2013年5月アーカイブ

ノン・ボーダーの親の経験

 
 ボーダーの子供は他の子とうまくやっていけず、叱っても何の効果もありません。
 自傷他害など、生命に関わるような事件を起こして初めて、BPDとの診断を受けます。

 ある親は自分の寝室に鍵をかけ、服のまま、枕の下に車のキーを忍ばせて寝ていたといい、生きた心地がしないでしょう。
 でも暴力に対してはノーという権利があります。

・親はどのように感じるか
 あなたの感情は大きく揺れ動き、無条件の愛が信じられなくなるくらい試されます。
 子供が苦しむのを見るのが辛くて、心は何度も打ち砕かれるでしょう。

 自分の子供に憎しみを感じるかもしれません。
 愛情と憎しみの間には、恐怖,混乱,憤り,驚き,幸福,罪悪感などがあるものです。

 どの親も、BPDの原因になることを自分がしたのか、それを防ぐために何ができたのか、と考えます。
 親は子供の未来を信じています。
 自分の残りの人生を、子供の手助けに費やすのだろうか? 
 子供を愛すれば愛するほど、彼らが巣立っていく日を待ち望んでいるのです。

・配偶者と分かち合うこと
 BPDの子供のために結婚生活が破壊されかねません。
 でも逆に強固になる可能性もあります。
 二人が同じ方向を向いて、お互いを理解し合うことが重要です。

・最善を尽くす
 よくある過ちは、子供をBPDということで責めたり、尚早な変化を期待することです。
 でもBPDには生物学的基盤があることを忘れないでください。
 子供に失敗から学ばせることと、保護してあげることの間の細い道のりを、歩んでいかなければなりません。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

あなたの子供がボーダーラインだったら

 
○子供にも境界性パーソナリティ障害はあり得るか
 子供をBPDと診断できるかは、絶え間のない論争です。

 診断できないと考える専門家は、子供の人格は変動しやすいため、BPDの定義である「行動が広範囲に及ぶ,持続的,変化しにくい」という点を指摘します。
 これに反対する臨床医は、人格の発達に関連した感情的・行動的な問題は、早期において明らかに存在し、「固執性」「広汎性」を説明できるといいます。

 DSM-Ⅳ-TRでは、18才以下にBPDの診断をつける際の指針があります。
・BPDの特徴が少なくとも1年間持続している
・正常な発達段階,物質依存の影響,うつや摂食障害などの、一時的な状態としては説明できない

 それでも、BPDと診断されると偏見の対象になるため、専門家の多くは診断をつけたがりません。

○養子と境界性パーソナリティ障害の発生率
 養子の子供たちは、ボーダーラインの特徴を部分的に示しています。
 以下のような理由が考えられます。

・早期の分離と喪失
 人生の早い段階で、養育者から引き離される経験は、子供の基本的な信頼感の発達を妨げる可能性があります。

・アイデンティティの問題
 養子の子供の多くは、拒絶されるのではないかという不安と闘うことになります。
 それは自己不全感へと繋がっていきます。

・遺伝的気質
 望まれない妊娠のため養子縁組されることがよくあります。
 こうしたことは、衝動的で捨て鉢な傾向の人たちの間でよく見られ、子供も遺伝的に似た気質を持つかもしれません。

・気質的な不釣り合い
 生みの親より育ての親とは、気質や価値観を調和できる可能性が少なくなるでしょう。
 それは子供の自信や自尊心を失わせるかもしれません。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)
 
 ボーダーの人は自分のベストを尽くせるようにサポートされ、理解されていると感じたいのだと言います。
 しかしそうしても、ひどい批判と受け取られるかもしれません。

 そうならないための提案を3つ挙げます。
・子供に対して最善を尽くしたいという、ボーダーの人の本来の気持ちに訴えることです。
 親の行動は子供にとって良いものもあれば、害を与えるものもあると指摘してください。

