2011年11月アーカイブ

ゆきさんのお話(3)

 

◎センターでの変化したことや得たもの(2)

・センターでは絶えず褒めてくれる。認めてくれる。
 自分でも気づかない自分を周りが教えてくれて、「いいんだよ」「大丈夫だよ」ということを、何度も何度も言ってくれた。
 許されることがたくさんあり、同年代の仲間と笑いあったり。
 良いときも悪いときも、いつも同じように接してくれる。

 感情に巻き込まれず、時には距離を置いたり、言うべきことは言ってくれる。
 相手を試したりしがちなので、堂々とした態度で接してくれる人は有難い。

・親に対して望まなくなった
 望めば望むほど回復からかけ離れていく。
 親と自分は違う人間であるということを自覚し、自分の人生を歩む。
 求めるものと切り離さなければいけないものがある。
「完璧ではなかったけど、親は親なりに愛してくれた」と見切りをつけ、自分の足で歩く。

 親の望むような自分でいる必要もない。

・感情をコントロールできるようになった。
 辛さがなくなるのではなく、障害はコントロールしながら付き合っていくもの。
 感情を押し殺さず、いい子で居つづけないようにしたい。
 感情や症状を出して、受け止めてくれる環境があると、回復が早い。

・「パーソナリティ障害は人間関係の記憶」だと言われ、安心した。
 記憶を良いものに変えていけばいい。

・スタッフだけでなく、先輩の研修生が支えてくれる。
 研修生は大体1年間入所しており、先輩が新しい人のサポートをしてくれる。
 自立と甘えのバランスが取れている。

 先輩やOBの過去の体験談と今の変化を見聞きすることは、希望が持て、手本になる。
 自分も他の人の世話をすることが、自分にとって良い。
 辛い人たちが集まっているので、共感しやすい。

・一人で本を読んだり、楽器を弾いたり、自分の時間を持ち、人にすがりつくことがなくなった。

(続く)

(文責・稲本)

 

ゆきさんのお話(2)

 

◎センターで変化したことや得たもの(1)

・トラブルは日常茶飯事。
 スタッフに話を聞いてもらったり、当人同士で解決したり、時には諦めたり。
 自分の歪んだ認知に気づいたり、相手を許すことだったり。
 毎日が実践的な治療だった。

・薬をやめられた。
 いつでも話を聞いてくれる人がいて、薬で感情をコントロールする必要がなくなった。
 言いようもない安心感が生まれて、夜も眠れるようになった。
 薬ではなく、人である。

・自分や他人を許せるようになった。
 今までは、自分にも相手にも望むものが大きくて、果てがなかった。
 最低と最高を行ったり来たりしていたが、ニュートラルな考え方になった。
 「仕方ないな」「なるようにしかならない」、相手の都合も考えられるようになった。

 センターにいる人たちは同じような境遇。
 相手を許すことが自分を許すこと。

 今までは要求が強く、相手が応えられないと排除していた。
 相手もかけがえのない存在だと気付く。
 自分を大切にするから人も大切にできる。
 人間関係に一喜一憂しなくなった。

・人と比べることが少なくなった。
 それまでは他人評価第一で、自分の軸が全くなかった。
 人と比べて自分はダメだなど、強い自己否定感があった。
 センターでは、良いことも悪いこともひっくるめて自分だと、繰り返し言われた。
 「私は私でいいんだ。オンリーワンでかけがえのない私だ」という、自尊心ができた。

(続く)

(文責・稲本)

 

ゆきさんのお話(1)

 

 11月13日の「BPD家族会」で、ゆきさん(20才・BPDの当事者)のお話を伺いました。
 ゆきさんのお母さんが「BPD家族会」に参加している縁で、1年前、群馬の「人格障害研究センター」に入所し、今は回復してきたという体験をお話ししていただきました。

 「人格障害研究センター(以下「センター」)」は、心の問題を抱える人たち(研修生)が、共同生活をすることで回復を目指す宿泊型の施設です。

 以下、ゆきさんより「BPD家族会」にいただいたメールと、当日のお話から、内容をまとめさせていただきました。
 6回に分けて掲載します。

(稲本)


