2012年9月アーカイブ

診断基準6,8,9

 
診断基準6.顕著な気分の反応による、不安定な感情
(通常は2~3時間続き、2~3日以上続くことはまれ)

 大抵の人は気分が悪いと感じると、気分を良くするために何かすることができます。
 ボーダーの人はそれが難しく、数時間のうちに強い怒りから抑うつ,イライラ、不安というように揺れ動きます。
 それを予測できず、とても疲れてしまうのです。


診断基準8.不適切で激しい怒り.怒りを制御できない

 ボーダーの人の怒りは激しく、予測不可能で、論理的に話しても抑えることができません。
 またその正反対に、怒りを全く表現できない人もいます。
 少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、相手から仕返しをされるという恐怖心を抱いているのです。

 また怒りだけでなく、あらゆる感情を強く感じます。
 DSMの診断基準で怒りが強調されるのは、身近な人にとって怒りが最も問題をもたらすからだと言う人がいます。
 リネハンも、ボーダーの人は感情に皮膚がなく、わずかに触れただけで苦痛にもだえるのだと言っています。

 ボーダーの人は次のように言います。
「親から受けていた虐待を止めるために、怒りを返すことが生き残る手段になったんだ。
 みんな僕を傷つけてきたから、皆にも傷ついてほしい、怒りの最中にはそう思ってしまうんだ」

「一番気にしているのは、愛を失うこと。
 追い詰められると、恐ろしくなって、怒りでそれを表現するの。
 怒りは恐怖よりましよ。
 自分が傷つきやすいって思わなくてすむから。
 やられる前にやるだけよ。

 人が不当に扱われたときに感じる本当の怒りは、全く感じないの。
 感じるには自己が必要だけど、私には自己がないから」


診断基準9.一過性の妄想様観念,または重い解離症状

 解離は、非現実感,違和感,感情の麻痺,感情の分離を感じるものです。
 ボーダーの人は苦しい状況や感情から逃れるために、解離を起こします。
 "抜け出た"ような感じから解離性同一性障害まで、様々なレベルがあります。
 ストレスが多いほど、解離しやすくなります。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
○自殺
 ボーダーの人の8~10%が自殺を遂げます。
 自殺(および他の衝動的な行動)は、圧倒的でコントロールできない感情への解決策として現れます。

 自殺は気分を変えるための究極の方法です。
 他の致死的でない行動が効果的な場合もあります。
 大量服薬による睡眠は、感情的な傷つきを制御します。
 自殺の脅しも含め、自殺行為は、周囲の行動を引き出すのに非常に効果的です。

○自傷行為
・自分を切り付ける
・火傷させる
・骨折させる
・頭を打ちつける
・針で刺す
・皮膚を引っかく
・髪を引き抜く
・かさぶたを剥ぎ取る

 肥満になるほどの過食や、人に喧嘩を売るなども、自傷行為になることがあります。

 自傷行為は、圧倒される感情的苦痛を解放したり、処理するために行なわれます。
 自傷により、麻薬物質(ベータ・エンドルフィン)が脳から放出されます。

 自傷行為をする理由は多岐にわたります。
・麻痺した感情や空虚感を和らげ、生きていることを実感する
・感情を麻痺させる
・他者への怒りを表現する
・自分に罰を与えたり、自己嫌悪感を表現する
・自分が"悪"でないことを何とか証明する
・ストレスや不安を和らげる
・苦痛をコントロールできる感覚を得る
・現実感を取り戻す
・"現実"を感じる
・身体的な痛みによって、感情的苦痛や否定的感情から解放される
・感情的苦痛を人に伝えたり、援助を得る

 自傷行為は、計画されたり衝動的に行なわれたりします。
 意図的なことも、無意識のこともあります。
 痛みを感じることも感じないこともあります。
 傷を隠す人も隠さない人もいます。
 後者は、助けを求めたり、苦痛を伝えるための手段になるからです。

 ボーダーの人は多くの場合、自傷行為の理由に気付いています。
 でも喫煙のように常習になり、煙草を欲するのと同じくらい強力なこともあります。

 自傷行為をするボーダーの人は、傷つけない人に比べて、専門的な援助を求める傾向があります。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

家族会 カウンセリング申込について

定例会には新しい方々も大勢参加しており

カウンセリングについてご存じ無い方もおられます。

HPには随時掲載してお知らせしているのですが、

HPが読みづらいため、カウンセリング情報に辿り着けず

そのためカウンセリングについてご存じない方々も

いらっしゃいますので再度お知らせさせていただきます。

 

