2012年10月アーカイブ

 
○当惑
 BPDの中核的な特徴である「衝動的な攻撃性」と呼ばれる反応に、当惑してしまいます。
 衝動的な攻撃性は、拒絶や見捨てられの脅威によって引き起こされます。

 攻撃性は外に向けられたり、内(自分自身)に向けられたりします。

○自尊心の喪失
 感情的虐待は人の核心部分まで傷つけ、身体的虐待よりもひどい傷痕を残します。
 状況を判断できなくなるまで、被害者の自尊心を蝕んでいきます。

 被害者は虐待の責任は自分にあると考えてしまいます。
 自分には何の価値もないと確信するようになり、他に行くところがなく、虐待の場に留まり続けるのです。
 究極的な恐れは、独りぼっちになることです。

○罠にはまったような、どうしようもない感じ
 関係の罠にはまってしまったと信じ、そこから離れられないように思えます。
 必要以上に責任を感じたり、過度の罪悪感を抱くかもしれません。

 自殺や人を傷つけるという脅しは、ノン・ボーダーラインの人に無力感を抱かせ、関係から離れることが危険であると感じさせるのです。

○引きこもり
 ノン・ボーダーラインの人は、その状況から離れようとするかもしれません。
 仕事に没頭したり、間違いを言わないよう沈黙したり、関係を終わりにすることなどです。
 それはボーダーの人の見捨てられ感を誘発し、より激しい行動化を引き起こすかもしれません。

○罪悪感と羞恥心
 繰り返しの非難には洗脳の効果があります。
 ノン・ボーダーラインの人は、問題の原因は自分にあると思い込むようになります。

 子供にそのようなことが起こると、とても大きなダメージになります。
 子供は親を非難したり、疑問を持つ能力がないからです。

 ボーダーの人の親もまた、自分をひどい親だと思い込んでしまいます。
 自分を非難し、自分の過ちを見つけ出そうと躍起になる人もいます。
 生物学的問題が原因ということになっても、親は子供の生物学的遺伝に責任を感じてしまうのです。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 キューブラー・ロスは、「続・死ぬ瞬間」の中で、悲嘆反応(喪失体験のプロセス)の5段階を述べています。
 ボーダーの人を気遣っているノン・ボーダーラインの人にも当てはまります。

○否認
 彼らの行動が普通でないことを認めようとしない時があります。
 ノン・ボーダーラインの人が社会から孤立しているほど、情報が入ってこないため、否認する機会は増えます。

 ボーダーの人は自分の行動をノン・ボーダーラインの人のせいにするので、ノン・ボーダーラインの人は否認を続けることになります。

○怒り
 怒りに対して、怒りで反撃する人がいます。
 火に油を注ぐようなものです。

 ネガティブな感情も全て正常なものであり、感情はただ存在するのです。
 感情を発散し、受け入れてもらえる安全な場所が必要です。

○取引
 この段階では、愛する人の行動を"正常"に戻すために、何らかの譲歩をします。
 ボーダーの人が望むことをすれば、必要なものが手に入るだろうと考えるのです。

 しかし支払う代償は非常に大きいものです。
 譲歩はこれで充分ということはないでしょう。
 要求はさらに大きくなり、新たな取引をしなければならなくなります。

○抑うつ
 取引に支払った代償の大きさに気付いたとき、うつ状態に陥ります。
 友人や家族,自尊心,趣味その他を失ってしまうのです。

○受容
 ボーダーの人の「良いところ」と「悪いところ」を統合し、彼らは両方を併せ持っていると気付いたとき、受容の段階が生まれます。

 ノン・ボーダーラインの人は自分の選択に責任を持てるようになり、人もまたその人の選択に責任があると考えられるようになります。
 自分自身とボーダーの人を理解したうえで、二人の関係をどうしていくか決めることができるのです。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

11月3日(土)14:00~17:00

石井朝子先生のマインドフルネスウォームアッププログラム

が開催されます。

 

ある人は

弁証法的行動療法と聞くと

固~いイメージ

難し~いイメージ

さっぱり???といったイメージ

がおありだったかもしれません。

 

しか~し今回ご提供されるプログラムを通して

上記のようなイメージが覆せるかもしれません!

