2013年11月アーカイブ

 
(前の記事からの続き)

○医者の薬物"療法"依存
 「魔法の薬」は患者の苦痛を一瞬緩和してくれるだけでなく、断崖絶壁に追い込まれた「医者の苦痛」も一瞬緩和してくれる
 でも真の問題解決は先送り......

 BPを診ている良い医者は孤軍奮闘しています。
 患者からも何とかしてほしいと問い詰められ、つい薬を出してしまいます。
 医者も患者と同じで、その場の苦痛から一時的に逃れるために処方をし、「薬物療法依存」になっているのです。

 独りで苦しむことが悲惨なのです。

○薬物「療法」依存の医者は孤立している
 援助希求能力が高い医者になれ

 チーム医療が必要です。
 一人の医者が背負い込むのではなく、各分野の専門家に役割分担することで、効果的な治療ができます。
 数は力。


 患者にとってもグループ療法は、同性の友だちやモデルになる人ができていいのです。
(異性の友だちはセックスで繋がっている)

 本人の行為を叱責するのではなく、回数を減らす方法を一緒に考えましょう。
 やらない約束はしない。約束をしても実行できないから、約束の効力がなくなります。
 「こうしなさい」ではなく、「私はこうしてほしい」とIメッセージで伝えましょう。
 望ましくないことをした時に罰を与えることと、望ましいことをした時に褒めること、どちらがいいと思いますか? 


○BPDの新しい理解と援助の仕方
 以前BPDは治療対象でなく、限界設定の対象でしたが、治療の対象とします。
 治療者との接触に限界設定をしていましたが、治療者とのコンタクトを増やした方が問題行動が少なくなります。
 "癖がつく"(治療者に依存する)というのは間違いで、相談できる環境を作ったほうがいいのです。
 援助希求ができるようにします。

〔*松本俊彦先生講演より〕

(以上)

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○認知行動療法的ワークブックとマニュアルにもとづく依存症治療プログラム
 「SMARPP」
(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program)

 週1回の介入
・集団認知行動療法
・動機付け面接
・薬物使用モニタリング
・随伴性マネジメント
・積極的介入
・個人面接(再発分析)

○道徳教育は逆効果

 薬物依存している人に道徳教育を行なうと、その人を不道徳だと決めつけていることになります。
 学校などに偉い先生を呼んで、「命の大切さ」や「生まれてよかった」という教育をしても、依存症の子供たちは「生まれなきゃよかった」と言われ続けてきてきたのです。

 薬物の恐さをいくら教えても、彼らはそんなことは百も承知しています。
 恐さではなく、やめ方を教えてほしいのです。

○「こころの痛み」を生き延びるための「鎮痛薬」
 「故意に自分の健康を害する」症候群=アディクション

 自傷行為によって心の苦しみがその時だけ治まります。
 高校生の中で、ODしたことがあるのは4%,リスカしたことがあるのは10%です。

○最大の「自分を大切にしないこと」は、悩みを「相談しない」ことです

 患者は「援助希求能力」が欠けている人です。
 うまく助けを求めることができず、独りで苦しみ、間違った対処方法をしてしまいます。
 その行為の良し悪しではなく、何があったのかを聞いてあげることが大切です。

〔*松本俊彦先生講演より〕

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○処方薬依存の患者側の要因

・自傷,過量服薬,過食,暴力などの衝動行為の存在
 薬を飲むと一時的に楽になるためです。

・他の物質依存,パーソナリティ障害が存在

・現実的苦痛の緩和ではなく、感情的苦痛の緩和を望む
 苦痛緩和のためにデパスを飲んでも、元の苦しみの原因は変わらず、薬では解決できません。

・生活歴における直接・間接的な暴力暴露経験
 暴力が刷り込まれてしまい、切羽詰まったときに暴力を起こしてしまう

・他者に対する不信感と援助希求に対する絶望感

・無力感を否定するための自己コントロールへの固執

○困難で複雑な痛みほど、一時的な緩和で「夢を見た」あとの痛みの増強はハンパない

 薬によって一度楽になると、ドツボにはまってしまいます。
 即効性の薬は依存しやすくなります。
 医師はゆっくり効く薬を出すべきです。

○人を依存症にさせるのは「快感」ではなく、「苦痛の緩和」
 依存症対策とは、やめられない「モノ」や止まらない「コト」をやめさせる支援だけではありません。
 痛みを抱えた「ヒト」の支援です。
(参考文献:「人はなぜ依存症になるのか」星和書店)