家族会では個別カウンセリングをご提供しております。

詳しい情報をお知りになりたい方は

BPD家族会HPの9月のお知らせ欄 もしくは

お知らせ欄の一番下のアーカイブをクリックして

2011年10月タイトルカウンセリング予約をご覧ください。

 

カウンセリング規約が書かれていますので

規約に同意された上、カウンセリングをお申込み下さい。

 

さらに詳しい情報をお知りになりたい方は定例会で

直接奥野に近づいてお尋ねしていただくか

メールでお知らせ下さい。

連絡先は下記のメールアドレスまでお願します。

bpd_chair@yahoo.co.jp

 

カウンセリング対象者はBPDをサポートされておられる方々が対象です。

当事者は受付ておりませんのご了承下さい。

当事者の「治療」サポータの方で「治療」をご希望の方は

こちらで専門医をご紹介させていただきます。

 

料金は家族会ボランティア料金でご提供しております。

1時間2000円+部屋代となります。

場所は定例会開催開場にて行います。

カウンセリングは心理カウンセラー家族会代表奥野栄子が担当致します。

 

*特別講演者定例会終了後は懇親会があるためカウンセリングは受付ておりません。

 

BPD家族会代表 奥野栄子

 

 

 

 

 
 ボーダーの人は、無鉄砲とも言える衝動性によって、空虚感を満たそうとしたり、自己同一性を得ようとするかもしれません。

 ボーダーの人の23%が物質乱用の診断を受けています。

 物質乱用は次のような特徴があります。
・乱用がひとつの薬物に限らない(薬物とアルコールの合併)
・抑うつを呈しやすい
・自殺企図や事故を起こしやすい
・衝動性のコントロール能力が低い
・反社会的傾向を持っている

 薬物とアルコールを乱用していると、何がBPDによるもので何が薬物によるものか、区別が難しい場合もあります。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 

平成24年8月現在の家族会財務報告収支

収入   129,030円  (①)
  
  内訳 8月 5日東京家族会(37名×2,000円)   74,000円
      8月18日関西家族会(22名×2,500円)   55,000円
      8月18日銀行受取利息               30円
     
 
支出   144,010円  (②)
 
  内訳 8月 5日東京講師謝礼             20,000円
      8月18日関西講師謝礼             10,000円
      8月18日関西資料コピー費            1,380円
      8月18日関西会場備品費              550円
      8月18日関西出張費               27,260円
      9月 2日東京会場費               14,000円
      9月16日東京会場費               14,100円
      10月7日東京会場費               16,500円
      11月3日東京会場費               16,500円
      11月18日東京会場費              16,500円
      10月11月東京会場備品費            7,220円
           
収支  -14,980円=A(①-②)
 
☆ A -14,980円+444,394円(7月末残)=429,414円
 

上記 ご報告いたします。

財務報告は奥野代表の会計監査済です。

家族会事務局

 
 アイデンティティの欠如と空虚感は関連があるので、診断基準3と7をまとめて説明します。

○自己という感覚の欠如

 大抵の人は20代か30代になるまでに、自己像はかなり一貫したものとなります。
 40代になって、多くの場合、自分の好き嫌い,価値観,職業の選択など、間違っていなかったと考えるでしょう。
 しかしボーダーの人は本質的な自己感がなく、台風に見舞われた船に乗った人が、転がり回ったり、デッキに打ちつけられたりするようなものです。

 普通の人は、異なる状況で異なる人々と一緒にいても、一貫した自己を感じているものです。
 この自己の連続性がボーダーの人にはなく、空虚感につながる自己同一性拡散の問題になります。

 患者は次のように感じています。
・心の中が空虚
・自分のものは何もない
・誰と一緒にいるかによって、自分が異なる人間になる
・どのように考え、行動するかの手がかりを、他者に頼っている
・一人でいると混乱し、うんざりする

 彼らは孤独を回避しようとして、なりふり構わぬ衝動的な努力をしたり、パニックに陥ったり、ひどい倦怠感,解離状態に陥ることもあります。

○充分によいということがあり得ない
 ボーダーの人の中には成功を治める人もいます。
 それでも充分によいということがないと感じています。

 自分のことを、セリフを暗唱している俳優のように感じることがあります。
 観客がいなくなれば、存在しなくなるのです。

・自分自身の価値が、最近何をしたか、またはできなかったかに基づいている
・何をしても、決して充分でない
・自分が無力な被害者だとみなす

○被害者の役割
 ボーダーの人の中には、同情を寄せてもらうために被害者の役割を演じる人がいます。
 損害を被っているのは自分が原因だということを認識しません。

 被害者であることでアイデンティティが得られると思っているかもしれません。
 被害者の役割は、自分の行動に責任を持たなくてもいいという幻想を与えます。
 虐待された人なら、虐待のシナリオを再演するかもしれません。