 

今回石井朝子先生の弁証法的行動療法&エクササイズウォームアップは

簡単・楽しい・シンプル・分かりやすい

といった利点があります。

 

また、このスキルは直ぐに

家に持ち帰って当事者に応用できることが大きな利点かもしれません。

 

講演中の扱う資料が

大変シンプルで分かりやすいのが特徴です。

(大体弁証法的行動療法に扱われる資料は多いのが特徴ですが・・・)

また、石井朝子先生は家族との分かち合いを大切にしたいと

いうことで、質疑応答のお時間も充実していると思います。

身体を動かしたエクササイズの時間もあるので

場の雰囲気も親近感に包まれ温かい会場になるのではないかな~と思います。

 

これまでのプログラムは、心理教育・グループワーク中心のものが多いのですが、

今回このような形式のプログラムをご提供するのは

なんと 「初」なんです。

 

BPDに効果的な治療法というのは

無いに等しいと言われるほど、乏しです・・・

また、家族の対応は大変難しと感じておられる家族も

沢山おられます。

 

しか~し。

今回の対応法は「ストレッチ」とほぼ同じで

非常に簡単で直ぐに使えることが最大のメリットです!

 

どうしていいのか分からない、対応法がなかなか身につけることができず

悩んでいらっしゃる方にはお勧めです。、はじめの一歩としてやり易いところから

入ってみるのはいかがでしょうか?

 

もちろん、BPDだけに限らず

感情調節に困難を感じている方、あらゆるストレスを感じておられる方に

とってもエクササイズとなり身も心もリフレッシュできます。

毎日ストレスを感じている家族には最適かもしれませんね!

 

参加することに躊躇しておられる方も含め

参加希望されていらっしゃる方は是非お越しになっていただければと思います。

定例会開催日になると申込みが殺到する場合がございます。

早目のご予約お待ちしております!

 

この後、懇親会もご用意していますので、

石井先生と身近で関わってお話しがしたい方

是非ご参加下さい。

懇親会費用は定例会とは別で約4000円程になります。

 

BPD家族会代表 奥野栄子

 

 

 

 

 

 
 ボーダーの人と生活するのは、圧力鍋の中で暮らすようなものです。

 ボーダーの人は自己嫌悪が強いため、次のようにするかもしれません。
・周囲の人が自分を嫌っていると責めたてる
・批判的になったり、みな自分から離れたがると怒りを表す
・他人を責め、自分を被害者にしたてる

 こうした行動にさらされていると、人はこの力関係に巻き込まれてしまいます。
 不快な感情の罠にはまったように感じます。
 そして役に立たない,あるいは状況を悪化させるような対応をしてしまいます。

 ボーダーの人の不健全な振る舞いは強化されます。
 彼らに責任がある言動に、ノン・ボーダーラインの人が責任を負ってしまうからです。

●ノン・ボーダーラインの人に共通する思考パターン
 以下に示した思い込みの、あなたはどれに当てはまるでしょうか。

○信念と事実
信念:二人の間の問題は、全て私の責任
事実:それぞれが50%ずつの責任を負っている

信念:ボーダーの人の行動は、全て私に関連している
事実:彼らの行動は、生物学と環境の組み合わせによる複雑な障害の結果

信念:私には、ボーダーの人の問題を解決する責任がある
   私がやらなければ、他に誰もやろうとはしない
事実:ボーダーの人の人生を引き受けようとすることは、
   彼らには自分の面倒を見る能力がないと伝えているようなもの
   自分自身に焦点を当てることで、あなたは関係性を変える機会を無にしている

