2013年12月アーカイブ

○重複する特徴を持つBPD
 多くのBPDの人は、低機能,高機能の両方の特徴を持っています。
 配偶者や精神科医などには感情をあらわにしますが、家族以外の人には障害を持たない人として振る舞います。
 
oBPDを持つ個人のふたつの重複する分類
・対処技法
 低機能:内に向かう行動化(acting in)
 高機能:外に向かう行動化(acting out)
  対人関係が拙いというより、無意識で、自分の苦痛を他者に投影して生ずる

・機能
 低機能:自立した暮らし,仕事の継続などが困難
 高機能:カリスマ的にさえ見えても、裏ではBPDの特徴を示している。
  キャリアを積み成功していることもある

・援助を受ける意思
 低機能:自傷や自殺傾向が理由で受ける。
  セラピーに関心が高い
 高機能:脅されるとセラピーを受けるかもしれないが、真剣に取り組んだり、長続きすることは稀

・併存するメンタルヘルスの問題
 低機能:双極性障害や摂食障害など、医学的介入を必要とし、低機能の原因となる
 高機能:物質使用障害,または別のパーソナリティ障害(特に自己愛性)

・家族への影響
 低機能:親は極度の罪悪感を抱え、感情的に圧倒されている
 高機能:家族は自分を責め、BPDの人の要求を満たそうとする。
  対立点の多い離婚や親権争いが問題となる

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

 
 低機能の従来型の人はセラピーを求め、高機能のタイプの人は、相手のほうがセラピーを受けるべきだと挑発します。

○低機能の従来型のBPD
 典型的なBPDの人々です。

・自傷や自殺行為のような自己破壊的な行動によって、苦痛に対処する
 内に向かう行動化(acting in)
・自分に問題があると認め、必死にメンタルの援助を求める
・日常的に機能するのが困難
・摂食障害や物質乱用など、重複する障害は深刻
・家族の課題は、治療を見つけること,自殺企図など危機への対処,経済的負担など

○高機能で見た目には分からないBPD

・人間関係の問題は他の人のせいである。
 相手のほうがBPDだと批難する
・援助を求めない。
 カウンセリングでも自分の問題に取り組まない
・外に向かって激怒したり、現実・想像の問題で家族を批難することで、苦痛に対処する
・気が強い,自信ある態度の裏に、低い自尊心を隠し持っている。
 職場ではよく働き、身近な人にだけ攻撃的行動を示す
・他の精神障害がある場合は、自己愛性パーソナリティ障害のような高機能障害
・家族の課題は、言語的・感情的・身体的虐待への対処。
 治療を受けるよう説得すること。
 他の子供への影響。
 自身と自尊心の喪失。
 境界を設ける試みと失敗

 彼らは、要求を満たし、苦痛を避けるため、何重もの防衛機制を作り出します。
 これは不安定なアイデンティティに繋がります。

 人前では、ボーダーの行動を見せない人を完璧に演じます。
 自分をコントロールできると本当に信じているため、そのパーソナリティに従って行動するのです。
 しかし人を永遠には騙せません。
 もう一方のパーソナリティが刺激されると、コントロールは失われます。

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

その他のBPDの特徴

 
○本当のことを言わない
 BPDの人は故意に、無意識に、あるいはその中間で、嘘をつくことがあります。
 中には、周到な嘘で始まり、真実として思い出されるものもあります。
 嘘はストレスの中で起きることが多いようです。

 嘘は次のような役目を果たす可能性があります。
・羞恥心が強くなるとき、それを払いのけてくれる。
 自分に価値がないと感じる人は、状況をよくするために、どんな嘘でもつかなくてはならないと思い込む。
(自尊心が低いために、自分で間違いを認めることができない)
・真実が知られたら、自分が拒否されるという恐れを鎮めてくれる
・劇的な雰囲気を作り、注意を引く
・本当の感情を覆い隠し、強い外見を装う

○コントロール欲求
 混乱した世界を対処可能にするために、状況や他者をコントロールしようとします。
 コントロール感を脅かすことに強く抵抗します。
 ノン・ボーダーの人が境界を定めたり、挑発に反応したりするときに、頻繁に起こります。

 彼らは、意図的に先のことまで考えてやっているわけではありません。
 密かにやることもできません。
 単刀直入に自分が必要なものを得ようとします。

 なかには自分の行動を振り返って、恥ずかしく思う人もいます。
 しかし彼らの感情は非常に強く、次に同じような状況になると、再び同じように行動せざるを得ません。
 こうして自己嫌悪のサイクルが続きます。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

BPDを説明する統合的アプローチ

 
 DSMの診断項目を、思考,感情,行動をコントロールする特徴の、3つのグループに整理し直すことができます。
 思考,感情,行動は次々に順番に起こります。

○思考の障害
 鍵になるのはスプリッティングです。
 思考が現実を形作り、反応の仕方を決定します。
 それは自動的で習慣性があります。
 「感情は事実に等しい」という歪みです。