○援助者の役割
 援助者,世話焼きという役割を行なうこともあります。
 ポジティブな役割で、自己同一性が与えられ、空虚感を和らげられます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

診断基準2:スプリッティング/分裂

 
2.理想化とこきおろしの両極端を揺れ動く、不安定で激しい人間関係 

 ボーダーの人は、永遠の愛情や同情心を持つ援助者を探し求めます。
 一方で、自尊心が非常に低いので、警戒心が強く、大切に思う人が自分を愛していないのではないか、見捨てるのではないかと疑い、それを証明する手がかりを見つけようとします。

 それが現実に起こりそうなとき、彼らは次のようなことをします。
・怒りの中に逃げ込む
・非難する
・泣く
・報復しようとする
・自分を傷つける
・浮気をする
・その他の破壊的行為

 これらは、この障害の中核にある逆説性を示しています。
 彼らは親密性を死に物狂いで求めます。
 しかしその行為が、結局は人々を遠ざけてしまうことになるのです。

○スプリッティングを理解する
 ボーダーの人の多くは、過度の理想化と脱価値化の間を揺れ動きます(スプリッティング/分裂)。
 相手の良い面と悪い面を統合することが困難なので、相手に対する見方は、その人との一番最近のでき事に基づきます。

 人間の矛盾や曖昧さに耐えられず、相手を一貫して理解できないのです。
 どの瞬間でも、ある人は「善」か「悪」のいずれかで、中間がありません。

 問題が起こると、解決方法はひとつしかないかのように考える人がいます。
 例えば、嫌な仕事を任されると、会社を辞めるしかないという具合です。

 努力も全か無です。
 ひとつのことにのめり込むと、他のことから全て手を引いてしまいます。

○人間関係を定義することが困難
 ボーダーの人にとって、ある人は友人か敵のいずれかであり、情熱的な恋人か心の友かのいずれかです。
 恋愛関係にあった人と友だちになることが困難です。

 自分自身も黒か白のいずれかで見ます。
 完璧さを求めて果敢に努力し、それを成し遂げたと感じながら、次にはほんの些細な失敗で自分を責めるのです。

○スプリッティングへの対処
 ボーダーの人の要求や期待に全て応えるのは不可能です。
 要求を満たそうとすれば、彼らはすぐ要求を変えるかもしれません。

 英雄・悪党、聖人・罪人のパターンを循環します。
 「愛の対象」に欠点があると分かると、彼らは新しい愛の対象を見つけ、違う人と同じサイクルを繰り返すのです。

 ボーダーの人は他人を信頼することが非常に困難です。
 不信感はボーダーの人の心の奥底にあるものだからです。

 彼らは自分の歪んだ気持ちや信念は、紛れもない事実だと確信しています。
 従ってあなたの役目は、あなた自身の一貫した、バランスの取れた見方を維持することです。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
 DSM-Ⅴ-TRによると、パーソナリティ障害は次のように定義されています。
・期待されているものから著しく逸脱した、内的体験および行動の持続的様式
・固定化している(変化しにくい)
・人間関係で苦痛や機能不全をもたらす

 パーソナリティ障害が、障害を持つ人と関わる人の双方に苦痛をもたらすことを表しています。
 しかし境界性パーソナリティ障害と、その障害を持つ人は同じではないと、心に留めておくのが大切です。
 ボーダーの人の思考や感情,行動をコントロールできるのは本人だけだと理解するのは、ボーダーの人の回復,そしてあなた自身にとって重要です。

DSM-Ⅴ-TRの境界性パーソナリティ障害の診断基準(要約)
1.見捨てられることを避けようとする、なりふり構わない努力
2.理想化とこきおろしの両極端を揺れ動く、不安定で激しい対人関係
3.同一性障害.不安定な自己像または自己感
4.自己を傷つける可能性のある衝動性
 (浪費,性行為,物質乱用,無謀運転,むちゃ食いなどのうち少なくとも2つ)
5.自殺の行動,そぶり,脅し,自傷行為の繰り返し
6.顕著な気分の反応による、不安定な感情
 (通常は2~3時間続き、2~3日以上続くことはまれ)
7.慢性的な空虚感
8.不適切で激しい怒り.怒りを制御できない
9.一過性の妄想様観念,または重い解離症状

 この診断基準を詳しく見ていきます。

1.見捨てられることを避けようとする、なりふり構わない努力

 迷子になり恐怖で一杯になっている子供と同じです。
 孤立感と不安感を常に抱いています。
 大切な人が離れていくように感じると、パニックに陥り、怒りを爆発させたり、そばにいるようしつこく頼んだりします。