信念:ボーダーの人に、私が正しいことを分かってもらえれば、問題は解決する
事実:あなたにどれだけ説得力があっても、相手を思い止まらせることはできない

信念:彼らの非難が間違っていると証明できれば、彼らは私を信用してくれる
事実:信頼の欠如は、BPDの証
   あなたの行動には何の関係もない

信念:誰かを本当に愛しているなら、その人の身体的・感情的虐待にも耐えるべき
事実:自分を愛しているなら、他人にあなたを虐待させるべきではない

信念:BPDはどうにもならない
   だから彼らに行動の責任を持たせるべきでない
事実:手助けがあれば、行動をコントロールできるようになる

信念:境界を設けることは、ボーダーの人を傷つける
事実:境界を設けることは、あらゆる関係にとって不可欠

信念:何かをしてうまくいかなくても、うまくいくまで諦めるべきでない
事実:うまくいかなかったことから学び、新しいことを試してみる

信念:常に愛情,理解,支持,無条件の受容を提供しなければならない
事実:その人を愛し、受け入れることと、その人の行動を受け入れることは異なる
   不健全な行動を受け入れることは、それを助長し、苦しみを永続させる

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

愛情を試す/子供っぽい世界観

 
○愛情を試すこと
 あなたの目からは、彼らが見捨てられ/飲み込まれダンスの振付師で、あなたはぐるぐる回され、目が眩むように見えるでしょう。
 でも彼らは、自分の行動にあなたがどう反応するのか予測できず、不確かで不安な気持ちになっているのです。

 無力感を味わい、何とかコントロールを取り戻そうとします。
 自殺すると脅したり、あなたには操作的に見えるやり方で、行動化を起こすのです。

 あなたがどれほど愛してくれているかを試すことで、ダンスの主導権を握ろうとする人もいるでしょう。
 約束の時間にわざと遅れ、あなたが帰って彼らの試験に"不合格"になれば、彼らは自分の価値のなさが証明されたと感じるかもしれません。

 あなたが試験に"合格"すると、行動をエスカレートさせるかもしれません。
 ついにあなたの堪忍袋の緒が切れれば、あなたは悪者になり、彼らは被害者になるのです。

 あなたは不思議に思うかもしれません。
「何のための試験なんだ? 何が起こっても、二人とも試験に失敗するというのに」
 しかし、ボーダーの人の世界では意味があるのです。

○子供っぽい世界観
 多くの大人のボーダーの人は、自分の世界観が子供っぽいと気付いています。
 ボーダーの人の思考パターンは、幼児期の発達段階に似ています。

 あるボーダーの人たちは、次のように言います。
「きちんとしていても、心の中は怒りと恐怖でいっぱいの子供なの。
 2才の子供に『大人になれ』とは言わないでしょう? 
 だから私にも言わないでほしいの。

 大人になりたくないわけじゃない。
 ただできないだけなの。
 感情に支配されることが、面白いわけがない」

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

ボーダーラインの人の行動パターン

 
○勝ち目のない状況
 ノン・ボーダーラインの人のほとんどは、ボーダーの人に勝ち目のない状況に追い込まれるように感じます。
 これは「全てあなたが悪い」のバリエーションのひとつかもしれません。
 他人を勝ち目のない状況に追いやることで、自分の正当性を確認するのです。
 長い目で見れば、人を遠ざけて、自分を傷つけることになるのですが。

 あるいは、ボーダーの人は解離を起こしているかもしれません。
 極めて強い感情的ストレスのある人は、自分の以前の言動を思い出せないことがあります。

 ボーダーの人は自己に一貫性を欠いているため、人を勝ち目のない状況に追いやるように見えるのかもしれません。
 ボーダーの人が何かを欲しても、あとになって欲しいものは変わってしまいます。
 しかし羞恥心とスプリッティングが起こるため、一貫性がないと認めることはできません。
 彼らはあなたのほうがおかしいとさえ言うでしょう。

○見捨てられ不安と飲み込まれ恐怖
 時にボーダーの人は、「離れていてよ。もう少し近いところで」と言っているかのようです。
 この行動パターンは、ふたつの相反する根源的な恐怖から生じます。
 見捨てられることへの恐怖と、人にコントロールされたり飲み込まれたりする恐怖です。