 認知の歪みには次のようなものがあります。
・感情は事実に等しい:感情は解釈に影響を与える
 現実とかけ離れた解釈をする
・早合点:自分の考えと反対の事実を退ける
・読心術:他者が自分を悪く思っていると思い込む
・破局視:最悪の事態が起こり、何もできないと考える
 自傷や自殺企図などにつながりかねない
・批難:責任を他者に負わせる
 自分の考えと反対の事実を打ち負かす
・肯定的な事柄の無視:スプリッティングと似ている
 望ましいことも無視する
・精神のフィルター:自分への批判に反応し、深い傷となる
 称賛は退けられる

○感情の障害
 激しい怒り,不安定で苛立った気分,見捨てられ不安,圧倒的で持続的な空虚感があります。
 自分は無力で、価値がないと感じています。

○行動の障害
 自己にダメージを与える衝動性で、自殺行動,自傷行為,怒りの制御困難などです。
 他者を混乱させることや、批判や脅しなどが含まれます。
 BPDの王様と言える特徴は、極端な理想化と価値下げの間を行き来する対人関係です。 

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

BPDの9つの特徴(3)

 
(前の記事からの続き)

○診断基準6:感情の変わりやすさ(不安定な情緒)
 感情の変わりやすさは3つの要素からなっています。
・でき事に対する不釣り合いな激しい感情。
・感情が素早く浮き沈みする。
・元に戻るのに長い時間がかかる。

○診断基準8:極端な怒り
 BPDの人の激怒は、恐ろしく、衝撃的で、説明しがたいものです。
 爆発前には空気が変わり、明白に分かります。

 激しい怒りは、助けを求める叫びであることもあります。
 でもBPDの人は異なる言語を話していて、それが伝わらないため、半狂乱になり、声を荒らげ、ますます激しく振る舞います。

 依存が怒りを引き起こすこともあります。
 BPDの人にとって他の人は、愛情を与えたり差し控えたりする権利を持っています。
 他人の小さな言動によって気分が乱調するのはそのためです。

○診断基準9:解離
 解離する人は、周りから分離しているように感じます。
 自分の身体を外側から観察しているようなものです。

 解離を中断するには、物理的な世界に焦点を当てるのが役立ちます。
(「青いコップの中に氷が3つ入っている」など。)

 あるBPDの人はこう言っています。
「混乱状態にあると現実世界が遠くなります。
 全く思い出せない期間もあり、多くの時間を空白の状態で過ごしています。」
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本

 

BPDの9つの特徴(2)

 
(前の記事からの続き)

○診断基準4:衝動性
 BPDの人は小さなことに強烈な感情を抱きます。
 脳はそれを加減できなくなります。
 不安やうつは衝動性を高めます。

 衝動性は、DSMの他の特徴とも関連しています。

○診断基準5:自傷と自殺傾向
 自傷は、軽いものから深いものまで広範囲にわたります。

 死ぬためのものではなく、次のようなために自傷します。
 感情的苦痛から気をそらす,自分に罰を与える,感覚をなくす,ストレスを和らげる,コントロールを維持する,怒りを表現する,苦痛を人に知らせる。
 切ることは、幸福感を促す脳内物質エンドルフィンを放出させるようです。

 自傷をする若者は、他の人より敏感で、物事を素早く感じ取り、元に戻るのに時間がかかるといいます。

 人に傷を見られると、言い訳をすることもあります。
 以下は自傷行為を示す可能性があります。
 常に長袖のシャツを着ている,ストレスのあとでひとりになる,物質乱用が増える,カッター,消毒液,バンドエイドなどをためこむ。

 本当に死にたいとは思っていません。
 苦痛を和らげることに必死なのです。

 あるBPDの人の女性は次のように言っています。
「信じがたいほどの絶望感で、自分を消したくなりました。
 自分を懲らしめ破壊しなければという、圧倒的で不合理な要求がありました。
 空虚感と孤独は耐えがたいものだったのです。」
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

BPDの9つの特徴(1)

 
○診断基準1:見捨てられ不安
 BPDの人は、現実あるいは想像上の脅威にも反応します。
 彼らは想像力に富んでいます。

 見捨てられるということは、愛情そのものの喪失です。
 それは感情的な距離,「一体感」における大きすぎる隙間です。
 BPDの人の場合、大切な人との意見の相違は、小さなことでも影響を及ぼします。

 感情の距離は、何によっても引き起こされます。
 BPDの人はこの距離を拒否として感じ、必死に防衛することになってしまいます。

○診断基準2:理想化と価値下げを行き来する不安定な関係
 この思考プロセスは「スプリッティング(分裂)」と呼ばれます。
 それは知らぬ間に起こり、世界,自分自身,親密な関係に影響を及ぼします。
 そのためほとんどの問題の裏に潜んでいます。

