえす人のなかには、
「自殺しないために」、あるいは、「人に暴力をふるいたい衝動を抑えるために」
切っている人だっているのです。
自殺や暴力に比べて、死なない程度に自分を傷つけるのが、「絶対にいけない」と
いう理由など、ありえるのでしょうか。

それでも、一つだけ確実にいえることがあります。
それは、「今現在ハッピーな人は、わざわざ自傷したりはしない」ということです。
つまり、何かしらつらいこと、しんどいことを抱えているはずなのです。

コラム・読売新聞
家族会「自分を傷つけずにはいられない〜その理解と対応のヒント〜

*「対応のポイント」奥野からのアドバイス
 松本先生がおっしゃっているポイントに注目してください。
「現在ハッピーな人は、わざわざ自傷したりしない・・何かしらつらいこと、
 しんどいことを抱えている・・・」という点です。

私たちは本当に、相手のつらさや、しんどさに着目しているでしょうか?
(できているかどうかではなく、着目するようにしているかどうかを問うています)

たいがい私たちは、当時者さんの表面に表れる言葉尻に注目しているのでは
ないでしょうか?例えば、
当時者さんの激しく周囲を責めることば、自分を正当化する言動ばかりに
着目してしまい、「うんざり」という気持ちになっていませんか?

そうなると、もはや、当時者さんががどう感じているのか?とか、
当時者さんが辛い思いをしているかも?とか、しんどい思いをしているのでは?
というような、感情や思いを理解することに限界を感じてしまうかもしれません。
(もしくは、極端に相手のいいなりになってしまうかもしれません)

人は限界を超えて何かをやろうとすると、余裕が無くなるので、
相手の話しに耳を傾ける余裕は無くなります。
そうすると「是非」をめぐって議論し始めます。
何とか自分のことばを納得させようとしてしまいます。
納得、説得させてもダメだと頭では分かっているけれど、
家族も感情がコントロールできなくなっているので、自分を「止める」
ことがなかなか難しくなります。

でも、多くのご家族はまじめな方が多いので、
自分の限界を認めることを難しく感じている人はとても多いのです。
何とか立ち直らせたいという思いから、家族は一層頑張ってしまいます。

しかし、残念ながら、家族が頑張れば頑張るほどより、
心に余裕が無くなるので話しを聴く余裕はなくなります。
家族は当時者さんを更生させようと必死に「説教」を始めて
本人を「説得」させようとしてしまいます。

当時者さんが怒っているのは、この「是非」「どうか」といった
家族の必死な思いからでることばが、実は、本人を怒らせる引き金に
なってしまっていることが多いのですが、家族はそれに「気づかない」ことが
多いのです。多くの場合、自分は間違ったことは言っていないのに、
「何故、その点について話してはいけないのだろう?」という思考止まりに陥り
前進できません。

そして、同時に、ご本人も、「何故、親は自分の間違いを認めないのだろう?」
と考えて立ち止まったまま、その先を進めずにいます。
親も子供も、「相手に変わってもらうたに思考錯誤しています」
「是非」をめぐって口論になり、そこでぶつかり合い、
認め合うことができずにいるのです。

問題ばかりに心が奪われると、周りをみることができなくなり、
近視眼的になってしまいます。

頑張り過ぎは禁物です。
余計なことを言ってしまいかねませんので(笑)
まずは、自分の心に余裕を持たせるための工夫を捜してください。
心に余裕が持てると、相手の話しを聴きたくないという抵抗感が幾分減少してきます。

何を「言うのか」に注目するのではなく、
相手の考えや気持ちに注目しましょう。

私たちは相手からの「説教を好みますか?」
誰かに「説得してもらいたいと望みますか?」
それとも、自分の辛さをただ聴いて、理解してくれる人を望みますか?
人に話しをじっくり聴いてもらえた時の気持ちはどうですか?

聴いてもらうことを求める気持ちは
相手がBPDだからではなく、「人間」が普通に求める要求です。

自分がしてもらいたいことを、まずは、目の前にいる
子どもやパートナーや家族にしてあげるのはいかがでしょうか?

BPD家族会代表 奥野栄子







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