2021年10月アーカイブ

薬物療法

  薬物療法(向精神薬の使用)は、自傷を行う子どもたちにとってしばしば外来治療の一要素となります。精神科医への紹介は、たいてい個人セラピストからなされます。薬物療法が皆さんの子どもにとって有効かどうか聞きたい人はセラピストに尋ね、精神科医を受診することをお勧めします。どのような薬を勧められるにしろ、そのメリットとデメリット(副作用)についてよく理解してください。最善の方法は、資格を持つ児童精神科医か、子どもの患者を多く診ている精神科医に皆さんの子どもを診せることです。恥ずかしがってはいけません。副作用についてよくわからなければ、何を期待し、どのような心構えをすればいいか、確信が持てるまで質問を続けてください。

  現在、自傷を直接の対象にした薬はありません。しかし感情的な苦悩を軽減し、気分を高揚させ、衝動性を軽減し、さらにこれらの青年期の子どもたちに特徴的な感情の揺れを安定させるために間接的に働く薬は幾つかあります。薬はそれだけで単独で十分であることは滅多にありませんが、子どもがDBTセラピストと治療に取り組むうえで素晴らしいサポートとなるでしょう。

  残念ながら、子どもに処方される向精神薬の多くは子どもに対する厳密な臨床試験を経てきていません。これらの薬が大人に効果があることはわかっていますが、子どもに対して長期的にどのような影響があるかを明言することは本当にできないのです。しかし抑うつや、その他の精神疾患は子どもを無力にさせかねません。臨床場面で、私たちは適応があるときに薬を使用しないと状況をますます悪化させることがあることを経験します。

  次回以降、比較的一般的に用いられている薬について簡単に説明します。皆さんが処方医にどのような質問をしたらいいかを検討する際の、あくまで参考のためのガイドラインとしてください。


次回は「抗うつ薬」を紹介します。

「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著


グループ療法

  一般的な青年期の子どものグループ心理療法では、48人の子どもたちが一緒に、1人か2人のセラピストと定期的に会います。グループには時間制限が設けられるーーたとえば12セッションのみーーこともあれば、グループのメンバーが自分を価値あるものと感じるようになるまで継続されることもあります。グループによっては、現代の米国文化において男子であるというのは何を意味するのか、といったようにテーマを設けることもありますし、あるいは社会的なスキルを教えるといったように特定の目的を定める場合もあります。ほとんどの子どもたちにとってグループ療法はとても役立ちます。なぜなら、彼らは大人よりも同年代の仲間からの方がフィードバッグを受け入れやすいことが多いからです。しかし、自分の問題についてフィードバッグを受けるということは、それがどのようなものであれ感情的に負担のかかる経験であることに違いはなく、青年期の子どもたちのグループにおいても決して例外ではありません。


  高度に構造化され、スキルに基盤を置き、感情表現を制限されたグループは、自傷を行う青年期の子どもたちにとって最も有益なものとなるでしょう。これこそがDBTグループ療法が行おうと努めることです(ときおり、DBTセラピスト以外のセラピストにかかっている子どもたちが、DBTのグループ療法に紹介されることがあります。これは何ら害はありませんが、このような子どもたちは、個人DBTDBTグループ療法の両方を受けないと治療の恩恵を完全には得られないでしょう)。



次回は「薬物療法」をご紹介します。


「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著

DBTを補完する治療

  DBTセラピストは、DBTを支えるために追加治療を勧めることがあります。どのような治療が推奨されようとも、それは当の子どもが自分の感情を管理することで熟達するよう助けることを目的としたものである必要があります。以下に皆さんのセラピストが提案する可能性が最も高い補足的治療について簡単に紹介します。

家族療法
  家族療法は、最もよく処方される追加治療の一つです。これは、家族内の要因が個人の問題を発症させる一因となるという前提に基づいています。これらの要因を同定し改善できれば、その家族システムはそれらを解決する助けをすることができるというわけです。しかしながら、家族療法は、それが有益であればあるほど、強力で挑戦的な感情を呼び起こします。今までに家族療法に参加したことがある方なら、私の言わんとしていることがわかるでしょう。参加したことがない場合は、ちょうどセッションで皆さんの子どもと他の家族の人々と一緒に座り、自傷やその他の敏感な家族の問題について話し合おうとしているところを想像してみてください。家族療法は、自傷を行う子どもに対して彼らが最も甚だしく欠けている能力の一つを用いるよう求めるのです。

  驚くべきことではありませんが、自傷する子どもたちの多くは家族治療を一般的に次の三つの方法で対処します:①まるで死んでしまったかのようにほとんど沈黙して過ごす、②最もありきたりな話題についての話し合いにしか進んで関わろうとしない、③逆上し、飛ぶような勢いで出口のドアへと向かう。