 BPDの人は、ある人に対する肯定的,否定的な感情を調和させることができません。
 そして自分の意見を一瞬のうちに変えることができます。
 これまで違った感じ方をしてきたことは、記憶から消えてしまうのです。

 あるいは、反対に感じていたことを思い出すことができても、それが何故か分かりません。
 酔っぱらいのように、馬鹿げたことをして翌日目を覚まし、どうしてそんなことをしたか分からないようなものです。

○診断基準3と7:不安定な自己像と空虚感
 夫や母親などの役割を果たすことで、空虚感はいくらか満たされます。
 しかし子供の自立や離婚の恐れなど、役割が脅かされると殻が崩れ始めます。

 実際にはBPDの人も、中核的信念をひとつ持っています。
 「自分は価値のない人間」だということです。

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー(星和書店)  〈監訳:遊佐安一郎〉より

(次の記事に続く)

文責・稲本
 

重要な原則

 
○重要な原則
 BPDを持つ人を助けるには、皆さん自身を最初に助けなければなりません。
 それは皆さんの直感の逆かもしれません。

 人は問題を避けるために、BPDの人を喜ばせることに何年も費やしてしまいます。
 それが功を奏しても、代償は高くつきます。
 家族は自尊心を失い、うつ病や身体の疾患に苦しみます。
 彼らは自分自身を大切にする能力を失ってしまっているのかもしれません。

 長期的に健全な関係を持てるかどうかは、皆さんが自分の時間を過ごしたり、愛情をもって境界を設けたり、BPDの人から離れ自分の生活を築いたり、皆さん自身の要求を大切にできるかどうかにかかっているのです。

 BPDの人が変わらなくても、皆さんの生活を改善することができます。
 練習が必要ですが、皆さん自分の運命をコントロールすることができるのです。

 現在、BPDの人が支配力を持ち、嫌なことをさせていると思っているかもしれません。
 しかし、自分自身の反応をコントロールし、自分自身に対して誠実な決断を下すとき、力関係は変わるのです。

 

○数で見るBPD
 表向きはアメリカ人の2%がBPDですが、最新の調査ではもっと高いようです。
 BPDは統合失調症より一般的であり、拒食症の2倍も起きています。
 うつ病より多く、入院患者の20%がBPDです。

 自殺率は一般人口の400倍です。
 自殺する若者の3分の1が、BPDの特徴を有しています。
 BPDは他の病気と合併し、ほとんどがうつ病も持っています。
 臨床家のほとんどは、BPD治療の訓練や経験をしていません。

 BPDの人は自傷行為のために身体の老化が進み、30才でも60才と同じ医学的プロフィールを持っています。
 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー(星和書店)   〔監訳:遊佐安一郎〕より

文責・稲本
 

 
 本日より、ランディ・クリーガー著「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)〔監訳:遊佐安一郎〕の内容を紹介していきます。
 後半では「5つのパワーツール」を紹介します。
 思考を整理し、スキルを身に付け、自分に自信を持ち、生活を改善するための役に立つでしょう。

                        *

○オズの国へようこそ
 皆さんの愛する人が、次の質問の多くに当てはまるなら、BPDかもしれません。

・皆さんのことを、自分を愛さない憎らしい人,または無条件の愛を与えてくれる人という、どちらかの見方をしている
・皆さんを絶えず勝ち目のない状況に追い込んでいる
・皆さんは常に批判の的になっている
・理想化されていても、何の理由もなく全てが崩れてしまう
・怒りが、執拗で悪意のある攻撃になる
・その人にコントロールされているように感じる
・皆さんは現実感を疑い始め、家族や友人から孤立している

○BPDとは
 BPDの人は、全て良い,または全て悪いと見なしたり、空虚でアイデンティティがないと感じたり、瞬間的な気分変動を起こします。
 衝動的で、自己嫌悪と見捨てられ不安のせいで他人を批判します。
 自傷行為や自殺行動をする人もいます。

 この障害は思考のプロセスを歪め、異常な感情と行動を引き起こすのです。
 相手を途方もなく持ち上げ、今度はこき下ろします。
 自分自身に対しても、小さな失敗で自分を価値のない人間と思ってしまいます。

 BPDを持つある女性は、「BPDは身体,心,魂を浸食するガン」だと言っています。
 周りの人は彼女のことを、才能があって利口だと思っていますが、本人は自分を落ちこぼれと考え、人付き合いを避けています。
 孤独を紛らわすため、知らない男性と性的関係を持つこともあります。

 家族は常に何かを試されているかのようです。
 しばしば罪悪感,うつ,孤立,無力感などを経験します。

 

*「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」ランディ・クリーガー
 〈監訳:遊佐安一郎〉(星和書店)より

文責・稲本
 

カウンセリング専用アドレスについて

ご家族の皆様にお知らせ申し上げます。

現在、「カウンセリング予約用メールアドレス」が
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カウンセリングのお申込み、その他お問い合わせは

bpdfajimu@yahoo.co.jp

上記、メールアドレスにて承っております。

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