・見捨てられ不安
 幼いときは誰でも見捨てられ不安を経験します。
 成長するにつれて、自立して、家族の加護から離れていこうとします。

 2才の子供は、得意気に遊び場を走り回り(自立)、転ぶと泣きながら親の所へ駆け寄っていきます(依存)。
 次第に双方のバランスが取れるようになり、成人期には、見捨てられ不安や飲み込まれ恐怖に支配されることなく、自立を果たします。

 ボーダーの人は、他者に没入したい衝動と、自立願望の間で引き裂かれます。
 ある時は親密さや保護を求め、ある時はあなたを遠ざけようとし、つじつまが合わないものになります。

・コントロールを失うことへの恐れ
 ボーダーの人は、人が近づきすぎると飲み込まれそうに感じたり、コントロールを失うような恐怖を感じます。
 あなたが彼らと親密になり、彼らの本当の姿を目にすると、不快感を覚え、彼らから離れていくことを、彼らは恐れています。
 そして傷つくことを恐れて、距離を取るようになります。

 しかし距離を取れば孤独になり、見捨てられ不安は強まります。
 再び死に物狂いで親密さを求め、このサイクルが繰り返されるのです。
 サイクルは数日,数週間,数ヶ月,数年単位かもしれません。

 親密度が高まるほど、見捨てられや飲み込まれの問題も深刻になります。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

全てあなたが悪い

 
 延々と続く非難や批判も、外に向かって行動化する人の防衛機制です。
 批判は、事実を誇張したものだったり、一方的な空想だったりします。
 これも見捨てられ不安に関連しているかもしれません。

 ボーダーの人の無意識な思考過程は、次のようなものです。
「もし私に間違ったことがひとつでもあれば、私の全てが間違っている。
 皆は私を見捨てるだろう。
 だから私には間違ったところなどあってはならない。
 あるとすれば、それは誰かのせいだ」

 怒りや衝動も、実際には関心を引き出すための、見当違いの試みに過ぎないのです。

 批判に異議を唱えたり、自分を守ろうとすれば、彼らはあなたを防衛的だとか神経質だとか非難するかもしれません。
 彼らの生存がかかっているので、母熊が小熊を守るように、どう猛になって自分を守ろうとするのです。

 危機が過ぎ去ると、 彼らは あなたがまだ腹を立てているのを 不思議だと言わんばかりに 振る舞うかもしれません。
 あなたに空虚な内部を見られないようにしているのです。
 あるいは解離を起こして、全く異なったことを思い出しているかもしれません。

 もちろんあなたは不快感を覚えます。
 このサイクルが何度も繰り返されます。

 あるボーダーの女性の言葉です。
「彼をけなすときは、見捨てられたとか、彼が愛してくれないって感じてる。
 すごく恐いの。
 どうしていいか分からなくなって、わめき散らしてしまう。
 あとになって、彼がいなければどうにもならないと気付いた。
 恥ずかしくなってもう二度とそんなふうにしないと誓うの。
 でもいつもそうしてしまう。」

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

マインドフルネスとは何なのか?

リネハン博士はマインドフルネスと言う技能が、不可欠である理由は

BPDの患者に多く見られる「自己の制御不全」に対処する為であると

お話しされています。

例えば、BPDの患者は、物事を把握しようとする際に、

情動に囚われるあまり、極端な反応をしてしまったり、

論理的に分析しようとするあまり、

凝り固まった考えに陥ってしまったりする傾向があります。

その傾向に対処するためには、

思考や行動が感情によって制御不能になっている状態「感情的な心」でも、

物事に対して知的かつ冷静にアプローチする「理性的な心」でもなく、

両者を統合したうえで、さらに直感的な理解を付け加えた

「賢明な心」に至る訓練を繰り返し行う事が重要だとお話しされています。

マインドフルネスの技能は「感情的な心」と「理性的な心」の

バランスを取得し、「賢明な心」に到達する事を目標としています。

 