         ×          ×          ×          ×          ×


 物心ついた頃から家は辛い場所だった。
 優等生だったが、人の物を盗ったりしていた。
 中学で不登校、引きこもり。
 高校生のとき自分から精神科へ行き、BPDと診断される。
 付き合っていた人に攻撃的になり、別れて、ODや入院を繰り返す。
 回復したいという強い気持ちがあり、センターに電話して、すぐに入所した。

 

◎センターで苦しかった体験

・20年間ずっと家で暮らしてきたので、3ヶ月間はセンターに適応するのにきつかった。
 当初は孤独感や、不安、緊張で眠れず、食べても戻したりした。

 今までは他人との関係で自分が決まっていた。 関係が良ければ自分もいい。
 感情を出して「いい子の殻を破る」のに3ヶ月かかった。
 センターで24時間皆と一緒に暮らしていると、鎧も取れてくる。
 回復しようとセンターにかけていたので、皆を信頼するように努力した。

・長い間昼夜逆転の生活を送っていたため、昼間起きられない自分に苛立った。

・恋愛依存が強く、ODを繰り返したり、(彼がいないので)毎日死にたかった。
 入所当時は、「殺してくれー!!」と泣き叫んだりした。

・強迫もあり、部屋を片付ける際は、全て自分の中のルール通りにしないと気が済まない。
 でもそれは物凄く疲れるので、部屋は常にゴミ屋敷みたい。

・スポーツやダンス,コーラスなどのセラピーがあるが、昔からできないとすぐ諦めたり逃げ出していたので、泣きながらやったこともある。
 協調性も必要なので、集団で行うことは時に辛かった。
 常に人と一緒なので淋しくはなかったが、協調性を強いられることとのジレンマ。

 人の話し声を聞くと、自分のことを言われているのではないかとドキドキした。

・恋愛依存を断つため、携帯やインターネットも自らの意思で3ヶ月預けた。
 これだけ人に依存しているんだ、と身に染みた。

・センターで恋愛をした。
 人や自分を信じられないことや、異性に対する見捨てられ感が強く、彼に対しても大きく要求してしまったり、他の仲間に対してひがんだりした。
 彼にも問題があって別れたが、過去の特定の人に対する病的な執着から一歩進めたのは、良い経験だった。

(続く)

(文責・稲本)

 

 

BPD障害と発達障害の関連性

平成23年度 11月8日(火)~11月9日(水) 自殺予防に関する技術研修

第二回 自殺予防のための自傷行為とパーソナリティー障害の理解と対応研修

保険所・病院・役所から194名の先生方がお集まりいただいた研修会でした。

主催 国立精神・神経医研究センター精神保健研究所 自殺予防総合対策センター

開催場所 クロス・ウェーブ府中で開催されました。

各プログラム終了後に質疑応答の時間がありました。

最近家族会でも話題が持ちあがっているのでお伝えできればと思います。

 

保健センターからの質問

「BPDと発達障害との関連性・影響に関する相談が非常に多いのですが

 実際のところどうなのでしょうか?また、どのように相談者にお答えしたらよいでしょうか?」

 

林先生

「答えは無い。精神医学は解明できていない領域。しかし、BPDはなんらかの発達の過程

により症状が発症するもの。なので、発達障害の側面があるかもしれない。

しかし、発達障害とBPDの出発点や概念が違う。

どちらかというと、統合失調症の方がオーバーラップしていることが多い。

BPDと重なる点があるけれどジャンルが全く違い、現存の発達障害のものとはかけ離れている。

しかし、いつかは今の言われている発達障害とは別の新しいジャンルで出現する可能性が

あるかもしれない。

 

遊佐先生

「発達とBPDの病理は随分違う。共通部分は感情の激しさ・浮き沈み・表現の仕方に共通点がある。

 また、生きにくさの共通点がある。

BPDや発達障害というラベルが重要ではなく、感情調整困難や辛さが共通しており

どんな精神疾患でも生じる辛さであり、また、関わる家族や関係者にとっても辛い」

 

 

 

 

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