・親の仕事というのは、この世で最も大変な仕事であり、助けを必要とすることを力説してください。

・子供によりよい経験をさせてあげたいという、彼らの気持ちに訴えましょう。

 ボーダーの人が冷静な時に、子供に対する本当の愛と献身を認めます。
 彼らの良い面を強調し、協力関係を確立してください。

 ボーダーの人がサポートを得る手伝いをしてください。
 批判ではなくポジティブな助言を与えてください。
 彼らが疎外感を感じないようにしましょう。

 例えば、「ママが問題なのは分かってるけど、どうすればママへの尊敬をなくさずに、家族の団結を維持できるだろう?」と考えてみてください。

○あなたと子供との関係を強くしてください
 子供たちと良質の時間を多く過ごすことで、大きな変化を起こすことができます。
 何度も抱きしめてください。
 終始一貫して、子供に愛情と好意を与えてください。

 子供の言葉に耳を傾けましょう。
 子供が自分の感情について話すよう勧めてください。
 子供は安全だと感じて、あなたに怒りをぶつけこともあります。

 彼らの感情は正常だと教えてください。
 一貫した態度を保って、あなたを信頼してもよいのだと教えてください。

 他の大人にも、子供との関係を深めるよう促してください。
 関わる人が、親と子供の両方に愛情とサポートを与えられているか確認します。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 ボーダーの親は大抵、子供を非常に愛しており、自分が子供に与える影響を心配しています。
 子供への危害の可能性に気付いて、この障害から立ち直ろうという勇気と決意が得られた、と多くのボーダーの人が言っています。

 ボーダーの人が虐待的行動を認めないと、子供たちは極めて対処が困難になります。
 子供は自分のニーズを満たすため、ボーダーの親に頼らざるを得ないのですから。

○優先順位を決定してください
 ノン・ボーダーの人の中には、自分とボーダーの人の関係が危うくなるのを恐れて、行動を起こさない人がいます。
 自分がどれだけリスクを引き受けるか、自分にしか決められません。
 どう決意しても、長期的な影響と共に生きていく覚悟が必要です。

 子供に与える影響を過小評価したり、言い逃れをしないでください。
 躾だなどと正当化すれば、子供を保護していないことになります。

○よい手本を示してください。
 子供は観察から多くを学びます。
 あなたの行動は、あなたの言葉より重要です。

 あるノン・ボーダーの人は、ボーダーの妻との喧嘩を子供に見られ、恥ずかしく思いました。
 波風を立たせないためなら何でもしました。
 彼は優しく責任感のある人でいようとしました。

 しかし子供は、母親が行動化した時、それを受け入れるのが自分の役目だと学んでしまったのです。
 子供は、母親の言うことは正しいと思うようになりました。

・子供の前であなたの境界を維持できているか確認します。
 「お母さんは時々腹を立てるよね。でもそれでもいいんだよ。
 声を張り上げるのはよくないけど」と説明してください。

・ボーダーの人が気まぐれを起こす場合は、周りに影響を与えないようにしてください。
 子供の計画が台なしにされないようにしてください。

(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

平成25年4月現在の家族会財務収支報告

収入    107,000円 (①)

 
内訳
   4月 6日東京家族会(13×2,000円)    26,000
   4月 6日東京親睦会(5×2,600円)     13,000
   421日東京家族会(34×2,000円)    68,000
  
支出    115,600円 (②)

 内訳
   630日分東京会場費            18,300
  46日資料コピー代金             820

46日講師謝礼               20,000 

46日講師お茶代金              140
  46日親睦会費               23,220
  714日分東京会場費            16,100
  421日東京講師謝礼            20,000
  421日東京講師お茶代             220

  421日稲本研修受講料           16,800


 
収支 -8,600円=A(①-②)

 

☆ A -8,600円+739,062円(3月末残)=730,462

上記 ご報告いたします。

財務報告は奥野代表の会計監査済です。

家族会事務局

 
(前の記事からの続き)

 幼かったとき、子供は承認されたこともなかったのでしょう。
 自分自身を見つめ、知ることは困難です。
 親が荒れているとき、子供はいい人であることと、自分自身の感情やニーズを軽視することを結びつけていたのでしょう。

 子供は発達段階において、真の受容を経験する必要があります。
 自分は申し分のない人間だと思えなくてはなりません。
 転んでも親の暖かい微笑みに迎えられなければならないのです。
 受容されることで、子供は自分の「存在そのもの」,本質的自己が、愛されるに足ることを知るのです。