 見捨てられ不安は非常に強力です。
 見捨てられることを恐れて、恐怖感を否定したり抑圧する対処方法を身に付けるかもしれません。
 これを何年も繰り返していると、本当の感情が分からなくなってしまいます。
 何が彼に見捨てられ不安を引き起こしているのか、考えてみると役に立つかもしれません。

 見捨てられ不安を、怒りなど別の方法で表現することが多いものです。
 傷ついたりコントロールを失ったとき、怒りが爆発しやすくなります。
 見捨てられる前に、自分から相手を見捨てたりするのです。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

本書の使い方

 
 本書で「ノン・ボーダーラインの人(non-BP)」というのは、「ボーダーラインではない人」ではなく、「家族,パートナー,友だちなど、ボーダーの人の行動に何らかの影響を受けている人」のことです。

 non-BPのなかには、ボーダーの人を懸命に支えている人もいれば、言葉や身体的に虐待をした人もいます。
 メンタルヘルスの問題を抱えている人もいます。

 ボーダーの人のなかには、親や養育者から虐待を受けた人もいれば、善良で、我が子に治療を受けてもらおうと身を粉にしている親を持つ人もいます。
 本書で親のことを述べる場合は、普通の過ちは冒すが、一般的な親のことを指しています。

 本書の情報を基にして、誰かを診断しないでください。
 BPDの評価や治療を経験した専門家だけが、診断を下すことができます。

 BPDはよく誤診されますし、他の精神障害と併存することも珍しくありません。
 幾つかの施設で別々の診断を受けていることもよくあります。
 その人をボーダーラインと呼ぶのに躊躇するとしても、あなたの人生をよくすることをためらわないでください。

 この本はボーダーの人のための本ではなく、あなたのための本です。
 診断の有無に拘らず、本書の方法はあなたにとって有益でしょう。
 本書の焦点は、BPDによってもたらされる行動への対処の仕方です。

 希望があることを知ってください。
 BPDの一番の誤解は、治らないということですが、薬物療法が抑うつ,気分変動,攻撃性に効果的です。
 自傷の衝動を感じなくなるまで回復した人も沢山います。
 彼らは自分自身に対して良い感情を持ち、愛情を与えたり受けたりすることに喜びを感じるようになっています。

 ボーダーの人が援助や治療を拒んでも、あなた自身は変わることができます。
 自分の行動を吟味し、修正することで、感情のジェットコースターから降り、自分の人生を取り戻すことが可能となるのです。


*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
 BPDの人たちの感情と私たちの感情に、変わりはありません。
 ただ以下の点で異なります。
・物事を強烈に感じる
・より激しい形で反応する
・感情や行動をコントロールできない

 専門家の間でもBPDははっきり認知されていません。
 それにはいくつかの要因が考えられます。
・BPDについて充分教育されていない
・「ごみ箱診断」だと言って受け入れない
 (このようなことは少なくなってきた)
・患者が医療機関から締め出されることを懸念し、この診断名を付けない
・本人とはこのことについて話し合わない医療者もいる

 BPDの人にこの障害のことを言うと、家族の誰かがBPDだと言って非難します。
 または、ひどく恥じて、絶望し自傷行為に至るかもしれません。
 あるいは、「どうすることもできないの。だってボーダーなんだから」と責任放棄の手段にしてしまうかもしれません。

 病気のことは、あなたからではなく、専門家から教えてもらうほうがよいのです。
 本人が理解しいない場合、事態はより壊れやすくなります。

 ただ以下の場合には、BPDについて慎重に話し合うことができます。
・本人が積極的に答を見つけ出そうとしている
・お互いに「非難合戦」に陥らない
・優しく愛情を持って、本人を安心させてあげられる

 診断自体に拘らず、問題が起こったら、お互いに取り組むべきだと伝えなければなりません。
 相手が協力的でない場合は、境界を設定することです。

 行動の原因を思案するより、行動の結果として起こる問題を解決することに視点を移してください。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本

 

 
・大切な人のために、とても辛い思いをしている。
・相手の反応を恐れて、自分の考えや感情をしまい込んでいる。
・自分の言動が曲解されたり、全てあなたのせいだと責められたりする。
・強く激しい不合理な怒りを向けたかと思えば、愛情のこもった振る舞いをする。
・「全て善い」か「全て悪い」のどちらかで見る。
・要求がコロコロ変わる。
・身に覚えのない言動で非難される。
・関係を清算しようとしても、愛していると言ったり、変わると約束したり、脅したりする。