家族会顧問であられる黒田医師が2007年

「こころのりんしょう 弁証法的行動療法を学ぶ」に掲載された

【眠るために目覚める事】の中で

患者に自分自身の一切の価値判断を棚上げさせたままにして、

いわば心を空にするように指示をする。

リハネン博士はマインドフルネスで用いられる3つの技能

(観察する事、叙述する事、参入する事)について

「ものごとを理解し状況を改善するためには観察し叙述しなければならない。

それが参入するためには必要である。」と述べている。

筆者は、マインドフルネスで用いられる技能を

「目覚めさせること」と「眠らせる事」と言う2つの視点に

基づいて説明する。

観察と叙述は、ものを学ぶこと時に必然的に伴う

苦痛、拘束感、不自由さを受け入れ、

それに耐えていくための「目覚め」の技法であり、

参入とは目の前の現実が求めるものごとに

自意識を捨てて完全に没入するための

「眠り」の技法を提示したものであると言える。

患者自身が、このような姿勢を身につけるように促していくことは、

BPDの患者を現実に正面から取り組むように促していく上で

大きな力になると思われる。      以上

 

「賢明な心」とは理性的な思考と感情の両方を基に、

自分の人生について健康的な意思決定を下すための能力です。

 

記事をまとめている私は、長谷川メンタルヘルス研究所で

1年間家族スキルアップグループでマインドフルネスについて勉強いたしました。

当事者本人がマインドフルネルを学ぶ意義と

家族がマインドフルネスを学ぶ意義は同じであると思いました。

マインドフルネスのスキルは「当事者が感情のジェットコースター」から

下りて、感情の波の上を上手に波乗りするためのスキルです。

家族にとっては「当事者が起こした津波」に飲み込まれず、

津波の上を上手にサーフィンして乗り切るスキルであると感じました。

 

家族にとって、当事者の感情の津波(火事)は「ぼや」ではなく「山火事」のように感じられます。

意外と、当事者本人は「ぼや」を起こしているとしか感じていない場合があります。

「ぼや」を「山火事」に変えているのが私自身であったりしました。

マインドフルネスを活用すると、

出来事を客観的に受け止める事が少しですが出来るようになりました。

 

マインドフルネスはBPD当事者や家族や周囲の人だけでなく、

すべての人に必要な技能であると言えるかもしれません。

 

家族会事務局

文献:2007年 星和書店 心の臨床 VOL26 No4

  :2011年 星和書店 弁証法的行動療法実践トレーニングブック

あなたが鬼:投影というゲーム(2)

 
(前の記事からの続き)

・投影のもうひとつの目的:再び注意を向けさせること
 ボーダーの人は、自分が完璧でないと分かれば、あなたに見捨てられるだろうと無意識のうちに恐れています。
 否定的な性質や感情をあなたに投影することは、彼ら自身の完璧なイメージに、あなたの注意を再び向けさせようとすることなのです。

 ボーダーの人が言うことの中に正しい点があるかどうか、吟味してみてください。
 全てが投影というわけではありません。
 しかし投影を行なっていたら、ゲームをストップし、「鬼」になることを慎重に断る必要があります。

・投影のプロセス
 ボーダーの人の中には、自分の存在そのものに根本的な欠陥があるとして、羞恥心を感じている人がいます。
 しかしスプリッティングのため、欠点を認めれば自分が完璧でなくなってしまうので、どんな欠点も否定します。
 こうして投影が完成されます。

・投影性同一視
 ボーダーの人に非難され続けていると、あなたがそれを真実だと思い込んでしまう場合があります。
 非難が事実になるように、あなた自身が行動し始めることさえあります。

 これを「投影性同一視」と呼びます。
 ボーダーの人の批判に洗脳されるように感じる人もいます。

 「嘘もつき通せば、みんな信じるようになる」という、予言のようなものです。
 子供は未成熟なので、投影性同一視の影響を非常に受けやすくなります。
 親が期待していることをしなければ(悪いことも含めて)、親の愛情を得られないと感じてしまいます。

 成人でも、自己評価が低く、アイデンティティが脆弱な人には、投影性同一視は大きな影響を与えます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

あなたが鬼:投影というゲーム(1)