〔*松本俊彦先生講演より〕

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○依存症を作る医師の処方行動

 クリニックに通うと依存症が増えると思えるのは、医師の以下のような行動があります。

・「フライング処方」の繰り返し
 例えば薬を4週分出し、次に患者が2週間後に受診して、また4週分出してしまうということです。

・短時間作用型・人気のベンゾジアゼピン系を処方
 ハルシオンやベゲタミンなどがあります。

・診察なしの処方(薬のみ外来)
 診察をしないで薬だけ処方するのは医師法違反です。
 保険料の不正請求にもなります。

・患者のアルコール・市販薬乱用歴を看過

○薬物依存患者の乱用向精神薬人気ランキング

 1位はーロヒプノール,サイレースなど、フルニトラゼパムを成分とする睡眠導入剤です。
 それに続くのは、ハルシオンなどの成分トリアゾラム,デパスなどのエチゾラム,マイスリーなどのゾルピデムです。

 デパスは頭痛や腰痛にも出せるので、重複処方されやすく、やめづらいといいます。

○ベンゾジアピン類処方を控えるべき患者
(結局、生きざまの詳細な把握が必要)

・自傷,過量服薬,爆発性暴力などの衝動行為歴がある患者
・他の物質使用障害,パーソナリティ障害の存在する患者
・大食症質問票高得点(潜在する摂食障害)の患者
・市販鎮痛薬乱用(頭痛,潜在する解離性障害)の患者
・現実的解決ではなく、感情的苦痛の緩和だけを望む患者
・直接・間接的な暴力暴露の経験がある患者

〔*松本俊彦先生講演より〕

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○リストカットと過量服薬の動機

 辛い感情から解放されたい場合、リストカットするかODするかは、ともに73%です。
 自分を罰したい場合は、リストカット45%、OD39%。
 死にたい場合は、リストカット40%、OD67%となっています。

 自殺の意図がない場合、リストカットは途中でやめられますが、ODはやめてもそのあとで効いてきてしまいます。

○過量服薬による鎮痛は、リストカットよりもエスカレートが速い

 リストカットした人は、95%がそのことを初めは報告しないため、見つかりにくいですが、
 ODした人は報告しなくても、起きてこないから家族が気付いたりするので、見つかりやすくなります。
 家族が心配してくれるため、ODはエスカレートしやすくなります。

 それを防ぐには、家族は感情的に反応するのではなく、医学的に反応することです(適切な処置など)。
 感情的に反応すると、行動は強化されてしまいます。

 その他にエスカレートする理由としては、心の痛みに対する鎮痛効果が高い,死なない服薬量が予測しにくい,酩酊によるものがあります。

○故意の自傷が増えている
 これって「精神科行こうキャンペーン」のせい? 

 自殺者数は平成10年から横ばいです。
 ところが、自傷行為による救急車での搬送人数は、この前後から急に増えています。
 精神科クリニックの数も同じように増えています。
 それは、処方薬が増えているとも言えます。
 その結果、OD,救急搬送が増えている? 

 精神科受診が、自殺手段へのアクセスを高めてしまっているのではないか? 
 患者の苦痛を緩和するための医療が、依存症という病気を作り出していないか? 

〔*松本俊彦先生講演より〕

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

 
(前の記事からの続き)

○自殺以外の意図によるODもある
(3次救急救命センターにおける過量服薬患者の調査から)

 ODの理由で、自殺企図と並んで多いのは、不快感情の軽減です。
 いま抱えている苦痛から何とか逃れたいためです。

 しかし苦痛の軽減に一番いいのは、ODではなく、信頼できる人に相談することなのです。

 ODをするその他の理由には、以下のものがありますが、どれも多くはありません。
 眠るため,自分を罰するため,他者を罰するため(思い知らせるため),助けを求めるため,自分の辛さを人に伝えるため,人の愛情を確認するため。

○「死にたい」のではなく「解決したい」

 自殺意図があってODする人は、40%がその前に「予告」をします。
 しかし自殺意図がない場合は、予告する人はいません。
 死にたい人は本当に死にたいのではなく、困難を解決したくて迷っているので、誰かに伝えるのです。

 ただ、相談されて答えてあげても拒否します。
 相手を苛つかせてしまうため、そのうちサポートが少なくなり、余計に自殺リスクが高くなってしまいます。

 また、ODをしたあとのことを見ると、自殺意図がある場合もない場合も、3~4割がそれを人に「報告」しています。
 そのほうが治療者や周りの人はサポートしやすくなるので、報告するのはいいことです。

○自殺意図の有無で、過量服薬後の医学的重症度は変わらない

 自殺の意図がなくても、飲んでいるうちに酩酊してきて、飛び降りたり首を吊ったりし、大怪我を負ってしまうこともあります。
 また、何回もODしていると、家族は「いい加減にしろ」という気持ちになってきついことを言ってしまい、よくない結果に繋がることもあるでしょう。

〔*松本俊彦先生講演より〕

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

このアーカイブについて

このページには、2013年11月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2013年10月です。

次のアーカイブは2013年12月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

home

家族会掲示板(ゲストプック)

家族会 お知らせ・その他

本のページ