 これらの質問の多くに「はい」と答えたとしても、あなたがおかしいわけではありません。
 あなたのせいでもありません。
 あなたは独りではないのです。
 身近にBPDの人がいれば、誰にでも起こりうることなのです。

 ex.BPDの妻
 つかのま天国にいると感じたかと思えば、その次は地獄。
 僕を偶像視して、僕を完璧だと言っていた。
 すぐに些細なことで批判したり、空想の"具体例"を突きつけられた。

 ex.BPDの子供
 生後18ヶ月、気難しくて泣いてばかり。
 2才になると一日に何度も癇癪を起こした。
 7才のとき、「8才になったら死んでやる」とノートに書かれていた。
 よい点を褒めて愛情を持って接したが、何も変わらなかった。
 中学生までに、嘘,盗み,不登校,自傷・自殺行為。
 知的でユーモアがあって、人を惹きつける。
 見捨てられることを恐れて、安定した人間関係を作れない。

 ex.BPDの母
 愛情が気まぐれで、期待通りのことをしないと怒鳴り散らす。
 愛情がある時は、優しく抱きしめて、親子がどんな親密かを話して聞かせる。
 何でも大袈裟にして、自分を正当化するために嘘までつく。
 彼女の子供は、誰かを心から信用することができなくなってしまった。
 親しみを感じるほど、拒絶されると思ってしまう。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

 私は初めて、BPの彼がどれほど苦しんでいたかに気付いたのです。
 いわれのない感情的な非難は、実際には私に向けられていたのではなく、彼自身の羞恥心と、見捨てられることへの強い不安によるものだったのです。
 彼も犠牲者だったと気付いた時、私の怒りの一部は同情に変わりました。

 ネットでは、自分の信頼を傷つける嘘を言ったり、虐待されたと偽の告発をする配偶者について語る人たちがいました。
 BPの親たちは、混乱しながらも愛情を持って、子供を助けることに彼らの人生を捧げていましたが、暗にまたは公然と、幼児虐待のかどで責められたりしました。

 私はBPについてのサイトを立ち上げ、「ようこそオズへ」という、non-BPの人たちのためのオンライン・コミュニティを組織したのです。
 自分だけの体験だと思っていたことが、これほど多くの人たちと共通のものだったと、大抵の人がびっくりしていました。
 ポールと私は、大量の情報をまとめ、検討し、発展させ、「ようこそオズへ」のメンバーの意見を聞いたり、BPの研究家たちとも分かち合いました。

 BPとは今もなお論争の余地のある複雑な概念です。
 原因についても結論は出ていません。
 治療に関しても、研究者たちが熱心に議論している段階なのです。
 BPの発生率は統合失調症や双極性障害(躁うつ病)と大差ないのに、専門家のほとんどは充分な教育を受けていません。

 本書は最終的な結論ではありませんが、BPにも回復の望みがあることを伝えられるようにと思います。
 そして、あなたがBPと出会って以来、降りることができなかった感情のジェットコースターから降りる手助けになればと願うものです。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

 BPDと関わっている精神療法家であるポール・メイソンに連絡を取ると、彼も私と同じことを強く思っていました。
 BPDの人の友人,パートナー、家族は、自分が独りぼっちではないということを、どうしても知る必要があるということです。

 家族の人たちは、自分たちが感情的な闘争地帯にいて、もはやどう対処すればいいのか分からないでいます。
 当時の文献には、毎日BPDの人と生活を共にする家族に必要なことは、ほんのうわべだけの説明しかありませんでした。

 家族について論じている研究ではほとんど、家族環境がこの障害にどのような影響を及ぼしたかというのが、議論の焦点でした。
 人に影響を及ぼすBPDの人の行動についてではありませんでした。
 専門家たちの多くがBPの患者に圧倒されていて、non-BPの人に向けての助言は非常に限られていたのです。

 私はインターネットにアクセスし、BPとnon-BPの人のためのグループを見つけました。
 彼らは対処技能を学び合い、情報を交換し、経験を正しく理解できた親密だけれどよく分からない人たち(BPDの人たち)を、感情面で支えたりしていました。

 BPの人たちは、性的虐待,自傷行為,抑うつ,自殺企図など、驚くべき惨状を話してくれるようになりました。
 境界性パーソナリティ障害でいることは、無間地獄にいるようなもの--それより酷い状況なんてない。

 しかし私はネットで、セラピーと薬物療法,感情的なサポートの組み合わせによって、かなり回復している人々に出会いました。
 人生で初めて自分が正常であると感じることができたという彼らの喜びに、私は感動し、涙が出ました。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

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