 
 ボーダーの人の中には、ネガティブな感情を和らげるために、「あなたが鬼」というゲームをする人がいます。
 ボーダーの人は自分を「鬼」のように感じており、他の人たちが自分から逃げていくように思ってしまいます。

 誰かと鬼ごっこをしてその人を「鬼」にすることで、この苦しみに対処しようとします。
 これが「投影」と呼ばれます。

 投影とは、自分の中にある不快な性質や行動,感情を、他の人のせいにして、自分では認めようとしないことです。
 手鏡で自分を見るようなもので、鏡の中の自分を醜いと思ったち、鏡を裏返すことで、醜い顔を自分ではなく、他の人のものにするのです。

 あるボーダーの人は、自己嫌悪の中にどっぷり浸かっていると、憎しみが洪水のように周りの人や物に溢れていく、と言っています。

・投影を理解する
 時に投影は、事実に基づくものを大げさにする場合があります。
 例えばあなたがイライラしていると、ボーダーの人は自分を憎んでいると言って、あなたを責めるかもしれません。

 あるいは、投影が全くの想像から生じる場合もあります。
 あなたが店員に尋ねているだけで、ボーダーの人はイチャついていると責めるかもしれません。

 それでしばらくは気が楽になりますが、苦しみは戻ってきます。
 そしてゲームは繰り返されるのです。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 ボーダーの人は一人一人が唯一無二の存在です。
 何かを読んで、無理やり当てはめようとしないでください。

 ボーダーの人の言葉の中に、何からの真実が含まれていないか考えてみてください。
 ボーダーの人は直感に優れています。
 声の調子や身振り手振りにも非常に敏感です。

●ボーダーラインの人の世界
 彼らの行動を理解するのは難しいというのは間違いです。
 きっかけとなることがなければ、全く正常に振る舞うことができます。
 強烈な感情に圧倒されていない時は、彼らは自分の感情を理解していることもあります。

 しかし、それが心の傷を埋めてくれるわけではありません。
 苦痛の原因を知っても、気持ちは楽になりません。
 「しっかりして」と言われたときに、分かってもらえないと絶望しないわけではないのです。

 ボーダーの人の行動を理解するには、あなたの世界にさよならをして、彼らの世界に旅しなくてはなりません。
 彼らの行動の多くは無意識で、強烈な感情的苦痛から彼らを守るためのものです。
 あなたを傷つけようとしているのではありません。

○ボーダーの人によく見られる思考パターン
 彼らの無意識の想定は、あなたのものとは非常に異なっています。
 以下のようなものがあります。

・いつでも私は、大切な人たち皆から愛されなければならない。
 そうでなければ、私には価値はない。
・ある人々は善良で、全ての面で完璧だ。
 ある人々は悪人で、罰を受けなければならない。
・感情や行動を、私はコントロールできない。
・誰も、私がその人を思うほどには、私のことを大切に思ってくれない。
・私をひどく扱えば、私はひどい人間になる。
・孤独なとき、私は何の価値もない人間になる。
・いつでも私を愛してくれる、完璧な人を見つけたら、私は幸せになる。
 でも、それに近い人が私を愛しても、その人には何か問題がある。
・誰かの何かが必要なとき、それを手に入れられないのは耐えられない。

○感情が事実を作り上げる。
 普通の人は、感情は事実に基づいています。
 しかしボーダーの人は、事実を感情に合わせて修正してしまうことがあります。

 例えば、夫がボーダーの妻に、友だちと飲みに行くから帰りが遅くなると電話したとします。
 妻は不安になり、夫には飲酒の問題があると言ったり、自分より友だちと一緒にいるなんて酷い人だと言うかもしれません。

○合理化
 合理化も、よく用いられる防衛機制です。
 都合よく理由を付けて、自分を納得させることです。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 

平成24年9月現在の家族会財務収支報告

収入   114,000円  (①)
  
  内訳 9月 2日東京家族会(18名×1,000円)   18,000円
      9月16日東京家族会(43名×2,000円)   86,000円
      御寄附                      10,000円
     
 
支出    54,080円  (②)
 