 「健全な子供を育てるための6つの種」があります。
 サポート,敬意と受容,声,無条件の愛・好意,一貫性,安全性です。

 ボーダーの人は子供のとき、自らを受け入れたり、親をモデルにできませんでした。
 脆弱な自己感しかないため、助けを求めたり、自分の欠点を受け入れられません。

 親がボーダーの子は、自分の人生を乗っ取られた気がして、誰とも感情的に関わることができないと言います。
 過度の愛情から、激怒や親業の放棄へと揺れ動くボーダーの親を持つ子は、他の人と信頼関係を築けず、無意識のうちに相手の愛情を試したり、拒否されたという思い込みによって見捨てられたと感じるかもしれません。

 怒りっぽい親の下で育った女の子は、抑うつ,感情麻痺,親密さや一体感を切実に求める,無力感,学業や職業での不振などが生じます。
 男の子は主に、感情的な愛着を持てないという影響が出ます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 子供の感情的ダメージがどの程度になるかは、子供の遺伝的気質,他の大人からの愛情,子供の年令(幼いほど傷つきやすい),虐待の度合いなどに左右されます。
 内に向かって行動化を起こす親に、「介護者」的な性格の子供がいる場合、子供は親を元気で幸せにする責任を感じるかもしれません。
 ex.親がODして運ばれたときも、3才の娘はおとなしくおもちゃで遊んでいました。
 その子がしゃべれるようになって初めて言った言葉は、「ママ、大丈夫?」でした。

 外に向かって行動化を起こす親に、自分を主張するタイプの子供がいる場合、独特の混乱が生じます。
 親が怒鳴ると、子供は「黙れ!」「大嫌い!」などの言葉を投げつけたといいます。

 境界性パーソナリティ障害が家族の中に伝染すると言われます。
 遺伝なのか環境なのか、或いは何かの組み合わせになのか、充分分かっていません。

 子供は以下のような特徴を身に付ける可能性があります。
・感情調節の困難
・摂食障害,物質依存,嗜好の問題
・人を理想化したり、こき下ろしたりする
・羞恥心,空虚感,劣等感
(この傾向は、環境だけでなく生物的要因の結果かもしれません。)

 青年期の子供の、対人関係や家族関係の問題,怯えた愛着スタイルは、親のBPDと関係があるとのことです。
 子供の"自己"は、自分の内面の問題より、ボーダーの親を制御するために働くようになります。
 
(次の記事に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○問題:子供の正常な行動に脅威を感じる
 子供が自立してくると、親は見捨てられたように感じ、抑うつ的になったり、子供に怒りをぶつけたりします。

 無意識に子供の依存度を強めようとするでしょう。
 子供は、親から分離して自信を持つことができなくなるかもしれません。
 親は非承認的なやり方で怒鳴ったりし、状況を悪化させます。

○問題:無条件に愛することができない
 自分の不完全さを埋め合わせるために、子供に完璧さを要求するでしょう。
 子供が従わないと、彼らは自分が愛されていないと感じ、怒ったり落ち込んだり、愛情を引っ込めたりします。
 子供は、親の愛情が条件付きであるということを学びます。

 また親は、子供が愚かで失敗作だと思うかもしれません。
 そうして自分のほうが優秀だと思うのです。

○問題:子供の感情や意見に脅威を感じる
 子供に自分と全く同じであることを要求し、そうでないと脅威を感じるかもしれません。
 子供は無意識に期待に応えようとします。
 自立は親への裏切りとなるので、本来の姿は歪められてしまいます。

 ボーダーの人の中には、子供に虐待やネグレクトをする人がいるでしょう。
 これは子供の自尊心や自己価値観を傷つけます。

 また、パートナーの虐待から子供を守れないこともあります。
 守ろうとすれば自分とパートナーの関係が悪くなる、或いは自分の問題で精一杯で子供を守れないのです。
 子供は自分に価値がないと思ってしまいます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 ボーダーの人の多くは、子供の前では行動化を起こさず、子供を保護しようとします。
 ボーダーの人は素晴らしい親になりうるのです。

 しかし中には、行動化を抑えられなかったり、そうしたがらない人がいます。
 または抑うつ状態に陥って、子供に無関心になるかもしれません。
 極端な場合は、虐待やネグレクトに至ります。