  家族療法を勧められた場合、それをより有効に用いるのに役立つ可能性のある提案をいくつか紹介します。第一に、個人療法と家族療法のそれぞれが治療のタスクとして想定していることは何かを明確に把握してください。そのセッションは家族メンバーが自分自身の感情を表現する、あるいはコミュニケーションの道を拓く機会である、というようなことを聞かされた場合は要注意です――これは原則的には素晴らしい考えですが、制限のない話し合いは、現状では皆さんの子ども(あるいは皆さん)の手に余ることがあります。自宅で制限のない話し合いをするときにいつもめちゃくちゃになってしまうとしたら、セラピストの診察室でうまくいくとはもっと考えにくいでしょう。その一方で、セラピストが治療のタスクを効果的なコミュニケーションと感情調整に必要なスキルを学習し、練習するための非常に構造化された機会として概要を説明した場合には、即座に同意してください。

  第二に、タイミングがすべてです。皆さんの子どもがいくらかの感情調整スキルを発達させる前に家族療法を受けることに果たして意味があるかどうか、考えてみてください。家族療法に参加することは重要ですが、反面皆さんの子どもを混乱させ、帰宅後に自傷することにもなり得ます。このような精神的に負担のかかる話し合いに、メリットはほとんどありません。

  家族療法の代わりに、家族ガイダンスなど、家族への教育に参加する方がより役立つことがあります。一般に、子どもの治療の訓練を受けてきた精神保健の専門家は、親の役に立つために必要なスキルも学んでいます。このようなセッションは、皆さんがよりうまく皆さんの子どもの苦痛に反応し、問題に対する皆さん自身の心配に対処するとともに、子どものセラピストとうまく取り組んでいくことができるような助けとなるでしょう。


次回は「グループ療法」について紹介します。

「自傷行為 救出ガイドブック ―弁証法的行動療法に基づく援助―」 マイケル・ホランダー著

DBTセラピストの見つけ方

  DBTは比較的新しい治療法であるため、トレーニングを受けたセラピストを見つけることは必ずしも容易ではありません。

  皆さんが関わる医療機関や精神保健センターのソーシャルワーカーに、DBTセラピストを知っているかどうか尋ねることができます。時折、心理学者とソーシャルワーカーから成る地域の協会が良い情報源となってくれることがあります。また、皆さんの地元の精神科クリニックや、児童精神科外来を有する病院に尋ねることもできます。

  DBTのセラピストとなってくれそうな人を見つけたら、皆さんが尋ねるべき、ある重要な鍵となる質問があります。

1、そのセラピストは集中トレーニングコースを受けたことがありますか?

2、全体的なコンサルテーション・チームが存在しますか?

3、治療時間外にスキル訓練のためのきちんとした機能が存在しますか?

4、そのセラピストは青年期の子どもに広範囲にわたって取り組んできましたか?

セラピストが集中トレーニングに出席したことがあると非常に有益ですが、そうでないからといって交渉決裂とすべきではありません。しかしこのような場合には、上に挙げた質問の2番目と3番目が皆さんの決断を下す際にいっそう重要となります。


ふさわしいセラピストを選択するためのガイドライン

まず間違いなく、子どもとセラピストとで行われる個人治療が中心的治療計画となるでしょう。

したがって、子どもと皆さんの両方がそのセラピストと良い関係を築き、満足に感じられるようにしてください。皆さんはその人物を信頼し、協力できると感じる必要があります。また、治療前にも治療中にも皆さんの質問に答えてくれる人物である必要があります。しかしながら、そのセラピストと良い関係を持つことだけでは十分ではありません。


理論的志向

セラピストは、治療を導く助けとするための理論を持つ必要があります。自分は特定の理論的志向を持っていない、あるいは自分は「うまくいくことをするだけだ」と言うセラピストには、不安を覚えます。心理学的理論はセラピストが有効で関連のある介入をするために、自分の患者の行動を理解しようとする上で役立ちます。皆さんがDBTセラピストではない人と話をする際には、そのセラピストがどの理論的志向に基づいて自傷を行う子どもたちを理解するのか、尋ねてください。治療を行う上でそのセラピストが用いる心理学的理論が具体的にどのように実践されるか、皆さん自身ができるだけ完全に理解するようにしてください。


学位と経験

私の経験では、学位は、次の事柄と比べたらさほど重要ではありません。


1、セラピストは自傷を行う人々に取り組んだ経験を少なくとも数年間は持っているべきです。

そしてその特定の治療が、子どもの自傷の問題に対してどのように取り組むことになるのかを説明できなくてはなりません。

2、セラピストは青年期の子どもの治療に熟練しているべきです。

3、セラピストは、治療における親の役割と、セラピストと患者間の秘密保持の範囲と限界について明確な考えを持っているべきです。



次回は「DBTを補完する治療」を紹介します。


「自傷行為救出ガイドブック ー弁証法的行動療法に基づく援助ー」マイケル・ホランダー著

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