  内訳 12月2日東京会場費               13,000円
      12月16日東京会場費              17,000円
      12月12日東京備品費               2,800円
      9月16日東京講師謝礼              20,000円
      9月16日東京資料コピー費            1,280円
                
収支    59,920円=A(①-②)
 
☆ A  59,920円+429,414円(8月末残)=489,334円

 

上記 ご報告いたします。

財務報告は奥野代表の会計監査済です。

家族会事務局


 

 
 ボーダーの人の、家の内外で働いたり、日々の問題に対処したり、他者との関係を作ったりする能力は、千差万別です。
 このような幅が、BPDを定義付けることを難しくしています。

 BPDは、低機能で「従来型」のBP,高機能で「見た目には分からない」BP,両方の特徴を持つBPに分けられます。

○主に低機能で従来型のBP
・ストレスがある時、自傷や自殺行為のような、自己破壊的な行動で対処しようとします。
 「内(自分)に向かう行動化(アクティング・イン)」です。

・自傷行為や重度の摂食障害,物質乱用,自殺企図などのため、病院にかかります。
 セラピーに対する関心を高く持っています。
 このため治療者の間でよく知られ、従来の典型的なBPDの定義に当てはまるのかもしれません。

・自立した暮らしや仕事をするのが困難で、家族が援助しなければなりません。

・双極性障害や摂食障害など、重複・併発する障害を持っています。

・身近にいる人は、ボーダーの人の自傷行為や自殺企図のために、操作されていると感じるかもしれません。
 家族は、自己破壊行動の阻止,実用的・感情的支援などを求められます。
 親は極度の罪悪感を抱えています。

○主に高機能で見た目には分からないBP
・普段は仕事を持ち、正常に行動し、親しい人の前でしかもうひとつの顔を見せません。
 ジキル博士とハイド氏のようです。

・苦痛に対しては、外に向かって行動化し(アクティング・アウト)、怒りをぶつけたり、相手を非難したり、暴力を振るったりします。
 これは対人関係スキルのなさというより、自分の苦痛を他者に投影することで生じます。
 通常、自らの傷つきやすさを投影したりしません。

・低機能で従来型の人と同じ羞恥心や不安を感じても、徹底して否認し、問題を相手のせいにします。

・関係を終わらせると、厳として援助を求めません。
 そのためメンタルヘルスの世界では「見た目には分からない」のです。
 彼らはBPDとして統計に組み込まれていません。

・セラピーを受けたとしても、自分は正しく、相手が間違っていることを証明するために用いようとします。

・このタイプのBPと関わっている人は、自らの知覚や感情を他者から是認してもらう必要があります。

○重複する特徴を持つBP
 高機能のBPと低機能のBPとの間には、様々な段階があります。
 全ての人は、ストレスに不適当な対処をしてしまいます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
○自己愛的要求
 ボーダーの人の中には、他人の関心を自分に惹きつけようとする人がいます。
 自分にどんな利益があるかだけが基準かもしれません。

 病気だと言ったり、公衆の面前で不適切に振る舞って、関心を引こうとすることもあります。
 この自己愛的行動は、ノン・ボーダーラインの人にとって、とりわけ大きな負担となるでしょう。

○操作的、それとも自暴自棄? 
 ノン・ボーダーラインの人はボーダーの人から、脅しや勝ち目のない争い,だんまり,激怒その他のやり方で、コントロールされていると感じます。
 ボーダーの人は意図的に操作しようとしているのではありません。
 辛い感情に対処し、自分のニーズを満たすための必死の試みと言えるでしょう。

・ノン・ボーダーラインの人の見方
 感情的脅迫とは、要求したことを行なわなければ罰を与えるという、直接的,間接的な脅しです。
 そういう人は、圧力をかけていることを上手に隠します。

 ボーダーの人は、二人の関係を終わりにするとか、警察を呼ぶとか、自殺すると言って脅すでしょう。

・ボーダーの人の見方
 ボーダーの人は大抵、恐れや孤独,絶望や無力感から逃れようとして、衝動的に行動しているのです。
 それに私たちが反応してしまうと、それが、彼らが「操作している」ということになるのです。
 彼らは、自分をなだめ、気分をよくしてくれる反応を、相手から引き出そうとするのです。