●ボーダーラインの親が抱える典型的な問題
 ボーダーの人は情緒面・発達面で、子供と似た点があります。

・自分の要求を脇に置いて、人の要求に焦点を当てることが困難
・自分の問題に気を取られ、子供の要求や感情を見過ごしてしまう
・子供の要求や感情が自分のものと別だと認められない

○問題:子供との関係を他の人との関係と切り離せない
 自分が好きでない人と子供が仲よくするのが理解できません。
 子供を通してその人に仕返しする人もいるでしょう。
 親か他の人か、どちらとの関係を取るか、子供に迫る人もいます。

○問題:一貫性のない子育て
 自分の気分によって、過保護からネグレクトへと揺れ動きます。
 子供を通して、不適切な方法で自分の感情的要求を満たそうとするかもしれません。
 子供は自分に価値がないと感じてしまうでしょう。

○問題:予測できない愛情
 ボーダーの親の中には、責任を取らなすぎたり、負いすぎたりする人がいます。
 子供への悪影響を無視しながら、子供の不出来に罪悪感を感じたり落ち込んだりします。

 子供が善か悪か決めつける人もおり、子供が一貫した自己感を持つのを困難にします。
 親は愛情のスイッチを入れたり切ったりします。
 それは予測がつきにくいので、子供の関心は、親の気分や行動を予測することだけになり、正常な発達が損なわれます。

 子供は兄弟や親の世話をする役割になり、「親化」します。

(次の日記に続く)

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 親たちは、子供に対する責任は自分にあると思って、ひどい行動にも耐えようとするかもしれません。
 あなたの子供が自分や他人に暴力的なことをしたら、セラピストや公共機関,家族や友人に援助を求めてください。

○治療施設への入所
 入院した子供が、本当に安全になる前に退院させられる場合があります。
 退院した子が大量服薬して、病院に逆戻りしたも例もあるので、対策が必要です。

○警察の介入
 子供が暴力や脅迫をした時は、警察に介入してもらうことができます。
 傷害の危険が明らかで切迫していると説明しましょう。
 子供に精神的な障害があることを警察に知らせないと、反抗的な子供の問題だと思われるかもしれません。

 危機的な情報を記した用紙を事前に用意し、警察に渡すことが勧められます。
 以下のようなことを記入しておきます。
・簡単な病歴
・診断名とその定義
・かかりつけ医の名前
・服用している薬

 子供の行動がエスカレートし続け、治療に同意しない場合は、精神科救急に収容されるかもしれません。

 危険な行動への対処は、恐らく最も難しい局面です。
 しかし対策を立て、外部に援助を求めることで、危険性を和らげ、脅威を減らすことができます。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

自殺の脅し(2)

 
(前の記事からの続き)

○するべきこと
 自殺の脅しは、勝ち目のない状況の中で最もひどいものです。
 自殺の危険性を受け入れることはできません。
 ボーダーの人はあなたに、死ぬか生きるかの責任を感じさせようとしますが、それを単純に拒否することです。

 境界をしっかり維持しながら、ボーダーの人を支える気持ちを表現してください。
 生きるか死ぬかを選択するのはボーダーの人です。
 それを鏡のように返してあげます。
 そして、彼らに生きてほしいこと,助けを求めてほしいと思っていると、はっきり伝えてください。

・「あなたが離れていくなら死んでやる」と言われたら
 ex.「君との関係を終わらせようとしてるんじゃない。
  でも僕が君の一部になることはできないんだ。
  僕がいなくても、君自身の幸せを見つけてほしい。

  僕が君の自殺を恐れるからここにいる、みたいな関係は良くないよ。
  君を大切に思ってるから、君に生き続けてほしいんだ」

 自殺の脅しを深刻に受け止めているということも、同時に伝える必要があります。
 声と態度で、優しさや気遣いを示してください。

 自分には危機的な状況で専門的援助を与えられないとはっきり伝えながら、ボーダーの人の叫びに適切な注意を払います。

 自殺の脅しは秘密にせず、他の人たちの協力も得ましょう。
 支えてくれる人を探してください。

*「境界性パーソナリティ障害=BPD」第2版(星和書店)より

文責・稲本
 

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