                   *

 相手の反応を引き出そうとして、大切なものを壊したり、相手をうんざりさせて全てを失ったりすることがあります。
 操作と自暴自棄の違いを理解することが大切です。
 例えば自傷行為は、ノン・ボーダーラインの人に対する「罠」というより、自分への罰として見ることができます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
○不確定な境界
 ボーダーの人は、自分自身の境界および他者の境界を、設定したり維持することが困難です。

 あるボーダーの人は、親密な関係には境界はないと思っています。
 境界があるというのは、孤独で孤立していなければなりません。
 すっかり巻き込まれてしまうか、完全に孤立するかのどちらかです。

○対象恒常性の欠如
 孤独なとき私たちは、人の愛情を思い出して、孤独を和らげることができます。
 その人が遠くにいても、生きていなくても、そうすることができます。
 これを対象恒常性といいます。

 ボーダーの人の中には、それが難しい人がいます。
 相手が肉体的に存在しなければ、感情的に存在を感じることができません。
 相手の気持ちを確認するために、頻繁に電話をするかもしれません。

 その人の写真やプレゼントを、常に持ち歩くとよいでしょう。
 不安や恐怖を減らす助けになります。

○対人関係における過敏さ
 ボーダーの人の中には、人の心を読んだり、行動の動機やその人の弱みを暴くことに関して、驚くべき才能を持った人がいます。
 共感したり、人が感じていることを理解し、尊重することもできますが、そのような認識能力を「他人を見透かす」ために用いることもあります。

 ボーダーの人はアンテナを張り、様々な状況で自分が有利になるように、他人の動機や弱点を暴き続けます。

○状況依存性の達成能力
 ボーダーの人の中には、ある状況においては有能で、自分をコントロールできる人がいます。
 充分に仕事をこなす人や、成功する人は沢山います。
 とても知的で、創造的で、芸術的才能を示す人も少なくありません。

 困難な状況で発揮できながら、簡単なことに発揮できなくなってしまうこの能力は、状況依存性の達成能力と言われます。

 あるボーダーの人はこう言っています。
 心の奥底で自分が欠陥人間だと分かっているため、まともに行動しようと必死です。
 人を喜ばせて、自分が見捨てられないようにしているのです。

 この能力は両刃の剣です。
 高い機能があるように見えるので、必要な援助を受けることができないのです。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

 
 ボーダーの人には、DSMの診断基準には含まれないけれど、共通している特徴があります。

○広汎な恥
 「有害な恥」というのは、自分は人間として欠点だらけだという感覚です。
 存在のあり方,アイデンティティそのものです。
 無価値感,孤立感,空虚感,完全な孤独感をもたらします。

 自分をさらけ出すことは有害な恥の核心に触れるので、人にも自分自身にも、自分をさらけ出そうとしません。

 以下のものの根本に恥があります。
・怒り
・あら探しや非難
・世話や援助
・相互依存
・嗜癖行動
・過度に人を喜ばせようとする
・摂食障害

 彼らは全か無か思考で、羞恥心に圧倒されるか、羞恥心を人にも自分にも否定しようとするかもしれません。

○コントロールの問題
 ボーダーの人は、自分をコントロールできないので、他者をコントロールしていると感じる必要があるようです。
 無意識のうちに他者を、勝ち目のない状況に追いやったり、理解しがたい混沌を作って、コントロールしようとするかもしれません。

 逆に、自分自身の力を放棄し、軍隊やカルトのように、全ての決定が予め与えられる生活を選ぶかもしれません。
 虐待的な人たちの列に加わるかもしれません。

 羞恥心がコントロールにも繋がっているといいます。
 全てをコントロールしなければならない人は、傷つくことを恐れています。
 傷つきやすいことは、羞恥心を呼び起こすからです。
 コントロールは恥を感じないための方法です。
 自分や他人の思考,感情,行動を、コントロールしようとすることも含まれます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版より

文責・稲本
 

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